【ニュース・中国】大学生の有料実習にメディアが注目:「罠」か、それとも「近道」か?(2)

 
劉さんが言うには、エージェントと契約を交わすと、エージェントが履歴書を先方の人事担当者に送り、必ず目を通してもらうことが保証されている。
また、実習先企業に即した面接指導も行われる。「成功率は100%ではありませんが、エージェントを通した場合、通さないよりも成功率は高いです。
そこから先は自分次第です。エージェントは契約を交わす際、企業リストを見せてくれるのですが、知名度があり顧客からの評判も良い会社であれば、
手数料は高くなります。リストにある企業から実習の内定がもらえなければ、仲介費用は返還されます。」

 
「おそらく『理性的なものは現実的であり、現実的なものは理性的である』ということでしょう」と劉さんは言う。エージェントは本来なら自分でしなけ
ればならないタスクを代わりに引き受けてくれる。それでも、今実習に行っている企業も自分の専門とそこまで合っている訳ではない。

 
取材を進めていくうちに、エージェント側では「有料実習」を「有料内部推薦」「有料カリキュラム+就職推薦」「有料リモート実習プロジェクト」など
複数の業務に細分化している
ことが分かった。仲介業務の内容は、実習先、学生の専攻、個人のニーズによって異なり、価格もそれぞれ数百元か
ら数万元と幅がある。

 
「超高額実習」は今やオンライン上で明確に値付けされた「グレー産業」に成長しており、大手社員の中には「内部推薦」で相当額のグレーな副収入
を得ている者もいる。副収入を得る方法としては、有名企業の従業員が「内部推薦」枠を売るケースもあれば、エージェントが高額な「内部推薦」費用を
徴収して有名企業の「教育係」アドバイザーに依頼する
ケースもある。また、留学エージェントが「副業」として、海外に留学して「架空の履歴」を
手に入れたい学生に実習の仲介をするケースもある。

 
だが、「格好いい」実習経験は本当に金で買えるのだろうか。「超高額実習」に金をつぎ込んだことのある大学生の中で、自分が「買った」実習経験
は「ニセモノ」だったと感じる学生が増えている。エージェントが宣伝した内容と実際の状況が異なっているのは当たり前の方で、料金を支払った
にも関わらず実習先が見つからないケースも珍しくない。テンセント、美団、PwC、中信証券などの有名企業複数社は、かつていかなる第三者とも
提携したことはなく、人材募集のどのプロセスにおいてもいかなる費用も徴収しない旨の声明を出した。これが大学生への警鐘となった。

 
長年学生の就職業務に携わってきた湖南大学指導員の于涵宇氏は中国青年報·中国青年網記者の取材に対し「主な結果は以下の通り。実習先を探すプロセス
は、情報収集と選別のプロセスであり、学生にとっては、就職活動に耐える力があるか事前に試す良い機会です。エージェントにのみ頼っていては、
実習が持つ意義を失ってしまいます」と述べている。

 
有料実習≠就職のための保険。大学生は冷静に見極めよ

 
新卒生の数が年々増加するにつれ、大学生の就職のプレッシャーはますます強くなっており、有料実習市場もさらなる活況を呈している。
しかし、明確な規制と対応する管理監督措置がないため、有料実習というグレーな産業は野放し状態だ。大学生自身もそのリスクと害に対し警戒心を
持たなければならない。

 
そもそも実習は就職活動にどれほどプラスになるのだろうか。于涵宇氏の話によると、学生は実習を通じ、業務内容や企業組織に慣れ、仕事やプロ
ジェクトの経験を積む。さらに、そのことは、学生が自身の技能で補うべきところを理解し、学業に励む気持ちを刺激する効果がある。

 
結果として、実習に採用された学生は、学生から社会人への転換をよりスピーディーに行うことができ、気持ちの面でも仕事の面でも、社会人生活に
素早く適応できる。

 
だが、于氏は言う。「数多くの企業の人事部担当者は一様に、実習は確かに重要だが、いわゆる『大手』での実習経験はそれほど重視していないと言い
ます。実は、面接試験でいくつか質問をすれば、学生が本当に実習をしていたのか、それとも金で履歴書にハクをつけているだけなのか、容易に
判別が付くそうです。たとえ実習に行っていなくても、在学中に実践で学んだことや学生会の仕事を総括することで、同様に業務能力や潜在能力
を証明することができるのです」

 
今や、ネットで「有料実習」と検索すると、「罠」に気を付けるよう呼び掛ける投稿がますます多くなっている。

 
張璐さんは今、北京のあるメディアで実習をしている。今の実習は無料でやらせてもらっているが、以前は数多くの有料実習という高い授業を受けて
いた。張さんは、見極めを慎重にとアドバイスする。「エージェントが約束する内容の多くは保証がありません。『内部推薦』などと言っても関連の
業務をさせてもらえないことすらあり、何も学ぶことがなく、報酬も無償で、実習証明すら出してくれないところもあります」

 
于氏も、ネット上で多くの学生が、「超高額実習」の実態はアウトソーシングや偽の実習であることが多いと暴露していることに気付いていた。
それゆえ、学生に対して、情報をよく分析し、さまざまな資料を活用して一人で判断せず、学校の就職サイトや企業のオフィシャルサイトに掲載されて
いる正規ルートを通じて履歴書を送り、「採用確約」などと謳うエージェントは安易に信用しないでほしいと語る。

 
「高等教育機関は実習や就職に関する情報を豊富に持っており、信頼にも値します」。于氏の勤務する湖南大学の場合、大学が開設した優良企業・事業所
の実習情報発信・マッチングルートを通じて、毎日優良な実習情報が大量に発信されている。また、ベテラン人事担当者を学校に招き、雇用者側の
視点で学生に応募のコツなどを伝授し、学生がスタートラインで優位に立てるよう導いている。

 
「判断がつかないときは、先生に助言を求めてください。チューターをはじめ、校内の資源は無料で質も高く、個別対応が可能です。まずは校内の
就職指導や実習、就職情報に頼るようにし、有料、特に高額なエージェントの利用は避けましょう」と于氏はアドバイスする。(本人の希望により、
本文中の学生はすべて仮名)

 

 
2021/07/12


中国青年报: 专家谈部分院校停招学硕:高层次学术人才培养转向以博士为主


地域 アジア・オセアニア
中国
取組レベル 政府レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 教育
人材育成 学生の就職、高技能職業人材の育成