【ニュース・中国】教育部が「ゴールデン・カリキュラム」を打ち立てる 来年までに3,000の優れたeラーニングカリキュラムを整備

 
5G通信技術の応用の急速な推進に伴い、高速通信網が張り巡らされ、映像による授業が急速に普及すると思われる。オンライン授業はすでに教育資源の最適化、高等教育指導の質および国民の科学的資質の向上の主要な手段となっている。先ごろ、教育部高等教育司は「2019年国家優秀オンライン開放型カリキュラム認定業務の実施に関する通知」(以下「通知」)を公布し、中国のオンライン開放型カリキュラムの構築と応用・共有を推進している。今年の認定業務が映像授業による教育資源の最適化におけるターニングポイントとなることは明らかだ。
 
教育部高等教育司の呉岩司長は科学技術日報記者に話した。
「オンライン開放型カリキュラムの構築・応用・学習を大いに推進することは、中国の高等教育の質、特に人材育成の質の『軌道修正による飛躍』を実現するための重要な措置だ」
 
中国のMOOC(大規模公開オンライン講座)の数と活用規模が世界一に
 
「通知」は、複数の学科の思想の融合・産業技術と学科理論の融合・専門能力を越えた融合・複数の学科のプロジェクトの実践の融合が具現化された新たな工業科や新たな医学科、新たな農業学科、新たな文系科などの高水準のカリキュラムの申告を奨励している。また、対外的な普及に有益な二か国語でのカリキュラムの申告を明確に奨励している。
 
教育部が先ごろ公表した内容によると、現在までに配信されたMOOCは計1万2,500、受講者はのべ2億人以上となった。中国のMOOCの数と活用規模は世界一であるだけでなく、教育の質を向上させ、教育の公平性を推進するための重要な戦略的措置となっている。
 
MOOCは大規模公開オンライン講座とも呼ばれ、異なる地域の学習愛好者一人ひとりがインターネットを通じて優れたカリキュラムを受講することができる。
 
「2013年に始まった中国のMOOCの構築は6年間で急速に発展し、『大が小を導き、強きが弱きを導き、同じ心で同じ方向に共同で発展する』という良好な局面を形成してきた。データによると、国内の10以上の大学や組織がそれぞれの特色あるMOOCの場を相次いで構築しており、現在まですでに1,000以上の大学がネットワーク上にMOOCを開設し、のべ4万4,000人の西部地域の大学教員がMOOC応用研修を受けた。米国・英国・フランス・スペイン・韓国などの著名なカリキュラムプラットフォームに国内19大学の200以上の優れたMOOCが相次いで導入された」と呉司長は話した。
 
中国では非常に早い時期にオンライン開放型カリキュラムの構築と応用が始まった。
 
2012年は世界のMOOC元年であり、教育部はその年の8月に調査団を米国・日本に派遣し調査を行った。2013年4月には北京大・清華大を含む中国の複数のレベルの高い大学が国際的に著名なカリキュラムプラットフォーム上に講座を開いた。2013年5月、教育部はオンライン開放型教育・高等教育改革シンポジウムを開催し、トップダウンで制度の整備を進めた。2013年10月、中国初のMOOCプラットフォームが開設された。2014年4月、教育部は清華大学に教育部オンライン教育研究センターを設立し、複数のMOOCプラットフォームがオンラインサービスを開始した。
 
2万の優れたカリキュラムを用いて人材育成の質を向上
 
一連の政策および指導的文書もMOOCの実施を促進した。
 
2015年の「高等教育でのオンライン開放型カリキュラムの構築・応用と管理の強化に関する教育部の意見」ではMOOCの構築は「大学を主体とし、政府が支援し、社会が参加する」という方針のもとで応用と共有を強化し、規範の構築を強化すべきことが提起された。2016年6月の「中央部門所属大学による教育指導改革の深化に関する指導意見」では、部に所属する大学はオンライン開放型カリキュラムの構築を積極的に推進することを明確に要求し、特別資金および政策的裏付けが保障された。2016年9月の「高等教育の履修単位の認定・互換業務の推進に関する意見」では、学生によるオンライン開放型カリキュラムの組織的な学習を履修単位に追加することが提起された。
 
