【ニュース・中国】教育部、文書で「高考移民」の根絶と学生募集の秩序維持を要求(3)

 
行政手法では根治が難しい、特別法の公布を
 
2019年4月、広東省深セン市の富源学校で、2019年の「高考」出願者のうち、32名が「高考移民」だったことが発覚した。深セン市教育局が発表
した「深セン市富源学校『高考移民』の調査処理進展状況に関する報告書」によれば、最終的に受験生32名は深セン市での「高考」出願資格を
取り消され、深セン市富源学校は2019年の生徒募集計画人数を50%削減する行政処分を受けた。

 
また、深セン市富源学校理事会は徹底した自己批判を命じられるとともに、同校に対し、直接責任者および担当者を厳しく処分し、問題の改善に
真摯に取り組み、学校運営に厳格な規律をもたらすよう命じた。

 
問題が生じたとき、行政手法で解決するというのは、実は単なるループでしかない。」南京師範大学社会発展学院教授の程平源氏は、もし「高考移民」
に対するいわゆる「是正」が、短期的な行政手法による関与のみであるなら、長期的に見た場合、何の効果もないと指摘し、行政手法で「高考移民」
を「堰き止める」よりは、規則で規制をかけ、移民現象そのものを減少させる
方がよいと主張する。

 
程氏は、「高考移民」を取り締まるためには、監督・検査および試験に関する特別法の制定が不可欠であり、それらなしには法による国家統治と法に
よる教育ガバナンスの理念に真に適合することは叶わないと述べる。「その理由は、関連情報の多くに透明性がなく、『通報がなければ検挙しない』
という処理原則のみに頼っていては、『高考移民』を真に取り締まることは難しい。そのため監督・検査が非常に重要になる。」

 
「高考移民」に監督・検査を実施する際は、「高考」の秘密保持体制を参考にするのがよいと程氏は考える。「高考」の秘密保持において、国はかなり
神経を使っている。「高考移民」問題の解決に乗り出す際も、関連部門を連携させ、複数部門が共同で主体的に監督・検査を実施することができれば、「高考移民」問題解決の助けとなるはずだ。

 
程氏は、試験に関する特別法「試験法」を制定することで、「高考移民」などの無秩序な現状を整備するやり方を提案する。「試験法には今議論の
対象としている『高考』だけでなく、公務員試験、大学院入学試験、専門資格試験なども含めるべきで、そういう意味において、試験法は重要な法律だと
言える。」

 
「世界的に見ても、中国の歴史を見ても、試験による人材選抜というのは非常に重要なことであるのは間違いない。しかし今の中国には試験に
関する法律がないため、『高考移民』などの管理や処罰はそもそも不可能だ。」

 
程氏は、試験法の制定時に「高考移民」を規制対象に包括させるためには、まず法律の中でその具体的定義を明確にし、「高考移民」に基本的な
判断を加える必要があると考える。試験法においては、例えば、必ず両親とともに転居しなければならない、何年以内の転居を「高考移民」とみなすなど、「高考移民」に関連する事象について明確な指標を設ける。

 
また、「高考移民」の受験生は何年間「高考」の受験資格が与えられない、当事者となった学校および戸籍関連の責任者については責任を追及する
など、効果的な懲罰規定も設けるべきである。「法律違反の代償が痛くも痒くもないものならば、今後もリスクを冒そうと考える者が跡を絶たない。」

 
程氏は、「高考移民」問題を議論するとき、その背後にのぞく教育制度の不公平性という問題を無視するべきではないと訴える。「教育制度が規範化、公正化され、国の教育格差を資源の均等配分の方向に是正しなければ、『高考移民』問題の根本的解決はあり得ない。」

 
2021/03/07 
 


澎湃新闻: 教育部印发文件,要求标本兼治“高考移民”维护招生秩序


地域 アジア・オセアニア
中国
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