【ニュース・中国】逐梦星辰大海 彰显高校担当 夢追い広大な目標掲げ 高等教育機関の役割果たす

 
12月4日、有人宇宙船「神舟14号」の帰還モジュールが東風着陸場に無事着陸し、神舟14号の有人飛行任務が成功を収めるとともに、中国の有人宇宙飛行の卓越したレベルを全世界に知らしめた。「天宮」「北斗」「嫦娥」「天問」「羲和」……。宇宙飛行大国から宇宙強国へと力強く歩む中国を見つめ続けた広大な宇宙には、中国の数多の高等教育機関研究者らの心血が注がれている。

 
中国共産党第20回全国代表大会の報告では、宇宙強国の建設を加速することが強調された。宇宙強国の建設をサポートするにあたって、高等教育機関は重要な科学技術のブレイクスルーを生む拠点としての役割をいかにして発揮し、基幹・中核技術を攻略して、中国宇宙技術のハイレベルな自立自強を実現させていくのだろうか。また、いかにして優れた宇宙人材を数多く確保し、新時代の中国宇宙事業に貢献する意欲を持った「奮闘者」「登山者」を育成していくのだろうか。そして、いかに宇宙技術の恩恵を民生に注ぎ、経済社会の発展を推し進めていくのだろうか。

 
重要な科学技術ブレイクスルー拠点としての役割を果たし、「国の宝」に力を与える

 
11月17日、神舟14号に搭乗した陳冬、劉洋、蔡旭哲の3名の宇宙飛行士は、緻密な連携プレーで無事船外活動を成功させた。この時、ハルビン工業大学電子機械学部の劉宏院士・謝宗武教授のチームと中国科学院長春光学精密機械・物理研究所が共同開発した小型ロボットアームが、初の「ダブルアーム」として、宇宙飛行士の船外任務をサポートした。今回の任務では、小型ロボットアームをコネクターで大型ロボットアームと組み合わせることにより、2本のアーム間で、電気および情報の相互利用が実現した。ロボットアーム2本を「合体」させたことで、ロボットアームシステム全体の活動範囲が広がり、操作の自由度も高まった。結果、宇宙飛行士が広い範囲で高速移動できるようになり、船外活動の効率向上につながった。中国の有人宇宙飛行「三段階」戦略、ならびに宇宙ステーション建設の各段階において、ハルビン工業大学の持つ数百の技術が効力を発揮し、宇宙強国建設の歩みに確かな功績を残した。

 
「ハルビン工業大学は、国の重要な急務に焦点を合わせ、全方位的に研究体制・メカニズムの改革を進める。計画的な研究を強化し、一流大学の基礎研究の主力が果たすべき役割を果たす。『国内で欠けている基幹・中核技術』の難題を、英知を結集させて攻略する。次世代の『国の宝』を前倒しで計画し、引き続き産学研(企業・大学・研究機関)の高度な融合を推し進める。中国の高度な科学技術の自立自強と国家戦略としての科学技術力の確立のために『ハルビン工業大学メソッド』を提供し、中国宇宙事業の『尖兵』としての使命と責任を示していく」とハルビン工業大学学長補佐で、科学・工業技術研究院の帥永院長は言う。

 
キャリアロケットの某等級エンジンの技術性能向上、電磁妨害を利用した発射要素分析と電磁環境適合性試験評価技術、「神舟8号」および「天宮1号」以降の宇宙船ドッキング時のプルーム問題研究……。北京航空航天大学は、有人宇宙飛行、月探査計画、火星探査、中国版GPS「北斗」といった数多くの国家重要宇宙任務の基幹技術革新に全面参画している。

 
「宇宙強国建設に関連し、北京航空航天大学は組織的な研究を強化し、トップダウンで分野の壁を打破するとともに、電子・機械・熱力学など複数分野の相互作用と融合を強化して、効果的な横方向の学際的連携を構築している。また、イノベーティヴな要素により宇宙関連の重要なボトルネックを突破するという目標の下で結集し、産学研との高度な融合を誘導・支援して、『基礎研究—基幹技術—工学的応用—産業化』という一体的配置を実現する。縦方向のイノベーションチェーンを打破し、横方向の学際チェーンと縦方向のイノベーションチェーンの交差を実現し、基礎先端科学と重要技術の両輪駆動で、宇宙強国建設のために北京航空航天大学の持てる力すべてを発揮する」と北京航空航天大学学長補佐で、科学技術研究院院長、宇宙航空学部長の楊立軍氏は言う。

