【ニュース・中国】世界的生物学者・徐浩新と陳家明が米教職辞し、良渚実験室正規メンバーに

 
一流研究者の帰国に関するニュースが頻繁に伝えられている。遠路はるばる帰国し、中国国内の研究機関や高等教育機関に所属した研究者たちは今後、中国が国際的な研究の世界でトップに立つべく、関連分野の発展を牽引していくことになる。浙江省にある良渚実験室(研究所)は先日、世界的に有名な研究者である徐浩新教授と陳家明教授の2名が米国トップレベルの大学における教員の職を辞し、中国に帰国して良渚実験室の正規メンバーとなることを発表した。

 
12月15日、良渚実験室は公式サイトで発表した文章「研究だけにとどまらない——リソソームおよびイオンチャネル領域で世界的に有名な良渚実験室所属徐浩新教授インタビュー」で、今年、徐教授が米ミシガン大学の教授職を辞任して帰国し、良渚実験室に所属して浙江大学主席教授の任に就くとともに、浙江大学基礎医学部長を務めると紹介した。

 
文書によれば、徐教授はリソソームおよびイオンチャネル領域で世界的に有名な研究者であり、若手科学者および技術者のための大統領賞(Presidential Early Career Awards for Scientists and Engineers : PECASE)を受賞した際には、当時の米大統領と接見した。また、科学界の世界的イベントである「ゴードン研究会議(Gordon Research Conference : GRC)」の第1回細胞小器官イオンチャネルとトランスファータンパク質分科会の議長も務めた。このように、徐教授は華麗な経歴の持ち主である。実際に会ってみると、常に笑みを絶やさず、礼儀正しく謙虚で、自ら過去の栄光を語るようなことはせず、過去の成功は「運が良く、周りに恵まれた」と捉えているような人物である。

 
中国への帰国を決めたきっかけについて、徐教授は「近年、世界トップレベルの人材に対する中国の吸引力が不断に上昇しており、優れた研究環境と伸びしろの大きさがトップレベル人材を引き付け、彼らが能力を発揮し夢を叶えられる舞台となっています。これまでは海外に行かなければ実現できなかった研究が、今では自国でも可能になっています。斬新で先進的な実験空間と潤沢な研究費という客観的要素は、帰国組にとって不可欠なものです」と語った。

 
さらに徐教授は次のように語った。「帰国したのは『夢を叶える』ためでもあります。私は常々、『これまでとは違うもの』を生み出すこと、そして『どんな人材』を育てるかについて考えています。良渚実験室は研究、実用化、イノベーション基金、チーム育成などが一体化された新しいタイプの研究機関です。このような柔軟な運営体制は、私の理想や夢を実現するにあたって非常に魅力的なものでした」
また、未来について徐氏は、「未来はさらに期待できると思います。中国には、常に持てる力を集中させ、大きなことを成し遂げるという強みがあります。研究において、私たちが重視しているのは『組織的研究』です。そうすることで、限りあるヒト・モノ・カネを集中させて世界最先端の科学の課題を攻略することができるだけでなく、新たな分野や方向性を切り開き、科学の発展における新たな優位性を生み出す点でも非常に有利になるのです」と語った。

 
良渚実験室に参加後、徐教授のチームは引き続きリソソームイオンチャネル関連の研究を続けるとともに、研究を他の細胞小器官にまで広げ、既に発見済みの7つのイオンチャネルの実用化に向けた研究を進める予定である。徐教授の目標は、これらのイオンチャネルすべてから医薬品を開発し、長きにわたって人類を苦しめた難病を治療することだ。

 
例えば、徐教授のチームは最近米『セル(Cell)』誌に論文を発表し、TMEM175というパーキンソン病(PD)の重要な遺伝的リスク因子が、リソソーム膜の水素イオンチャネルであることを証明し、これに対応する低分子アゴニストを開発して臨床前実験も行った。

 
徐教授はこうも語った。「まずは自信を持たなければなりません。私たちは最先端の成果を生み出し、優れた人材を育成し、世界的なイノベーションテーマを拡大発展させ、世界一流の研究機関となることができるのです。私は研究者として、常に自省を忘れず、引き続き確実で革新的で誰もが納得する科学的成果を挙げ、検証に耐え、蓄積可能な成果を生み出していきます。また、一人のチームリーダーとして、品格を身につけ、鋭い質問も果敢に投げかけ、科学の最高峰にも果敢に挑む若手学者を育成し、彼らのために学際的で多元的で多様な交流の場を設け、国際的視野を広げるための道筋を模索し続けます。さらに学部長としては、イノベーションの奨励および果敢なイノベーションを最も重要な位置に置き、若手のために寛容で開かれた成長環境を創出し、常に画期的な進展と超越を追い求めるよう励まします」

