【ニュース・中国】中国の特色ある新型大学シンクタンクの建設と発展に向けて

[要旨]現代の大学は社会奉仕という使命からシンクタンク機能を担っている。70年に及ぶ力強い発展を経て、多くの高等教育機関は中国の特色ある新型シンクタンク建設の重要な力となっている。経済のグローバル化、世界の多極化、社会の情報化が進むなか、わが国の高等教育機関シンクタンク建設事業は大きな成果を収めているが、同時に様々な試練にも直面しており、今後の発展に向けての努力方向をより一層明らかにする必要がある。
[キーワード]中国の特色ある新型シンクタンク、高等教育機関シンクタンク、専門化

 
シンクタンク、即ち「頭脳集団」とは、専門家からなり、政策決定者が経済・社会、科学技術、軍事、外交などの問題に対処する際、これをサポートする形で最適な理論・思想・戦略・方法論などを提供する公共研究機関であり、知識と思想を生み出す組織である。現代の大学は社会奉仕という使命から、開学当初から程度に差はあるが、シンクタンクの役割を果たしている。新中国成立以降70年にわたる勢いのある発展を経て、高等教育機関は中国の特色ある新型シンクタンク建設の重要な力となっている。経済のグローバル化、世界の多極化、社会の情報化が進むなかで、わが国の高等教育機関シンクタンク建設事業は大きな成果を収めているが、同時に様々な試練にも直面しており、今後の発展に向けての努力方向をより一層明らかにする必要がある。
 
中国の特色ある新型高等教育機関シンクタンク建設は大きな成果を収めた
 

中国の特色ある新型シンクタンク建設は、習近平同志を中心とする党中央が、新時代における党と国の事業の全局に立脚し、改革・発展に大衆の英知と力を結集するという観点に着目して打ち出した重要な政策決定である。第18回党大会以降、習近平総書記は中国の特色ある社会主義を堅持し発展させるという方針に立脚し、国際と国内という2つの大局を全体的につかみ、中国の特色ある新型シンクタンク建設に関する重要講話を多く発表し、重要な指示を出し、新情勢下において中国の特色ある新型シンクタンク建設を加速させるための方向性をはっきりと示し、大きな原動力を与えた。党中央が非常に重視し、政府が大いに支援するなかで、多くの高等教育機関は教育部の「中国の特色ある新型高等教育機関シンクタンク」建設の呼びかけに積極的に応じ、いくつかのシンクタンクがハイペースで設立され発展するようにし、党の政権党としての地位を固め、国の戦略的政策決定に奉仕し、経済・社会の発展を推進し、国際社会における発言権を強化するなどの面で重要な貢献を果たした。それは次のようなものである。
 

第一に、党と国の事業の大局において重要な役割を発揮した。高等教育機関シンクタンクは自身の強みと積極的かつ主体的な役割を発揮し、中央政治局グループ学習での解説・講座への参加から、重要政策の検討や重要文書の起草への参加にいたるまで、一連の大きな事柄、重要な事柄、困難な事柄への対処のなかで、試練を受け鍛錬を重ね、大局に奉仕し、何事にも果敢に挑む好ましい姿勢と専門的素養を示した。例えば、中国人民大学国家発展・戦略研究院(以下、人大国発院)は中央から直接任された重要課題と内部参考情報の研究任務を積極的に担い、その成果と提案は何度も中央関連部門に採用され、国民経済・社会発展計画、国土空間計画、マクロ経済、公共外交、新型都市化、社会保障、人口政策、就業起業、EC(電子商取引)などいくつかの分野における関連提案は最終的に国の重要政策になっている。
 

第二に、経済・社会の健全な発展の推進において重要な役割を発揮した。高等教育機関シンクタンクは校内および社会各界の優れた力を結集し、長期にわたって中国経済・社会の運営と発展に焦点を当てて、動的な追跡研究をしっかりと行い、中国の経済・社会が直面している様々な重要問題について系統的に研究し、定期的に様々な形での情勢分析や予測レポートを発表し、政府、企業並びにその他の組織の意思決定に有益な経済的主張や政策上の提案を提供し、中国の経済・社会の長期的・安定的・持続的な成長に独自の貢献を行ってきた。例えば、校内外の関連分野の一流の研究者40人あまりを招集して結成された人大国発院マクロ経済研究チームは、3年連続で50部を超える研究レポートを発表し、中央に100部あまりのテーマ別内部参考情報を送付し、中央の経済政策関連政府諮問サービス活動に直接関わったチームメンバーは延べ200人を超えている。
 

