【ニュース・中国】 専門家が回答:3+1+2の新たな大学受験「高考」モデルに対応したクラス分けは如何に?歴史と物理の同時選択はダメ?

 
9月15日、甘粛、黒竜江、吉林、安徽、江西、貴州、広西の7省(自治区)が大学受験募集総合改革実施推進案を相次いで発表、2021年秋入学の
新入生から「3+1+2」の新たな大学受験「高考」モデルをスタートし、2024年より受験時に文系と理系を分けないようにする とした。

 
はじめに新たな大学受験「高考」モデル「3+1+2」について説明しておきたい。「3」は国語、数学、外国語の3科目を統一試験科目つまり受験必須科目
とし、「1」と「2」は選択科目で、「1」では物理または歴史のいずれか1つを選択、「2」では思想政治、地理、化学、生物から2つを選択することになり、
全科目合わせて750点
とする。

 
「3+1+2」モデルの発表後、ネット上では以下のようにさまざまな疑問 が呈されている。このモデルのメリットは何か。学生は歴史と物理を両方選択
できないのか。外国語を選択科目ではなく必須科目とするのか。学生が物理のみ選択し、化学を選択しなかった場合、将来、理工系大学で学ぶ際に
影響は出ないのか。クラス分けや授業はどのように行うのか。

 
これら一連の疑問について、中国教育科学研究院の儲朝暉研究員が渤湃新聞のインタビューに応じた。

    本紙:

  • なぜ第4次「高考」総合改革は「3+1+2」モデルのようなものになったのでしょうか。
    儲氏:

  • このモデルは実は2014年に浙江、上海で試行が始まり、その後続いて他の省でも実施されてきました。先に実施した他省の経験や教訓がある
    おかげで、相対的に見れば、新たに実施を始めた省の方が今回の「高考」総合改革がよりゆるやかに展開されている と言えます。
    本紙:

  • このモデルのメリットは何でしょうか。文系と理系を分ける方法や「3+3」モデルと比べてよくなった点はどこでしょうか。その根拠
    は何ですか。
    儲氏:
    「3+1+2」と「3+3」の違いですが、主に後半の「3」のレベルが異なっています。つまり、「1」の方が後ろの「2」よりも配点が高くなっているのです。これは浙江省で試行された際に、物理は点を稼ぐのが難しいため物理を受験しないという学生が多く見られたことが主な理由です。

     
    そこでこのような改革を行うことで、より多くの受験生が物理を選択するようにしたのです。物理は理工系を目指すすべての受験生にとって
    必須の基礎科目であり、物理が分からなければ将来のキャリアや成長にも影響が及びます。

    本紙:
    歴史と物理を両方受けたい場合はどうすればいいのかという質問も上がっています。なぜ物理と歴史を「2」の選択科目とし、いずれか一つ
    しか選択できないようにしたのでしょうか。
    儲氏:
    特異な例かもしれませんが、実を言うと私も元々の専門は物理だったのが、現在携わっている仕事は多くが歴史に関係しています。
    このように人のキャリアにはさまざまな形があるはずであり、学生が物理も歴史もやりたいというなら、そういった選択も可能にすべきだと思います。

     
    つまり、物理と歴史を組み合わせるのであれば、例えば、物理を選んだ場合は、歴史を残り二つの選択科目のうちの一つとして選ぶ、あるいは
    先に歴史を選んだ場合には物理を残り二つの選択科目のうちの一つにするというようにできればよいと思っています。

    こうした点を見ても、受験募集制度の改革は完成形ではなく進行形であり、絶えず改善が必要と言えるでしょう。少なくとも物理と歴史を臨機応変
    に組み合わせられないかということについては試してみることは可能だと思います。条件を満たしている地域などのどこかで先行的にテストし、経験を積んでから範囲を拡大して実施することも可能ではないでしょうか。
    本紙:
    外国語も必須科目ではなく選択科目にすればいいのではないかという声が多く聞かれますが、これについてはどう思われますか。
    儲氏:
    英語を学ばないということは単に知識が減るというだけでなく、視野や思考、文化、そして世界中の多くの人と意思疎通を図るためのツールを失う
    ということを意味します。
    とりわけ科学の分野では、最先端の科学文献の多くはまず英語で発表されます。この点から言えば、そのように単純
    に英語教育を単なる科目の一つと見なすことは視野の狭い考えだと思いますし、中国の教育現代化のプロセスともそぐわないものです。目先の
    わずか数年のことしか見ておらず、次の世代をどのように育てるべきかまで考えられていないのではないでしょうか。
    しかし、現実には英語教育を含む各教科で内容、方法、モデルが単一化しているといった問題も存在しています。私は、教育というは「散歩
    のようなもの」
    だと思っています。「散歩のような」というのは、各々が興味のあることを見つけ、目標を定め、自分なりの速度、体力、方法
    で進んでいくということです。しかし、今は競技場での「レースのようなもの」に変わってしまっています。皆が同じスタートラインに立ち、
    決められたレーンに沿って走り、誰が先にゴールしたか、そのタイムはどうだったかということに目を奪われています。ここに現在の英語教育
    の大きな問題があるのです。
    本紙:
    「3+1+2」モデルでは学生により自由な選択権を与えていますが、その一方で多数の理工系の大学が受験生に物理と化学を学ぶよう求めて
    います。これでは高校生たちはただ言われたとおりに科目を選ぶようになりませんか。そのことがその後の進学に影響しないのでしょうか。
    儲氏:
    大学がこのように求めるのは入学後を考えてのことです。学生たちにそうした学問の基礎がなければ授業についていくことはできませんから。
    学生たちはこうした情報も科目選択をする際の参考にすればいいのです。今後の趨勢を俯瞰すると、物理と化学はどちらも非常に大事になって
    きます。
    ある地方の高校入試では、物理と化学の点数が低く設定されていますが、これはおかしいです。早急に是正すべきです。
    本紙:
    新たな「高考」モデルの下では、学生の選択科目が従来のような文系と理系で学ぶ科目が異なるという状況に近づく可能性はありませんか。
    儲氏:
    新モデルにおいては、各地とも文系と理系の科目を分けるといったことは行っていません。しかし、科目選択が文系寄りと理系寄りに分かれる
    といった状況が依然見られます。将来の就職に有利かということを考えれば、理系科目を選択する学生が多くなり、文系科目を選ぶ学生が少なくなる
    ことは明らか
    でしょう。しかし、学生はやはり自らの強みに合わせて選択すべきだと思います。そこには実際の社会のニーズが反映される
    とも思いますが。
    本紙:
    新モデルの実施により、クラス分けや授業がこれまでよりも複雑になるのでしょうか。回避すべき問題としては何があると思いますか。
    儲氏:
    「3+3」モデルと比べれば「3+1+2」モデルははるかにシンプル です。相対的に見て操作性も高いと言えます。ただ、個人的にはこれも一種
    の過渡期にあるに過ぎず、今後時間が経つにつれて、さらに改善が進むと思っています。

 
2021/09/17


澎湃新闻: 专家解读|3+1+2新高考模式怎么分班?历史+物理不行吗?


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中国
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