【ニュース・中国】大学入試キーワード:中国の大学受験「高考」の利用による大学への入学率は8割超 「物理」の重要度が上昇 

 
中国の大学受験「高考」は、学生と親にとって最大の関心事であり続けてきた。出願の最終段階に入った2019年の高考には一体どのような傾向があるだろうか。
 
先ごろ中国教育オンラインが公表した「2019年大学受験調査報告」(以下「報告」)によると、2019年の高考出願者数は1,000万人を突破した。また2018年の全国の「高考」による大学への入学率は81.13%に達しており、一部地域では90%を超えている。一方、高考改革の推進に伴い、教育部は例外的な学生募集業務に対する適正化を進めており、自主学生募集(全国統一大学入学試験とは別に各大学が独自に入学試験や面接などを行う学生選抜方式)を縮小、一部の教育機関では6割以上減少した。
 
高考出願者数が1,000万人を突破、高考の利用による大学への入学率は8割以上に
 
2019年、高考の出願者数は10年ぶりに1,000万人台に回復した。
 
教育部が公表した最新データによると、2019年の全国高考出願者数は1,031万人、再び1,000万を突破し2010年以来の最高記録を更新した。しかし、高考の利用による大学への入学率は2007年から現在まで一貫して上昇傾向を示している。
 
「報告」によると、高考の利用による大学への入学率は2017年に80%を突破したが、これはより多くの受験生が高等教育を受けられるようになったことを意味する。2018年、全国普通本専科の学生募集数は前年より3.87%増の790万9,900人で、また高考の利用による大学への入学率は81.13%に達した。一部地域で高考による大学への入学率は若干下降したものの、全体にはなお高い水準を維持している。特に河北省・江蘇省などは高考の利用による大学への入学率が90%を超えている。
 
注意しなければならないのは、ここ数年、一部地域における学生募集の定員割れ状況が突出してきていることだ。「報告」によると、江蘇省・河北省の2つの地域を例に挙げると、江蘇地域では2016年の学生募集の定員割れが4万2,000人に達したが、2017、2018年は2万人前後に抑えられた。河北地域では2014年の学生募集の定員割れは2万8,000人に達したが、2017年には7,500人にまで減少した。
 
高等教育の運営規模が継続的に拡大するにつれ、高等教育は普及化の段階に入ると思われる。「報告」によると、中国はすでに世界最大規模の高等教育体系を構築したと言える。高等教育の粗就学率が急速に向上し、まもなく普及化の段階に入ると思われる。1978年、高等教育の粗就学率はわずか1.55%だったが、それからわずか24年後の2002年には15%に上昇し、エリート化から大衆化の段階に入った。
 
大学の例外的な学生募集が縮小傾向に
 
高考改革が進むにつれ、教育部は公平性の推進および科学的な人選を重視する観点から、例外的な学生募集に対する適正化を行った。
 
2019年は自主学生募集が過去「最も厳格な」年になるとの意見が多くあったが、教育部は自主学生募集に対して10項目の厳しい要求事項を定めた。その1つとして、公平と正義を特に意識して、学生募集の規模を厳格に抑制している。
 
「報告」によると、これまでの自主学生募集において、大多数の大学の実質合格者数は学生募集予定人数を下回っている。2018年に学生募集数を公表した79か所の自主学生募集実施大学のうち、76の大学では自主学生募集が定員に届かず、不足の人数が5,200人を超えた。70の自主学生募集実施大学からのデータを集計したところ、わずか2つの大学のみが昨年と同水準だった。他校はすべて計画を縮小した。そのうち13の大学は自主学生募集計画を60%縮小しており、上海大学は80%も縮小した。
 
また、2019年の自主学生募集に対する要求事項は全体に厳格になった。「報告」によると、清華大・北京大の2019年の自主学生募集の最低要求事項は明らかに厳しくなっただけでなく、ターゲットとする学生募集の範囲が縮小し、最大優遇幅も全て2018年の60点から20点に引き下げられた。体力テストが大学の自主学生募集における審査の「標準項目」となり、26の大学の自主学生募集要項では受験生が運動能力テストに未参加または不合格の場合、自主学生募集の資格に影響を及ぼすと明確に規定されている。
 
さらに高考改革の推進に伴う総合評価改革試行作業が段階的に進んでおり、範囲が絶えず拡大するとともに、学生募集数も絶えず上昇している。「報告」の大まかな集計によると、2019年は全国計99の大学が総合評価による学生募集を試行しており、そのうち14校が複数の地域で総合評価により学生を募集し、残りの85校が省内で総合評価による学生募集を行う。
 
注目すべきは、一部の大学では総合評価がすでに主要な学生募集方式となっていることだ。統計によると、2018年、浙江省で「三位一体」総合評価による学生募集を行った中央省庁所轄および他省所轄の9大学のうち、浙江大学を除く8大学では「三位一体」学生募集の計画数が1,014人だったのに対して、統一試験学生募集はわずか78人だった。
 
また、推薦入学の基準がますます厳格化している。「報告」によると、2014年から全国の推薦入学者数は5年連続で減少している。推薦入学者は2013年の6,759人から2018年の2,091人に大幅に減少した(国の犠牲になった烈士の子女と引退したスポーツ選手を除く)。推薦入学者を受け入れた教育機関も2018年には78校に減少した。
 
高考改革は中西部に拡大、物理の重要度が上昇
 
2019年4月、第3回8省・市高考改革計画が公表されたが、今回は試行範囲がさらに中西部にまで拡大した。「報告」によると、以前実施した6省・市では山東省・浙江省を除き全て受験者数が減少した。しかし今回実施する省・市は基本的にいずれも高考が盛んな省で受験者数も非常に多い。
 
第3回8省・市高考改革計画は、以前実施した6省市の計画とは少し異なっている。受験科目のパターンが「3+3」から「3+1+2」に変更され、物理または歴史が必須科目となり、どちらかを選択しなければならなくなった。学生の募集時に物理と歴史の2つの科目別に分けて計画を策定し、それぞれ合格ラインを設定したうえで、出願者の身上調書を志望校に個別に送付し、個別に採用する。この措置では物理と歴史の学科としての基礎的な地位が強調され、以前、他の省の高考改革計画の執行過程において発生した物理の受験者数減少という問題の解決が期待される。
 
これについての「報告」の分析では、物理を受験した学生はより多くの選択の機会が得られることから、さらに多数の学生が物理を選択すると思われる。
 
「報告」によると、以前、高考改革を実施した6省・市はすでに2020年の学生募集専攻受験科目に関する要求事項を公表しているが、物理を必須科目とする専攻課程が明らかに増加している。上海の本科教育機関40か所の大学専攻受験科目についての要求事項を例に挙げると、2017年には物理を必須科目とする専攻はわずか65であったのに対して2020年は558の専攻で物理の選択に関する要求事項があり、そのうち380の専攻が物理を必須科目としている。
 
科学研究において物理は基礎的な地位を占めており、レベルの高い大学では物理の重要度はさらに高い。「報告」によると、九校連盟(C9)と中国科学院大学の計10か所の中国トップの大学を分析した結果、7校の大学では物理を必須科目とする専攻の比率が50%を超えている。中でも、中国科学技術大学ではすべての専攻が物理を必須科目とすることを要求しており、中国科学院大学・ハルビン工業大学・西安交通大学・浙江大学・清華大学・上海交通大学ではそれぞれ76.92%、74%、72.72%、72.2%、60%、51.16%の専攻が物理を必須科目としている。
 
2019年7月3日
 
新華網:高招关键词:高考录取率超八成,物理地位提高[来源:中国青年报]
 

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