第三に、世論を正しく導くうえで重要な役割を発揮した。高等教育機関シンクタンクは世論の「風向計」および「ナビゲーション」としての重要機能を積極的に担い、問題志向と戦略分析を堅持し、重大な世論事件に関しては真っ先に観点と声明を発表し、政治顧問と民意啓蒙の役割を存分に発揮した。例えば人大国発院は同大学の優れた資源を活かして重要な社会問題に焦点を当て、「中国マクロ経済フォーラムシリーズ報告書」「『一帯一路』グリーン発展報告書」「中国EC信用発展報告書」など一連の重要な研究レポートをまとめ、過去3年で各種研究成果2,000件あまりを発表し、インターネットメディアによる報道や転載量はのべ50万本を超えている。
 

第四に、公共外交能力と国際社会における発言権強化において重要な役割を発揮した。高等教育機関シンクタンクは中国の立場と世界的視野を堅持し、戦略思考を強化し、世界の最先端に肉薄し、積極的に世界に目を向け、世界に向かい、世界に門戸を開く開放的なシンクタンク運営をし、国際交流と協力を積極的に展開し、様々な形でのシンクタンク外交・シンクタンク対外宣伝を積極的に展開し、国の公共外交能力向上をサポートし、国際的影響力と発言権強化に努めた。例えば人大国発院重陽チームは、G20シンクタンクサミット(T20)共同リーディングシンクタンク、「一帯一路」中国シンクタンク協力連盟常務理事、BRICsサミット中国理事会常務理事などに公式に認定され、首脳のG20サミット、「一帯一路」国際協力サミットフォーラム、BRICsサミット、APECサミット、ロシアの東方経済フォーラムなどの重要外交シーンへの出席やハイレベル訪問に積極的に協力し、要請に応じて主要オフィシャルメディアで評論を発表した。
 

第五に、中国の特色ある新型シンクタンク建設の経験の蓄積において重要な役割を発揮した。高等教育機関シンクタンクは一定程度の模索期間を経て、中国の特色ある新型シンクタンク建設をめぐる理論・モデル・制度・方法の確立並びに指導において、質の高いシンクタンク研究を支える理論体系および研究方法を確立し、成果評価、知的財産権保護、シンクタンク成果の実用化を含む効果的なシンクタンクサービス購入制度・システムなどの構築において、重要な段階的成果をあげた。例えば人大国発院は、長期にわたり中国の特色ある新型高等教育機関シンクタンク建設に関する理論研究、経験の総括、実践面での模索にしっかり取り組み、中国の特色ある新型高等教育機関シンクタンク建設に関する理論革新において重要な牽引役となり、「智力資本:中国シンクタンク核心競争力」「謀:中国シンクタンクの世界的影響力への道」などのシンクタンク理論書を出版し、「中国シンクタンク思想市場の育成と規制」「シンクタンク公共外交:概念、機能、メカニズムとモデル」といった一連のシンクタンク研究に関する内部参考情報や理論的文章を発表している。
 
中国の特色ある高等教育機関シンクタンク構築は一連の試練に直面している
 
成果を見る一方で、試練や問題についてもはっきりと認識しておかなければならない。党や国の需要および経済・社会発展のニーズと比べると、わが国の高等教育機関シンクタンクは依然として重要問題の研究能力、自己発展・改善能力、国内外での影響力、社会的知名度などの面で一定の不足がある。それは次のようなものである。
 
第一に、シンクタンク製品の思想力がなおも不足していることである。シンクタンクは本質的に言えば「思想のクラスター」であり、中国の特色ある新型高等教育機関シンクタンクの建設と発展のなかで、思想力は核心であり、イノベーション思想の活性化はキーポイントである。現在、高等教育機関シンクタンク製品の思想力はまだ不足しており、多くのシンクタンクの成果が表面的なものになっていて、中国の理論と中国の言葉を用いて中国の経験を総括し、中国の問題に答えることができておらず、シンクタンクの研究・意思決定コンサルティング・民意啓蒙機能を真に発揮できていない。多くのシンクタンクは対処療法的な研究を熱心に行い、国の重要な戦略的発展問題や中長期計画問題に関する研究が相対的に手薄で、シンクタンク自体の持続可能な発展を制約している。
 