2017年、第1回国家優秀オンライン開放型カリキュラム認定業務が始まり、2018年1月、教育部は490の国家優秀オンライン開放型カリキュラムを公表した。
 
呉司長によれば、中国のMOOCの構築は当初から明確に大学の教育改革と共に推進されてきた。その主な位置付けは大学内の教育であって、それを基礎として社会人の受講者についても配慮されているもので、世界の先進国でMOOCが主に社会人の受講者に向けられているのとは異なっている。また、中国では地域間の発展水準の格差が非常に大きいため統一的なモデルを採用すべきではないとされており、中国のMOOCは先進国MOOCの「大規模」な特徴を参考にしつつも、大規模開放型と小規模カスタマイズ型を共に重視する多種モデルで構築されている。
 
「専攻は人材育成の基本的単位であり、カリキュラムは人材育成の核心的要素だ」
 
呉司長の話によれば、2020年までに教育部は3,000の国家優秀オンライン開放型カリキュラムと7,000の優れたオフラインカリキュラム、合計1万の国家レベル優れた一級のカリキュラムを発表する。同時に各地で地域の状況に応じたオンラインとオフラインの省レベル優秀カリキュラム計1万を発表する。この各1万の2種類のカリキュラムを用いて、中国の高等教育の人材育成の質の新たなステージへの飛躍を推進していく。
 
挑戦性と先端性のあるカリキュラムこそが最高のカリキュラム
 
「通知」ではカリキュラムへの要求が明確にされている。学習カリキュラムの計画は教育指導の法則に従って現代教育思想を具現化するとともに、「普通高等学校本科専攻類教育品質国家規格」などの要件に適合し、大規模オンライン開放型カリキュラム教育の特徴を備えていなければならないとされる。学生を中心とする教育と学習の新たな関係の構築を重視し、学生の批判的思想・団結能力・複雑な問題の解決能力の育成を重視する。情報技術と教育指導の深いレベルの融合を具現化するカリキュラム構造と教育モデル、科学的なカリキュラムの知識体系、そして適正な資源配分・考課評価方式を構築することは、オンライン学習および混合式教育に適している。
 
呉司長は「我々は中国の最高の大学・最高のチーム・最高の教員を結集して最高のカリキュラムを作成したが、それを象徴的に中国の『ゴールデン・カリキュラム』と呼んでいる」と言う。
 
「ゴールデン・カリキュラム」とは何か。呉司長の話では、高次性、革新性、そして挑戦性に帰結させることができる。
 
「高次性とは、知識・能力・素質を有機的に融合し、学生の複雑な問題を解決するための総合力と高いレベルの思想を育成することを言う。教育カリキュラムは単純な知識の伝授ではなく、知識・能力・素質の結合だ。本科生の卒業を認めるための重要な要件の1つは、複雑な問題を解決するための総合力と高いレベルの思想だ。教育過程には標準的な答えはなく求められるのはさらなる能力と思想の訓練だ」
 
呉司長の話によると、革新性は3つの方面に具現化される。カリキュラム内容には先端性および時代性があり、教育形式には先進性および双方向性があり、学習結果には探求性および独自性がある。挑戦性とは、カリキュラムに一定の難度があって学生と教員が共に努力する必要があり、そうすることにより初めて実現するものであることを言う。教員は真摯に時間・精力を費やし愛情を持って準備をしたうえで講義を行うべきであり、学生は教室の内外を問わずより多くの学習時間と思考を確保しなければならない。
 
呉司長は、「この『最高』とは研究型大学や、985や211大学でなければならないということではなく、大学にこの分野について非常に優れたチームがあり、非常に優れた教員がいることだ。レベルの高い大学であれば必ずレベルの高いカリキュラムがあるが、だからと言って新設の本科教育機関や地方大学のカリキュラムが良くないということではない。我々が必要とするのは教員の熱意のこもったカリキュラム、挑戦度のあるカリキュラム、先端性のあるカリキュラムであり、これらに該当するカリキュラムこそが我々がいうところの『最高のカリキュラム』なのだ」と言う。
 
中国はすでに世界のMOOC大国であり、現在、中国方式を元にしたMOOCに関する国際規格の制定に参加し、主導的な役割を果たしている。
 
「MOOCはいつでも、どこでも、誰でもこうした共有資源を享受できる環境を実現した。我々がMOOCを構築することは、最高の資源・最高の課程・最高の教員によるカリキュラムを全中国の人民と全中国の大学、さらには全世界の受講者が分かち合うことを可能にすることだ」と呉司長は話した。
 
2019年7月11日
 
中国新闻网:教育部打造“金课” 到明年将有3000门精品网络课程[来源:科技日報]
 

地域 アジア・オセアニア
中国
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