【ニュース・中国】「量子超越性」神話を覆し、中国チームが高性能計算界のノーベル賞「ゴードン・ベル賞」を受賞

 

澎湃新聞が清華大学から得た情報によると、米国時間11月18日、ミズーリ州セントルイスで開催されたスーパーコンピューティング国際会議(SC21)において、スーパーコンピューティング応用分野の国際的に最高の賞である2021年度「ゴードン・ベル賞」が発表された。中国のスーパーコンピューティング応用チームは、「Closing the Quantum Supremacy Gap: Achieving Real-Time Simulation of a Random Quantum Circuit Using a New Sunway Supercomputer (略称:SWQSIM)」と題した成果で同賞を受賞した。

 
1987年に創設された「ゴードン・ベル賞」は、スーパーコンピューティング分野における最高の国際学術賞であり、「スーパーコンピューティングのノーベル賞」と呼ばれている。2016年以前は、米国と日本が30年近くこの賞を独占してきた。

 
Google「Sycamore(シカモア)」による「量子超越性」を覆す

 
「量子超越性」とは、特定のシーンにおいて、従来のコンピュータでは到達し得ない性能を量子コンピュータが発揮することを示す言葉である。例えば、Google が2019年に開発した「シカモア」は、100万量子を200秒でサンプリングすることができる(忠実度0.2%)が、世界最速のスーパーコンピュータ
である「Summit」でシミュレーションすると1万年もの時間がかかるという。今回の中国のスーパーコンピューティングチームによる最新の研究は、
ほぼリアルタイムの量子シミュレーションを実現し、2019年にGoogleが実証したランダム量子回路サンプリング というタスクが、実際には「量子超越性」を実現していないことを証明した。

 
研究チームは、新世代のスーパーコンピュータ「神威」をベースに、量子計算シミュレータ「SWQSIM」を開発した。このシミュレータは、数千万
コアの並列処理まで効率的に拡張できる、近似最適テンソルネットワーク並列セグメンテーションおよび収縮法と混合精度アルゴリズムを提案した。
これにより、スーパーコンピューティングで世界的に知られている最高の混合精度浮動小数点の演算性能である毎秒4,400兆回の計算性能を持続的
に実現した。200秒で100万のサンプルを0.2%の忠実度で完成させる「シカモア」に比べ、SWQSIMは、より高忠実度の100万の相関サンプルを304秒
以下で、同数の無相関サンプルを1週間で得ることができる。

 
さらに「シカモア」の1,000倍以上の複雑な量子回路シミュレーションを60時間で完成させることができる。また、100~400ビットの量子回路アルゴ
リズムの単振幅・多振幅シミュレーションを実現し、今後の量子コンピューティングの発展に確かなシミュレーションを提供する。

 
古典的なコンピュータによるシミュレーション検証は、現在のノイズを伴う量子コンピュータの開発において不可欠なツールである。現在の複雑な
量子回路はまだ忠実度が低い。例えば、Google の「シカモア」では、100万のサンプルのうち、有効なサンプルは2,000程度しか確保できなかった。
SWQSIM のように、ほぼリアルタイムのシミュレーション能力を備えた量子回路シミュレータは、量子コンピュータの未来の発展の強力な後押し
となり得る。

 
清華大学スーパーコンピューティングチームが三回の優勝を果たす

 
今回の受賞チームは、之江実験室および国家スーパーコンピューティング無錫センターの劉勇氏、劉鑫氏、李芳氏、楊雨霊氏、宋佳偉氏、趙朋朋氏、
王臻氏、彭達佳氏、陳華蓉氏、清華大学および国家スーパーコンピューティング無錫センターの付昊桓氏、陳徳訓氏、国家スーパーコンピュー
ティング無錫センターの呉汶釗氏、上海量子科学研究センターの黄合良氏、郭楚氏の14名からなる。うち、劉鑫氏、付昊桓氏、郭楚氏、陳徳訓氏
は共同執筆者である。

 
清華スーパーコンピューティングチームは、中心メンバーの一つとして、今回で三回目の受賞となった。

 
これに先立ち、2016年と2017年に、同チームは大気力学方程式ソルバーに参加し、非線形地震シミュレーションの作業を主導した。そこで、モデル
の超並列スケーリングを効率的に実現し、時空間分解能と重要現象の描写能力を大幅に向上させたことで、30年来受賞ゼロの壁を突破し、さらに
そのタイトルを守った。

 
清華大学への取材により、このような研究プロジェクトから若手の研究者が成長していることが分かった。2016年、中国のスーパーコンピュー
ティング応用チームが初めて「ゴードン・ベル賞」を受賞した時に、甘霖氏は共同執筆者の一人で、当時は清華大学コンピュータサイエンス学部
の博士課程の学生であった。自分のキャリアを選択する重要な時期に、思い切って「神威・太湖之光」の応用チームに残り、国産スーパーコンピュー
ティングのために独自のアプリケーションを構築することを決めた。卒業後も国産のスーパーコンピュータ向け地学応用ソフトウェアの研究に力を
尽くし、清華浪潮計算地球科学青年人材賞、全国青年職場優秀標兵受賞など数々の栄誉に輝き、中国の若手研究者として初めてIEEE高性能専門委員会
優秀新人賞を受賞した。

 
今年の受賞チームのメンバーである呉汶釗氏は、清華大学地学系の修士課程に在籍し、卒業後、国家スーパーコンピューティング無錫センターに勤務
し、2020年より、プラットフォーム「神威」の深層学習フレームの開発を担当している。「地学系での研究期間中、この学部は常に分野横断的な活動
を奨励していたので、私は学んだことを新しい分野に応用するということに、常に挑戦することができた」と呉氏は言う。

 
2021/11/23


澎湃新闻: 打破“量子霸权”神话,中国团队获超算界诺奖“戈登贝尔奖”


地域 アジア・オセアニア
中国
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 研究
顕彰 顕彰