 
西北工業大学は、「宇宙強国」という目標に貢献するため、有人宇宙飛行、宇宙ステーション、深宇宙探査など複数の国家的宇宙任務における技術的難題の攻略に参画した。「『大国三航(航空、宇宙、航海)』を特色とする高等教育機関である西北工業大学は、これまでの長い発展の過程で、独自の『研究報国』理念を形成してきました」。西北工業大学航天(宇宙)学部の岳暁奎執行学部長によれば、その理念とは、第一に強い意識で、「研究報国」の価値創造、理論・知識の伝授、実践能力の養成という3プロセスをつなげ、研究・人材育成モデルを刷新し、全力で国の柱となる人材育成に取り組むこと。第二に果敢に挑戦し、妨害を恐れず人に先んじ、さまざまな領域の「欠けている基幹・中核技術」を攻略し、「国の宝」の確保に全力を挙げること。第三に果敢に上位を目指し、実戦でのフィードバックや装備の不備に向き合い、先陣を切って状況を打破し、全力で国内の空白を埋めることなのだという。

 
他にも南京航空航天大学は、宇宙船着陸時の衝撃緩衝、空間構造とメカニズム、衛生搭載低周波パルス電源、宇宙プロジェクト向けの超音波電子機器技術などの領域の基礎科学研究および基幹技術攻略でその知恵と力を提供している。また、清華大学の荘茁氏・由小川氏のチームは、「天和」号コアモジュールの補強構造の疲労寿命と破断制御設計および産業化開発を指導した。目標ではコアモジュールの軌道寿命を15年としていたが、地上でのシミュレーション検証の結果、寿命は22.5年以上と判断された。

 
「宇宙事業は国を挙げて取り組むものであるため、その国の実力が明らかになります。高等教育機関は国のイノベーション体系の重要な一部であることを自覚して、重要な科学技術ブレイクスルー拠点としての役割を果たすとともに、国の急務や長期的需要を考慮して、基幹・中核技術を全力で攻略し、『国の宝』を作りあげる義務があると思います」と清華大学宇宙航空学院航空宇宙飛行学部の王兆魁主任は言う。

 
優れた宇宙人材を数多く確保し、未来の航空宇宙技術を牽引するエリート人材を育成する

 
2021年10月14日18時51分、北京航空航天大学の主導で展開されたアジア太平洋宇宙協力機構(APSCO)大学生小型衛星APSCO-SSS-1が、山西省の太原衛星発射センターから発射された。ミッション成功の背後には、延べ100名あまりの中国内外の学生が衛星開発に携わり、中国の大学の国際協力による小型衛星開発の空白を埋めたことがあった。また、北京航空航天大学が担う、学生主体の大型総合実践プロジェクトを通じた国際的宇宙人材の育成という役割も果たされた。

 
「北京航空航天大学宇宙飛行学部は、宇宙飛行および国防領域のエリート・リーダー人材を育成目標に掲げ、長年にわたる模索の結果、『首尾一貫式紅遺伝子伝承事業、プロジェクト式実践能力教育プラットフォーム、融合式イノベーション人材育成システム、オーダーメイド式宇宙人材高度化アーキテクチャー』の『四式』人材育成モデルを編み出しました」。北京航空航天大学宇宙飛行学部の王偉宗副学部長によれば、この育成モデルは、宇宙飛行の意義を足掛かりに、全面的に思想政治教育を強化するものである。つまり、専門性の交差を基礎として、大型総合実践プロジェクトを中心に置き、学生をキャンパス内でのチーフエンジニアとみなす。本科の基礎を固めるとともに、イノベーションの優位性を堅持して、国の重大戦略のニーズに応え、科学技術イノベーションの中で大学院生の中核能力を育成する。宇宙業界の人材ニーズに沿って、企業型チーフエンジニアおよび宇宙飛行士のための高度化プラットフォームを構築するものだという。
高等教育機関は、宇宙事業の予備軍を育成するという重要な使命を担っている。中国の宇宙事業が飛躍的発展を遂げるにつれ、人材の全体的な資質に対する要求も高まっている。