 
浙江大学の公式サイトによれば、徐教授は北京大学で生物化学を専攻して学位を取得し、現在は浙江大学と良渚実験室の兼任教授および米ミシガン大学生物学科客員教授の肩書を持つ、リソソームイオンチャネルおよび疾病研究の分野で世界をリードする研究者である。ゴードン研究会議の第1回細胞小器官イオンチャネルとトランスポーター分科会議長や、国際薬理学会議TRPチャネル分科会議長などを務めた経験もある。

 
徐教授は長年にわたり神経生物学、細胞生物学、分子生物学などの領域で教育と研究に従事しており、過去数年間には科学者およびエンジニアのための若手研究者大統領賞(PECASE)、ミシガン大学傑出教授賞などを受賞している。また、ハイレベルな論文を英『ネイチャー(Nature)』誌およびその姉妹誌に14本、『Science』およびその姉妹誌に2本、『Cell』およびその姉妹誌に8本、『米国科学アカデミー紀要 (PNAS)』に9本など合計70本以上発表しており、h-index(h指数)は53、論文の累計被引用数は2万回以上に達している。徐教授は世界的に認められたTRPおよび細胞内イオンチャネルの専門家で、リソソームを用いた電気生理学的記録法の開発者でもある。

 
12月16日、良渚実験室は再び公式サイトに「架け橋となる——細胞死および免疫学領域で世界的に有名な良渚実験室所属陳家明教授インタビュー」という文章を掲載し、細胞死および免疫学領域で世界的に有名な研究者・陳家明教授が先頃、米デューク大学免疫学科終身教授兼学科副主任の職を辞し、中国に帰国して正規メンバーとして良渚実験室に所属したと紹介した。

 
中国への帰国を決めた理由について、陳教授は「私は幼い頃から香港で育ちました。私の父は舟山、母は紹興の生まれで、2人からよく故郷の話を聞かされていましたし、幼い頃は両親と共に金塘島の親戚に会いに行ったりしていました。高校時代は、家庭教師をして稼いだ小遣いで北京、西安、成都、蘭州、銀川など本土の各地を旅行し、行ったことがある場所が増えていくたび、共感と帰属意識が強まっていきました」と語った。
陳教授はまた次のように語った。「私にとって、帰国は遅かれ早かれ選択する道でした。しかし、学問の追求や仕事の環境、それに家庭の事情もあり、時々『もしかすると、既に帰国のタイミングを失ってしまったかもしれない』という気がしていたのも事実です。ですが近年、祖国の研究環境は非常に大きな変化を遂げました。変化の1つ目は、経済力の急速な拡大です。科学技術への投資が大幅に増え、研究条件は世界一流と言っても過言ではないほどになりました。2つ目は大勢の帰国組を引き付けていること。3つ目はソフト面の環境です。高等教育機関や研究機関の科学者に対する尊重の姿勢を見ていても、新しいタイプの研究機関に代表される、より臨機応変なメカニズムを見ていても、いいタイミングが来たと思いました。」

 
陳教授は続けてこう語った。「故郷への想いが心に溢れ、遂に帰国を実行しました。新しいタイプの研究機関の試みであり希望であるこの良渚実験室を中国の同業者から熱心に勧められましたし、ハイレベル人材の研究プロジェクトに対する浙江省の手厚い支援には何も言うことはありません。ここでの新たな挑戦に興奮と感激を感じながら全身全霊で取り組みたいと思っています」

 
陳教授はさらに語った。「米国滞在中には成功も失敗も経験し、ある程度の成果も残しました。今回、太平洋を越えて帰国する際、私は自分の国際的なバックグラウンドを活かし、良渚実験室に国際科学交流の橋を架ける使命があると感じました。私は科学には交流が必要だと考えています。中国は世界との科学交流を今後さらに良い形で行い、学生に広い国際的視野を身に付けさせるようにしなければなりません。私も海外で活躍するハイレベル人材が中国に帰国するよう働きかけていきたいと思っています」

 
2022/12/17


澎湃新闻: 世界级生物学者徐浩新、陈家明辞去美国教职,全职加盟良渚实验室

地域 アジア・オセアニア
中国
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
行政機関、組織の運営 組織・ガバナンス・人事
国際交流 国際化
人材育成 研究者の雇用、高技能職業人材の育成