第二に、シンクタンクのシーズ・ニーズ連携チャネルがスムーズではないことである。高等教育機関シンクタンクは本来、国の発展への貢献を目標に、政府の意思決定ニーズを正しく把握し、シンクタンク製品の供給と政府の意思決定ニーズを効果的に結びつけなければならない。しかし現在、一部の高等教育機関シンクタンクは党・政府機関との連絡を非正式ルートで行っているため、制度的保障がなく、一部の高等教育機関の研究者も、シンクタンクとしての意識が不十分なことから純粋に学術研究として取り組むことが習慣化しており、その結果、シンクタンクのシーズ・ニーズ連携はかなりの割合で党・政府機関がシンクタンクについてどれだけ知っているかに頼らざるを得ず、主観性と不確定性が存在することになり、政治への情報提供と意思決定ニーズの間で有効な「市場効果」が形成されにくくなり、シンクタンクの成果の実用化と意思決定コンサルティングレベルの向上にも影響が生じている。
 
第三に、高等教育機関シンクタンクの体制・仕組みの整備が待たれていることである。中国の特色ある新型シンクタンク建設のカギとなるのは体制・仕組みの革新であるが、難点もまた体制・仕組みの革新にある。現在、高等教育機関でのシンクタンク建設は、依然として学部の研究所や研究センターを主としており、資源分配、人員配置、運営管理、成果の帰属などの仕組みの革新が十分に行われていない。さらに、学科の壁・行政の壁が存在し、互いに閉鎖的になる、各々がバラバラに奮闘する、能力の分散といった現象が見られ、学科間の交流・協力および共同研究の仕組みは改善の余地があり、資源の調整能力が高くないことから、シンクタンクの現実社会の問題に関する研究成果が比較的単一的になり、問題を観察・思考する視野が狭く、短期で終了し成果がすぐに現れる研究が多くなり、大きな影響力をもつレベルの高い成果が相対的に少なくなっている。
 
第四に、シンクタンク人材陣の構築の強化が待たれていることである。質の高いシンクタンク人材陣の育成と構築は、中国の特色ある新型高等教育機関シンクタンク建設を進める基本中の基本である。現在、高等教育機関シンクタンクの人材システムの構築は完全なものとは言えず、様々なレベルのシンクタンク人材の好ましい移動、福利保障、キャリア発展などは伝統的制度の制約を受けていることから、シンクタンクの独特な意思決定コンサルティングニーズに応じることができ、学際的背景を持つシンクタンク型専門人材が相対的に不足しており、リーダーやハイレベル人材はさらに不足するという事態を招いている。一部の高等教育機関シンクタンクにはシニア・ミドル・ヤング人材の世代間断絶が見られ、各世代の割合がアンバランスになり、「双方向の回転ドア(参加・退出の自由)」の仕組みもまだ完全なものではなく、各々が創造性を十分に引き出す環境が整っているとは言えない。
 
中国の特色ある高等教育機関シンクタンクの今後の発展に向けての努力方向
 
新中国成立からの70年、特に改革開放から40年あまりの急速な発展を経て、中国は世界第2位の経済大国となり、ますます世界の中心的存在となりつつあるが、同時に一連の試練と挑戦に直面してもいる。日増しに複雑化している世界および国内情勢の下、中国の特色ある高等教育機関シンクタンク建設を強化し、高等教育機関シンクタンクの国の政策決定への貢献力および貢献レベルの向上を図ることは、より一層重要かつ切迫した任務である。それは次のようなものである。
 

第一に、マルクス主義を導きとすることを堅持し、正しい方向性を確保することである。中国の特色ある新型高等教育機関シンクタンク建設は、終始マルクス主義の指導的地位を堅持し、自覚的にマルクス主義の立場・観点・方法を理論研究および政策研究で貫き、党の基本理論・基本綱領・基本路線および重大原則・重要方針・重要政策などの問題に当たっては、立場と態度を揺ぎないものにし、観点を明確にし、自覚的に習近平同志を核心とする党中央と高度な一致を保つことが必要である。人民のための学問という理想を打ち立て、一貫して党と人民の立場に立った学問姿勢を堅持し、人民の主体的地位を尊重し、人民の実践・創造に焦点を当てて、自覚的に個人の学術的探求と国と民族の発展を密接に関連づけ、実践・人民・歴史による検証に耐えうる研究成果を一つでも多く上げるよう努めなければならない。一貫して国と地方の経済・社会発展に貢献することを自らの任務とし、中国の大地に根ざしたシンクタンク運営をし、「最も中国を理解している」世界一流の高等教育機関シンクタンク建設に尽力しなければならない。
 

