【ニュース・中国】年々費用がかさむ中国の大学受験「高考」願書記入サービスは信頼できる?(3)

 
3日程度の研修を受けただけの即席プランナー、学校や塾とグルでソフトを販売

 
願書記入指導を行うプランナーの能力は見事にバラバラだ。「業界歴数年」で「経験豊富」な「プロ」は、3日ほどの研修を受けただけの即席プランナー
かもしれないし、「合否判定の法則を熟知」し「大学と専攻に詳しい」と謳う「専門家」は、空いた時間でバイトしている大学生かもしれない。

 
記者の調査により、「高考」願書記入指導を行っている塾は、並行して「「高考」出願プランナー」研修コースも開催しているところが多いことが
明らかになった。研修は一般的にオフラインで3~4日間、費用は数千元だ。

 
記者が未経験の高等職業学校の学生のフリをして聚銘師(北京)教育科技有限公司に問い合わせてみたところ、4日間6,980元の上級クラスを勧められた。
「未経験でも大丈夫。研修を受ければすぐにプランナーとして独り立ちできる」

 
同社のカスタマーサービス担当の女性が言うには、研修受講生の多くは未経験で、最年少は「00後」(訳注:2000年代生まれ)だという。研修時間
が短く、専門的でないことについての不安を話すと、研修資料を暗記すれば十分という答えが返ってきた。「ツテがあるならたくさん仕事を受けて、
やはり怖いというのであれば少しだけというのでもいい。まずは口コミで実績を作ること。」

 
そして、去年研修に参加したという、有名ではない大学の2年生の学生の話をしてくれた。その学生は教育機関に勤める親戚がいるため受験生のツテが
たくさんあり、研修を終えたばかりの「高考」シーズンには40人以上の受験生に願書記入法のアドバイスをし、あっという間に研修費用の元を取った
という。

 
記者が、今度は保護者のフリをして藍鯨国際教育に願書記入サービスについて問い合わせてみたところ、まずプランナーのオンライン研修コースを勧められた。「何もできなくても大丈夫。1日1時間の勉強で、1か月以内に修了できる。」コースの修了後は初級プランナーとして、塾から少なくとも5~10人の生徒を回すことが可能だという。「願書記入は数をこなせば質も上がる。2年目には中級をパスして上級プランナーに昇格できる」

 
記者が問い合わせてみた複数の塾はどこも、研修修了後は修了証書を発行すると回答した。これは塾に所属する場合でも、独立開業する場合でも、
資格証明書として有効だという。願書記入支援ソフト「報考一起走」のカスタマーサービスは、研修修了後は、中国国家人事人材研修ネットワーク、
中華文化促進会などが発行する「『高考』出願プランナー(上級)証書」がもらえると説明した。「証書の発行にはオンライン試験を受験する必要
があるが、参考資料参照可の試験なので、ほぼ全員合格できる」

 
プランナー研修を行っている塾のカスタマーサービスが口を揃えて言うには、実際に重要なのはプランナーとしての専門性ではなく、市場に入り込み、
生徒を獲得してくること
だという。

 
記者が得た情報では、プランナーの中には教育機関と「グル」で、そこの生徒をターゲットにしている者もいるという。また、学校に入り込み、
保護者会などを通じて宣伝・販売を行う者もいるという。

 
北京市の保護者・趙さんはこんな経験をした。高3後期の最初の保護者会では、願書記入について説明すると学校側から通知があった。当日行ってみると、講師は某学習塾の先生で、話している内容は高3生の保護者ならとっくに知っている基本情報ばかりだった。この「先生」は、解説をしながら絶えず
保護者を WeChat の友だちに追加し、グループに招待していた。そこでの話題は、無料の講座を紹介する他は、塾の願書記入ソフトの宣伝だった。

 
「塾の宣伝だと知っていれば、保護者会には行かなかった。時間をムダにしただけで、何の意味もない。塾が普通にソフトを売る分には文句はない。
しかし、購入を強制されたわけではないが、学校と「グル」で売ろうとするのはいかがなものか」と趙さんは言う。

 
記者が取材した北京市内の多くの学校では、高3生の保護者向けに、塾が願書記入ソフトを宣伝・販売する目的の保護者会が開かれていた。

 
塾の誇大広告・高額費用に管理監督を

 
中国企業情報アプリ・サイト「企査査」のデータによれば、2020年7月初旬時点で、「高考」願書記入関連企業は中国全土に計954社あり、うち42%
が設立から1年未満だという。

 
業界関係者の話によれば、「高考」願書記入指導塾は一般的な学習指導塾とは異なり、後者が教育部門発行の運営許可証が必要であるのに対し、
前者は経営許可証さえあればよいという。

 
別の業界関係者は、「高考」の願書記入指導サービス業界はまだ成熟しておらず、幅広い受験生および保護者のニーズに対し、非常に高額な料金
を設定しているにも関わらず、本当に価値あるサービスを提供できていない、と指摘する。

 
中国人民大学教授で中国就業研究所所長の曾湘泉氏ら専門家は警鐘を鳴らす。「高考」の願書記入は学生のライフプランにおける重要なステップ
であり、実力・レベルともに十分なプランナーでなければ有益な指導は行えない。

 
受験生や保護者が本当に必要としているのであれば、塾などのサポートを得て願書記入を行えばよい。しかし、この業界の費用基準や管理監督
システムを明確化し、誇大広告を行ったりやたらと高額な料金を取ろうとしたりする塾に対しては、関連部門が取締りや処置を強化し、受験生ら
の利益を守るよう努めるべきだ。

 
受験生にとっては、情報の権威性と正確性が最も重要だ。ある専門家は、「高考」願書記入市場の加熱ぶりは、合否判定に関する情報の公開や整合性
などが不足していることの裏返しであると指摘した。学生募集統括部門と高等教育機関に対し、受験生や保護者のニーズに応えるべく、情報発信の
ルートと方法を最適化し、情報の整合性の強化に努めるよう望むと述べた。

 
実際、一部のオンラインプラットフォームでは、受験生のニーズに応える形で、学生募集政策等の公式情報や解説をまとめ、さらにインテリジェント
なソフトウェアを用いた無料の願書記入サポートを行っている。

 
受験生と保護者は有料の願書記入指導塾に過度に依存せず、積極的に必要な募集・試験情報を収集し、受験生の興味・関心や実力を総合的に考慮し、
冷静に分析した上で、長期的に見てプラスとなる方向に進めるよう願書の記入を行うべきだと専門家は指摘する。

 
2021/05/31


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