【ニュース・中国】大学における国語課程の活力をどう取り戻すか

 
【文化評論】
 
先日、「大学国語教育の父」徐中玉教授の逝去が伝えられ、人々を悲しみと追憶に導いたが、同時に大学国語教育とは何か、何のために大学で国語を学ぶのかという永遠のテーマにも再び注目が集まることになった。西南聯合大学時代の「国文」に始まって現在の「語文」に至るまで、時期により様々な名称がつけられてきたが、国語教育がその時代を生きる人々の人文学的教養を高めるのに重要な役割を果たしていることは論をまたない。
 
徐中玉教授は30年以上前、著書『大学語文』の前書きで「大学で国語の授業を行う意義は大きい」と記していた。数十年の中断を経た後、教授の提唱で大学での国語教育を社会の各界が重視するようになり、再び大学で授業が行われるようになった。しかし、再開当初の情熱に比べると、近年は様々な原因で全国の高等教育機関、特に理工系高等教育機関で国語の授業が廃止されたり周縁化されたりしており、国語教育に関心を持つ人々は大学国語が「帯に短し襷(たすき)に長し」という扱いに困る存在になっていることに気づき始めている。こうした現状について徐中玉教授は、高等教育機関である大学は「失語」状態になってはならないとはっきり述べている。では、どうすれば大学は「失語」状態にならずに済むのだろうか。どうすれば大学国語は再び生まれ変わることができるのだろうか。
 
理工系高等教育機関は強みを持つ専門分野に固執する傾向がある。熾烈な就職競争や目まぐるしいテンポで進む現代生活に身をおいていると、実用主義や理性主義に偏りすぎてしまう場合がある。客観的に見て、大学における国語教育は、直接的に物質的富を生み出すわけでもないし、就職にすぐに効果を発揮するわけでもない。しかし、それは人文学的精神の宿るところであり、いつの間にか目に見えない形で私達の夢や価値観に影響を与えている。理工系高等教育機関は専門学科の特色を維持すると同時に、学生の人文学的素養の育成も強化していくべきであろう。
 
国語教育とは古書の山に埋もれることではなく、理系の学問と同様、今風にも出来るし面白くも出来るものだ。映像や画像、Eメールといった現代の教育手法を活用することで、大胆に教育改革を試行・実施すること。教育現場では細心の注意を払い、最新の成果を取り入れて学際的かつ総合的視野で「中国の問題」に切り込むこと。常態にありながら非常態を構築し、非常態にありながら常態を再現する思考法で、古今のモデルを関連付け学ぶ楽しさを刺激することだ。「生きた」人文学の理念は、興味を持てば学びにつながるというものだ。それは青年学生の人生・生命・心・精神に対する思考を呼び覚まし、心と脳を刺激する。そして、古典を学び、広く長所を吸収し、知識と行動を一つにして、今後の学習や仕事に必要な精神基盤を形成してくれるのだ。
 
大学の国語教育は「生きて」いなければならない。「生きた」人文学は、「永遠に枯れない水源」から得られるものだ。重要なのは、大学の国語教育は元々生き生きとした生活から生まれるものであり、最も心を打つのはそれが心や感情に関わっているときだ。大学国語は教養であり常識ではない。また、「大学」の国語であり「受験浪人」の国語ではない。試験はあるが、授業は学ぶ楽しさの尽きない土台となるものだ。それゆえ、自らの頭で考え、紋切り型の文章に異を唱え、正しい知識と優れた見解を持つこと、歴史を今に応用し、功を焦らず、文化を継承していくことを提唱することが可能なのだ。
 
大学国語では「享有型」教育を提唱すべきだ。「享有型」は、『孟子・尽心上』の「引而不発(いんじふはつ=「弓をぐいっと引き絞って満を持する」ことから「十分に準備して時機をねらう」「人を指導する呼吸を十分心得ている」「人を指導することが上手である」等の意味に使われる)」に由来する。これまでの授業は教師が主役の「知識の詰め込み」になりやすく、教師は教卓で熱弁を振るい、学生は机で眠気を我慢するという光景がしばしば見られた。しかし一方で、学生の意見に耳を傾けるばかりでは教室運営が成り立たず、教育効果が上がらないことも容易に想像できる。したがって、現在のような情報化時代における大学の国語学習では、教師と学生が共生関係を築き、教師は主として導き役になり、学生は自主学習に重点を置くこと。そして、思考を共有し対話と双方向のコミュニケーションを強化して、理解と啓発に注力するとともに検討と交流において最大の効率で協力していくことを提唱していくべきだろう。
 
ともかく、大学の国語教育は非常に重要である。大学生は話しができ、表現豊かで、交流に長け、美しいものを理解していなければならない。こうしたものには全て、相応の導きと支援が必要なのである。

(筆者:于淑静、北京航空航天大学人文学院教師)

 
2019年7月11日
 
中国新闻网:大学语文如何重焕生机[来源・光明日报]
 

地域 アジア・オセアニア
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