 
「中国は、確固たる理想と信念とともに愛国の情熱を高く掲げ、強い責任感と確かな学識を有する、超高度な資質を総合的に身につけた宇宙人材の確保と育成を加速させる必要があります」。岳学部長は、政治思想教育と価値創造をいかに有機的に人材育成の全プロセスに融合させるか、イノベーション思想と事業推進能力の育成をいかに全面的に強化するかが、目下の新時代の宇宙人材育成における難題だと説明する。

 
この問題を解決するため、西北工業大学では、宇宙事業の特色を付した政治思想科目を開設して政治思想における人材育成ブランドを打ち立て、学生に宇宙飛行への碧い憧れを抱かせるよう導き、「紅い根+碧い魂」首尾一貫式政治思想教育モデルを確立した。その一方で、知識体系のアーキテクチャー全体を最適化し、基礎を強化し、融合を重視し、「3+X+1」(3年間の専攻カリキュラム学習、X年間の大学院研究訓練、1年間の研究および現場実践)という学部・大学院連携育成プランを制定・実施している。

 
南京航空航天大学宇宙飛行学部の王寅副学部長は、新時代の宇宙人材育成には、理論研究を重視する一方、産業への応用を軽視する問題があることに気づいた。産学融合において、宇宙事業チーフエンジニアと学内専任講師が協力して行う共同育成は人材育成に積極的な役割を果たしているものの、講師チーム同士の相互交流と共同発展には有効な仕組みがなく、ハイレベル講師陣の構造最適化と人材の確保・育成面で困難に直面している。また、産業資源の利用不足、学生が宇宙型プロジェクト実践に参加する機会の少なさという問題もあり、国家戦略の宇宙人材に対する総合能力要件、特に重大事業の実践能力面での要件を満たすことは難しい状況だ。

 
こうした状況を変えるため、南京航空航天大学ではダブル指導教員協同指導メカニズムを深化させた。すなわち「研究機関チーフエンジニア+学内指導教員」の指導教員連合チームを結成し、チーフエンジニアが事業を統括する一方、指導教員が学術面の総合計画を立てるという二重の優位性を発揮できるようにした。これによりプロジェクト実践と最先端の学術という異なる種類の問題を融合させ、研究目標を打ち立て、課題研究を展開し、動的最適化メカニズムを確立し、宇宙人材に対する事業型、実践型、イノベーション型協調指導を実現した。また、学内での科学イノベーションプロジェクト専攻実践、国防プロジェクトイノベーション実践、大型プロジェクト徹底実践の3段階事業実践人材育成モデルを刷新した。

 
今年6月、ハルビン工業大学未来技術学部が発足した。全国で初めて設けられた12の未来技術学部の1つで、未来の革命的・破壊的技術人材ニーズに焦点を合わせ、資源面の優位性に立脚して、学科を超えた専攻の交流・融合を生かした人材育成システムを最適化する。これにより国際的視野、家族や国への想い、イノベーション的思考、攻略能力を備えた未来のエリート人材育成のために力を結集させることを目指す。

 
「本学は交流・融合型人材の育成を目標に、学部・大学院から優秀な教員候補までが一体化した人材育成ルートを開通させます」。中国科学院院士で、ハルビン工業大学未来技術学部の冷勁松氏はそう語る。

 
科学技術成果の実用化を強化し、宇宙技術の恩恵を民生に注ぐ

 
11月24日の時点で、中国産ペースメーカーを用いた脳深部刺激療法 (DBS)手術が延べ1万7,000回実施された。同様の手術は全国約240の病院で実施され、患者は9,000人超、中国国内の市場シェアは30%を超えた。
2000年以降、長年宇宙医学および神経工学関連の研究に携わってきた清華大学の李路明教授のチームは、宇宙技術をパーキンソン病治療における難題に応用し、脳深部刺激療法 (DBS)に用いる「清華ペースメーカー(脳深部刺激装置)」を開発し、中国の植込み型医療装置の輸出超過の先駆となったことで、中国をこの分野で世界第二の技術保有国に押し上げた。その功績で2018年には国家科学技術進歩賞一等賞を受賞している。

