大学に最も必要なものは「世界一流大学」仲間入りのためのタイムテーブルを制定することではない
陳平原教授は「外循環」について触れた際、中国の大学が過去20年の間、これほどのスピードで進歩してきたのは、国の予算投入を強化したこと、
国際化の波に身を投じたこと、そして国を挙げて教育への取り組みを行ったことを抜きには語れないとしつつ、今はこの三者に新たな位置づけが
必要になっていると指摘した。
また、「中国の大学の現状について言えば、まず最も必要なのは、『世界一流大学』に仲間入りするためのタイムテーブルの制定に躍起になるのでは
なく、自らの発展の道を見つけることだ。今の情勢は、アメリカ一強時代に変化が生じ、中国が台頭しつつあるが、我々はそれでもなお謙虚に学び、
留学生や訪問研究員を国外に送り出さねばならない。直近の問題は、アメリカ側が必ずしも門戸を広げ受け入れているわけではないという点であり、
それゆえ、我々はより活力に満ちた外循環の発展メカニズムを確立しなければならない。」との認識を示した。
しばしば人々の注目を集める大学ランキングについて、陳教授は、世界の大学の発展の道筋と枠組みを今一度理解し直し、各種大学ランキングの
呪縛から脱却すべきだと指摘するとともに、教育部および専門家・研究者に対し、留学生や訪問研究員が全体として有名な大学ではなく、専門における
優位性が際立った大学に行きやすいよう、より詳細で実用的な情報を提供すべきだと提案している。
内循環については、 211工程、985工程、「双一流」といった一連のプロジェクトではトップレベルの高等教育機関に大量の資金が投入されて
いるが、その反面、地方の大学などでは予算状況が厳しく、経営状態が思わしくないところが多いと指摘した。
また、現在は発展の方向を適切に調整し、不足点を補う絶好の機会であるとの認識を語り、西部に位置する大学の発展に関する問題を解決する
ため、人材の引き止めを重視するとともに、「西部長江学者」制度を設立することを提案した。
高等教育の発展に存在する地域間の不均衡問題に対しては、地域教育資源の合理的配分を通じて教育の内循環を改善し、中国の大学の、中華民族
の復興のために人材および知識面の支援を行う機能の向上を図ることを提案した。
一方、甘陽院長は、教育の環境に焦点を当て、現在の教育が「清華大学・北京大学合格者一覧」や「詰め込み教育」などを重視しすぎている
問題を指摘した。
「近年、中国の大学入試『高考』のたびに、世間には清華大学と北京大学の2校しかないかのような印象を受ける。他の大学はすべて『その他』
と一括りにされている。こうした現象は清華大・北京大にとっては良いのかもしれないが、中国の高等教育にとっては、中国の社会全体にとっては
どうであるのか、ということを考えなければならない。」と問題提起した。
甘院長は経済学者の観点を引用し、「社会における収入の不平等が大きくなるほど、教育により拡大する不平等も大きくなり、『詰め込み教育』や
『ヘリコプターペアレント』、『スパルタ教育』といった現象が深刻化する」と教育の現状を説明した。
また、真の平等と公平を実現し、収入格差を縮小し、大学に行けなかった労働者も大卒者と同様にまともな収入と社会的な尊重が得られるような
社会になるよう望んでいると語った。
2020/11/03