【ニュース・中国】高等教育機関卒業者が今年で初めて1,000万人を突破、就職への第一歩をどう支えるべきか?

 

今年の政府活動報告では、今年度の高等教育機関の卒業生が1,000万人超となる見込みであること、それゆえ就業および起業に対する政策支援と、学生のキャリアを「途切れさせない」取組みの強化が求められることが指摘された。教育部がこのほど公表したデータによれば、2022年度の高等教育機関卒業予定者は、前年比167万人増の1,076万人に達する見込みだ。

 
就業は生活の基本であり、安定の条件であり、発展の要である。今年、高等教育機関の卒業生は初めて1,000万人を突破する。彼らの就業への第一歩をいかに支援し、より充実したより質の高い就職を実現させられるかが、代表委員らの関心の的となっている。この問題に関する代表委員らの見解や提案を見ていこう。

 
優遇政策で 就職活動のルートはより多様に

 
目下、高等教育機関卒業生の就職にはどんな特徴があるのだろうか。

 
中国教育学会副会長を務める周洪宇代表は、大学卒業生の就職について、依然として中国国内での就職がメインであり、一番人気は新一級都市(訳注:中国の都市発展ランキングで北京、上海、深圳等の一級都市に次ぐレベルの都市)であるなど、従来の傾向が継続していると分析する。「ただ、変化も生じており、就職先と専攻とのマッチング率の明らかな上昇、高水準を保っていた就職満足度がやや下降に転じたこと、就職活動のルートの多様化、離職率の若干の上昇などが挙げられます。」

 
「柔軟な就職を選ぶ学生が増加し、『モラトリアム就職』や『就職浪人』などの傾向が続いています」と指摘するのは、浙江金融職業学院院長を務める鄭亜莉代表。時代とともにさまざまな就職ルートが開かれたことが、若者の就職観の変化につながり、柔軟な就職という選択を視野に入れる若者が多くなった。また、就職競争の激化に伴い、学歴や出身校のランクを上げることで就職を有利にしようと考える学生も増え、今年の大学院修士課程の入学試験出願者数は数十万人単位で増加、大専(短期大学)から4年制大学への転入率も20%に達している。

 
「国民経済は引き続き安定し回復傾向にあるとはいえ、依然として不確定要素や不安定要素が多く、さらに1,000万人を超える新卒生が一気に市場になだれ込むため、就職情勢が複雑で厳しいことに変わりはありません」と周洪宇代表は言う。

 
コロナ禍が就職に及ぼした影響はまだ続いている。鄭代表は、一部の業界および企業では今なお生産・経営状態がコロナ前の水準まで回復していないことから、中小企業に雇用を拡大する力がなく、また、就職の構造的矛盾が根本的に解消されていないことから、「就職難」と「人材不足」の二重苦が続いていると指摘する。

 
九三学社天津市委員会専任主任委員で元天津大学副学長の張鳳宝委員は次のように語る。「中国は、産業構造の高度化と技術の進歩が加速を始めたばかり。雇用側が労働者に求める技能も、単一の技能から総合的技能へと徐々に変化しており、多彩な技能を持ち、多様化した職務に対応可能な新卒生が歓迎されています」

 
複雑で変わりやすい就職情勢の背後には、チャンスもまた多く隠れている。張委員は、国や各地方は、高等教育機関卒業生のより充実した質の高い就職を推進するため、雇用側に対する一連の優遇政策を打ち出していると指摘する。

 
雲南工商学院で学長を務める李孝軒代表は次のように言う。「国のイノベーション・起業政策は過去に例を見ないほど盛んに実行されており、今の卒業生の就業・起業には多くの優遇政策が用意されています。さらに重要なのは中国経済の粘り強さです。長期的なプラス成長という基本的傾向に変わりはなく、新たな就職機会が絶えず生じ、新たな就職ルートはますます大規模化かつ保障も充実し、就職の基盤は堅実だと言えます。」

 
スタートの前倒しは就職促進メカニズムを補完する

 
「就職は新卒生が社会に踏み出す第一歩であるため、正しい就職観というものが非常に重要になってきます。」李孝軒代表は、学生が就職活動に対する心の準備や能力面での準備をしておくとともに、社会全体で良好な就職環境を作っていかなければならないと主張する。「前者は学校が主戦場となりますが、後者は政府、学校、業界・企業さらに社会各界が連携して共同で力を発揮していくことが必要です」

 
李代表は、学校はキャリアプラン教育と就職指導を人材育成の全プロセスに導入するとともに、就業促進のスタートを前倒しすべきだと提案する。「例えば、大学の新入生向けには『大学生のキャリアプラン』『専門性を活かす就職』などといった授業を開講し、入学時から目標を明確にさせます。2・3年生向けには、キャリアプラン、職業の位置づけ、専門分野の将来性などに関する体系的な授業を開設し、系統立った指導を行います。卒業を控えた4年生向けには、専門技能の向上に対応した質の高い実践訓練を実施し、必須の専門知識と実践技能を身に着けさせ、実践訓練と就職の効果的な連携を実現します」

 
「就業教育・指導とサービスメカニズムを整備すること。学校には当然その責任があります」と指摘するのは鄭亜莉代表。学校は「インターネット+就職」モデルを十分に活用し、講座やカウンセリングなどを主とする分類式就職指導により、卒業予定者の就職能力を高め、企業インターンにより学生と雇用先を直に繋ぎ、ピンポイントで産学融合を推進し、質の高い就職の手助けをしなければならないと主張する。例えば「職場体験」活動などを企画して学生を代表的な企業に連れていき、企業の仕事環境や求められるポイントなどを理解させるとともに、社会人生活を体験させ、適応能力や総合的資質を高める取組みなどが必要だと説く。

 
張委員が最も重視するのは、「第一人者」プロジェクトを着実に実行し、新時代の個別化ニーズに対応した就職支援チームをつくることだ。「高等教育機関内の党委員会書記や学長が第一責任者として、就職に関する様々な取組みを調整・統括し、学内各部門の分担、院・系(学部・学科)の協力、OB・OGの積極的な参画の下で、就職支援の枠組みを構築することが重要だ」

 
周洪宇代表は「政府部門はマクロ的視野に立ち、市場化された就職ルートを大いに開拓し、市場化・社会化された就業創業のリソースを幅広く集約するべきです。また、政策的ポストの雇用吸収力を十分に発揮させ、『特岡計画』『三支一扶』『西部計画』などの国家末端就業プロジェクトを拡大実施するべきです」と説く。

 
李代表は、市場化・社会化就業促進メカニズムの整備を持続的に図っていくことが非常に重要であると言う。すなわち、学校、政府、業界・企業(産官学)の常態的な連携体制を構築し、よりハイレベルな就職プラットフォームを作り、オンライン・キャンパス両方にリクルートの窓口を設け、新卒生により多く有望職種への就職機会を与え、企業と学生のピンポイントでのマッチングを促すことが肝心である。「同時に政府は、多くの優れた就業政策や資金的支援を打ち出すとともに、困難なグループに属する卒業生への就職支援の強化や平等な就職環境づくりに積極的に取り組むことにより、就職の権利の保護を強化し、求人詐欺や育成ローン詐欺などを取り締まることで、卒業生の就職活動や起業を守るべきです」

 
2022/03/10


澎湃新闻: 今年高校毕业生首次突破千万,如何帮他们走好就业第一步?


地域 アジア・オセアニア
中国
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