 
「李教授のチームの成功のカギとなったのは、宇宙技術の蓄積と支えに他なりません」。王主任によれば、目下、中国の宇宙技術は急速に発展しているものの、経済への貢献は比較的小さく、アメリカなどの先進国と比べて市場化・産業化の面ではまだ遅れており、新たな産業モデルを模索する必要がある。将来的には、宇宙技術は、民用ロボットや地球上のあらゆる場所を1時間以内で結ぶ「都市間移動構想」への応用などにおいて、依然として広大な利用の余地が残されていると言える。

 
中国の現代化強国建設への宇宙技術の応用を巡っては、各高等教育機関も、科学技術イノベーション成果の実用化の一環として実情に即して推進することで、経済社会の発展に貢献している。
西北工業大学宇宙学部は、スペースプレーン、複合サイクルエンジンとスマート爆弾(誘導爆弾)用エンジン、小型衛星、宇宙での遠隔操作と知的制御、情報という5つの分野で明確な特徴を持っている。優位性の顕著な研究分野に力を入れることで、国防および国民経済のニーズを満たしつつ、国内外で競争力を保持し、巨大な技術と経済効果を生み出す成果の実用化と応用を加速させている。
岳学部長によれば、同学部の研究チームの成果を実用化する企業を3社設立し、最先端エンジンや超音速大型エンジン標的機などの技術を実用化した主力製品で、民用宇宙飛行、航空、兵器などの領域に貢献している。また、地方と共同で設立した西北工業大学文昌衛星・ビッグデータ技術研究センターなどの機関も、汎用ハイテク技術の検証を進め、社会貢献能力を強化している。同大はさらに、「上空観測ロケット国際サマースクール」「星辰ロケット・宇宙開発技術クラブ」などを通じて幅広い宇宙科学教育を展開しており、2022年には第1弾の全国科学教育拠点に選ばれた。

 
「2022年8月、ハルビン工業大学では『天工シンクタンク』を発足させました。宇宙・航空技術の発展を促進する『シンクタンク』『人材バンク』『情報源』そして『先兵隊』となることを目標に、力を合わせて宇宙・航空領域の『欠けている基幹・中核技術』の問題を解決していきます」。学長補佐の帥氏によれば、ハルビン工業大学が2022年11月に、ハルビン市政府、ハルビンハイテク産業開発区、ハルビン電気集団と共同で建設した宇宙ハイエンド装備未来産業サイエンスパークが、国から第1弾の未来産業サイエンスパーク建設試行事業に選ばれた。同サイエンスパークは、宇宙船製造・応用など、宇宙ハイエンド装備未来産業に関連した6つの技術領域に焦点を合わせ、黒龍江省を本拠地として、東北地域の3省1区を連動させ、全国と協調して、北東アジアに影響を及ぼす国家的宇宙ハイエンド装備未来産業における重点課題の高度育成拠点であり、有人宇宙飛行、深宇宙探査などの領域における中国のイノベーション能力の向上を支える存在である。

 
他にも先日、北京航空航天大学、中関村科学城管理委員会、沙河高等教育パーク管理委員会が共同で建設したスペーステクノロジー未来産業サイエンスパークも、同じく第1弾未来産業サイエンスパーク建設試行事業の1つに選ばれた。同パークは、国の安全保障戦略および地方の経済発展に貢献すべく、科学技術成果の実用化と科学技術企業のインキュベーションを加速させ、宇宙開発産業のクラスターを育成し、北京の科学技術イノベーションセンターとして、地域経済の質の高い発展に新たな力を注いでいくこととなる。

 
2022/12/26


中国教育报: 逐梦星辰大海 彰显高校担当

地域 アジア・オセアニア
中国
取組レベル 政府レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 研究
社会との交流、産学官連携 社会貢献、産学官連携