【ニュース・中国】コミュニティの「ミクロ細胞」が人材育成の大きなエネルギーになる

 
西南石油大学の革新的な人材育成方式が学生の成長を促す「ワンストップ型」プラットフォームを生みだした—
コミュニティの「ミクロ細胞」が人材育成の大きなエネルギーになる。

本紙記者 魯磊 通信員 謝娜 曹正

 
「1,000㎡を超える共産党青年団活動室、図書館、自習室、学内トレーニングジム、学術界の大物も参加する起業ティーサロンや研究交流コーナー……このような学生寮が『よその大学』ではなく、あなた方の目の前にあるのです。」西南石油大学臨渓書院コミュニティ党員の薛貽予氏は、2022年度の新入生を前に、これから4年間を過ごす「ワンストップ型」学生寮の紹介をしていた。

 
2019年に最初の「ワンストップ型」学生寮「臨渓書院」を設立して以来、西南石油大学は「1+1+N」の学生寮設立モデルを徐々に確立してきた。これは、1つの校舎、1つの中庭式コミュニティ(社区)、N個のミクロコミュニティ(社区)から成る学生寮で、ミクロ党建設・ミクロ教育・ミクロサービスを展開し、学生コミュニティという「ミクロ細胞」を活性化させ、コミュニティという「小社会」を、学生の成長をサポートする「大舞台」に育て、成長のためのエネルギーを蓄えようという試みだ。

 
西南石油大学共産党委員会書記の陳永燦氏は、高等教育機関における党建設および政治思想の特色を確立し、学生が実際に暮らす生活圏に寄り添うことで、人材育成の力と学生寮の有機的結合を実現させることは、党の第20回大会報告で明示された「人材育成の根本は立徳である」の徹底実施に他ならないと胸を張る。

 
「チェス・ゲーム」的統括:党による牽引、専門チーム+専任者

 
「ドリルの先端が届かなければ、石油やガスは出ません。一見目立たない小さな先端ですが、その裏には、長年にわたって中国の石油掘削事業を制約していた『海外技術への依存』という難題が横たわっています。できるだけ早くドリル技術を開発することが当時の至上命題でした。」臨渓書院の党史教育シリーズ講座では、既に定年退職している専門家で、中国のローラードリル研究の立役者である馬徳坤氏が「三老四厳(訳注:革命における3つの『老=実(誠実・事実・着実)』と仕事における4つの『厳(厳格・厳密・厳粛・厳正)』」シリーズの逸話を語っており、参加した学生や教員は深く聞き入っていた。
このような党史「講座」は、毎月18の学生コミュニティ党支部を巡回して開講されており、同大の元教授、元幹部、業界専門家、優秀な若手・中堅教師、政治思想科目の教員などが、自身の経験に基づき、党の初期の使命を若い学生に伝えるべく熱弁をふるっている。

 
このような優れた人材育成の力を学生コミュニティに集結させることができたのはなぜか。同大共産党委員会副書記で商工会主席の衡彤氏の回答は、「チェス・ゲーム」的統括と緻密なマッチングだ。大学側は全学17の職能部門と15の学院が参画する「ワンストップ型」学生コミュニティ総合管理専門チームを発足させ、緻密なマッチングにより、学生コミュニティに党支部を、寮の各棟・各階に党グループを設け、党員を「グリッド」の間に配置するようにした。また、各寮に党員ワークステーションや党員模範ステーションなどを設置し、党員教員が自身の特技や強みに応じて、主体的に担当する学生コミュニティ党支部を決め、学生コミュニティ建設に積極的に関わっていくことで、党建設の牽引作用を発揮できるようにした。

 
現在、同大学では院士・専門家や、模範教員などのべ300人余りが学生コミュニティに関わり、ミクロ共産党教育、時事講座、「三老四厳」ミクロ・クラスミーティング、学術(学業)指導教員によるミクロ講座、マナーブートキャンプ、メントレ講座など様々な特色ある党建設活動を計400回以上展開している。

