【ニュース・中国】一部高等教育機関が学部・修士課程の募集を停止 ハイレベル学術人材育成は博士メインに(2)

 
ハイレベル研究人材育成は博士課程メインに
 
こうした学術修士の募集停止現象について、中国教育科学研究院研究員の儲朝暉氏は、高等教育機関がどのような学生を募集し、どのような専攻を
設けるかは、各校の事情によると指摘する。高等教育機関の学生募集は通常、各校の実情に基づくとともに、その上級管理部門の政策要求とも
関係する。

 
一方、中国伝媒大学研究生院(大学院)副院長の任孟山氏と陳志文氏は、一部の高等教育機関が学術修士の募集規模を縮小しているのは、国の研究型人材
育成方針の調整が関係しているため
だと見ている。

 
「1990年は、全国で本科・専科合わせて60万人、修士課程学生3万人、博士課程学生3,000人という募集枠だった。当時は修士以上の大学院生は全て
研究型人材だった。」しかし、陳氏によると、現在は高等教育が普及しており、昨年、中国の大学受験「高考」の全国の出願者数は計1,071万人で、
本科・専科合わせて967万4,500人の募集があり、合格率は90%を超えていた。修士は100万人、博士は10万人を超える募集があった。今年に至って
は、修士の募集は120万人を超えていた。

 
陳氏は次のように指摘する。目下、中国のハイレベル応用型人材に対する需要は増加している一方で、ハイレベル学術研究人材に対する絶対的需要はそれほど
多くなく、しかも修士生の全員が学術研究に適しているわけでもない。
国際・国内環境の変化も中国の人材育成に新たな要求を提出している。」

 
昨年、中国では新中国成立以来初となる全国大学院生教育会議が開かれた。同会議の主旨に基づけば、未来のハイレベル研究人材は主として博士課程での
教育をメインとし、修士課程での育成は主として応用型人材、即ち専門職修士をメインとすることになる。

 
昨年公布された「専門職学位大学院生教育発展計画(2020~2025)」では、2025年までに、国の重要戦略においてカギとなる分野や社会の重要ニーズ
のある分野を中心に、修士・博士の専門職学位類別を増設するとともに、専門職修士の募集規模を修士課程全体の募集規模の3分の2程度まで拡大
することが
推奨されている。

 
さらに、新設される修士号授与専攻は専門職学位を主とし、高等教育機関が学術学位を授与する専攻を自主的に廃止した場合は、専門職学位を授与
する専攻に振り替えることも推奨されている。
 
陳氏はこうも言う。「アメリカでは、優秀な本科生は一般的に直接博士課程に飛び級し、修士号を取得して学業を終えるのは、途中でついていけなく
なりドロップアウトした学生である。一方、MBAやMPAなどは、本質的に職業教育であり、応用型大学院生すなわち専門職修士である。

 
「現在、中国の有力大学は修士課程学生の育成にそれほど力を入れておらず、『学部‐博士』育成モデルを模索し始めている。例えば上海交通大学の
『強基計画』では、学部‐博士育成モデルを採用していることを明確にしている。復旦経済学院では、学術修士を廃止するとともに、優秀な学部生を
選抜し直接博士課程に進学させる
ことを明言している。」

 
これらの事例が反映するのは、高等教育が十分拡大した後の、有名大学における差別化の動きである。普通レベルの大学は、当面そこまでの調整を行う
ことはないと考えられるため、学術修士の募集総数に大きな変化はないと陳氏は見ている。


澎湃新闻: 专家谈部分院校停招学硕:高层次学术人才培养转向以博士为主


地域 アジア・オセアニア
中国
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
行政機関、組織の運営 組織・ガバナンス・人事、政策・経営・行動計画・評価
大学・研究機関の基本的役割 教育
人材育成 入試・学生募集