 
「すみずみまで徹底」:学生に寄り添い、ピンポイントの教育を

 
学生寮21号棟の「常駐指導教員」である電機工学部の韓伝軍学部長は、しばしば学生の部屋を訪れ、学生らと学習や生活について語り合ったり、思想や生活上の悩みを解決する手伝いをしたりしている。

 
4年生の楊剣渝さんは卒業を控え就職活動の真只中だが、新疆ウイグル自治区の油田の現場に行くか、大都市に留まって安定した仕事を探すかで悩んでいた。韓学部長は楊さんをコミュニティ内の「常駐指導教員」ワークステーションに連れて行き、一緒にライフプランを考えたところ、楊さんは何か吹っ切れたように「先生のように個人より全体のことを考え、エネルギー業界の第一線に身を投じることで、僕個人の価値も上がると思います」と言った。

 
韓学部長のような「常駐指導教員」は、大学・学部の党建設、研究室、職員室などに所属する中堅教員をはじめ20名以上いる。「学生は成長の過程で様々な悩みに直面します。」同大学生工作部(訳注:学生の思想教育および日常管理を担当する部署)の蒲勇部長は、

 
人材育成の力を学生コミュニティに浸透させ、学生が抱える思想、学習、生活などの悩みを速やかに把握し解決することで、「三全育人(訳注:「全員参加」の「全過程」における「全方位的」な人材育成)」「ラスト1マイル」が徹底できると強調する。
人材育成の力をどのように学生コミュニティに融合させたのか。西南石油大学のやり方は、ミクロ教育をピンポイントで展開することだった。寮ごとに、学生の専攻や学部学科の特徴と結びつけ、「グリッド化」配置で、党建設、政治思想、サービスの力を寮の各棟・各階・各部屋に注入し、人材育成の効果を確実に発揮させ、学生のニーズを「すみずみまで徹底」して満たしている。

 
就職、メンタル、学業……学生が成長の過程で直面し得る様々な悩みは、「網目状」に分布するミクロコミュニティの中で必ず答えを探し出せる。現時点で、大学および学部(係)の指導幹部180名以上が自ら学生コミュニティの党青年団の活動や支部の連帯建設、寮の部屋のペアリング、書記・学長との「ゼロ距離」コミュニケーション、学部(係)長との茶話会や懇談会などの方法で学生コミュニティに関わり、若い学生とコミュニケーションを図っている。

 
「一体化」サービス:「スマート」コミュニティで全てが揃う

 
「病気になったときは家が恋しくなるのですが、ここの寮はまるで家にいるような感覚で気持ちが温かくなります。」化学工学部の2020年度入学の学生・廖琪さんは大腿部を骨折してしまった。5階の部屋に住んでいるため、上り下りが心配だったが、オンラインでの簡単な登録後すぐに、病気や怪我をした学生のために特別に設けられた宿舎に入ることができた。外に出るのが楽になっただけでなく、宿舎管理担当の教員が漢方薬を煮詰めたり、食事や水を届けてくれたりもした。

 
学生個々人の様々なニーズに対応するため、他にも寮には多目的室や自習室、ジム、ラウンジなどが設けられている。学生は寮内でトレーニングや自習をしたり、イベントを開いたりすることができる。

 
「ここはまるで小さな社会です。学習、生活、余暇、仕事……全てが一体化されているのです。」2022年度新入生の王美栄さんはそう感嘆の声を上げ、スマートフォンの画面を見せてくれた。そこに示されたサービスプラットフォームには、学生寮内の光熱水料の納付、遺失物取扱、相談・問合せなど、必要なサービスがひととおり揃っていた。

 
「我々の党建設と政治思想工作は、学生がいる所ならどこにでも拡大するのです」と衡氏は言う。「ワンストップ型」学生寮の建設は、「立徳樹人」の理念を前提に、学生が社会に出る前の「ラスト1マイル」を切り開き、学生の徳・知・体・美・労(働)の全面的発展を促す。後続の大学も、新たに建設中の中庭式学生寮に、それぞれの環境に適した学生のための公共空間を設ける計画を進めている。

 
2022/11/25


中国教育报: 社区“微细胞”迸发育人大能量

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