第二に、国の重要戦略への奉仕を根本とすることを堅持し、研究レベルの向上を図ることである。中国の特色ある新型高等教育機関シンクタンクは、国の現実的ニーズを方向性とし、党と国の政策決定への奉仕を目的とし、政策研究コンサルティングを主な方向とし、小康社会の全面的完成、改革の全面的深化、全面的な法に基づく国家統治、全面的な厳しい党内統治という重大任務をしっかりと中心に据えて、党と国が直面している早急に回答・解決すべき一連の重要な理論問題や現実問題を深く研究し、国の経済・社会発展における全局的・戦略的・総合的な問題、並びに国内外で広く注目されているホットな問題、焦点となる問題、難しい問題について、先見性・的確性・備蓄性のある政策研究をピンポイントで行い、方向性が正しく、理論的にしっかりしている、実情と密接に結びついた、建設的で実行可能な対策・提案を打ち出し、党と政府の法に基づく科学的・民主的な政策決定能力の向上を知識面から力強くサポートしなければならない。
 

第三に、思想の対外発信と国際交流を媒体とすることを堅持し、国際的影響力の強化を図ることである。種々の形式のシンクタンク公共外交を展開することで中国の声を発し、「中国の理論」「中国の学術」「中国の思想」を用いて「中国の物語」をしっかりと語り、外国のオピニオンリーダーに影響を与え、さらに中国の平和的発展のために良好な国際世論環境を整えることである。対外発信に力を入れ、多様な形式・レベル・角度から中国の実践および理論における革新の成果を宣伝し、国際舞台で「中国の声」を発し、「中国の主張」を行い、「中国の理念」を解説し、国外のシンクタンクと平等で効率的な交流・協力の仕組みを打ち立て、中華の文化と価値観を世界に広め、国際社会における発言権を不断に強化していかなければならない。特徴となる概念を練り上げ、国際社会が理解しやすく受け入れやすい新たな概念・新たなカテゴリー・新たな表現をつくり出し、世界の学術界で研究および議論が行われるようにし、国の対外戦略によりよく奉仕し、国際競争戦略として採用されるため、自ら進んで貢献していかなければならない。
 

第四に、専門化・ハイレベルの道を歩むことを堅持し、専門の発展を強化することである。専門化およびハイレベルは高等教育機関シンクタンクの核心的競争力である。両者の関係は専門化が基礎にして前提であり、高等教育機関シンクタンクを他のシンクタンクと区別する特徴にして強みでもある。高等教育機関シンクタンクは明確な専門特性を備え、長期にわたってある特定分野の専門研究に従事し、自らの特色とブランドを形成する必要がある。シンクタンクの実情に基づき、国のニーズとしっかり結びつけ、専門性を発揮し、長期的で深みのある研究を堅持し、複雑な問題に独自の分析を加えなければならない。中国の特色ある新型高等教育機関シンクタンク建設の「ナショナルチーム」としての「国家ハイエンドシンクタンク」建設第1陣試験校に選ばれた高等教育機関は、専門性の強化により重点を置き、表面的な影響力や外部の評価に盲目的にとらわれることなく思想と理論の革新にしっかり取り組み、他のシンクタンクに対する「国家ハイエンドシンクタンク」のリード・モデルケース効果を十分に発揮し、高等教育機関シンクタンク建設の全体的レベルアップを牽引していかなければならない。
 
第五に、体制・仕組みの改革を原動力とすることを堅持し、人材保障制度を整備することである。シンクタンクは知識集約型の組織であり、人材は思想と理論の革新の主体であると同時に、高等教育機関シンクタンクの持続可能な発展を実現するための礎石であり生命力でもある。新型高等教育機関シンクタンク建設のカギは体制・仕組みの革新と創造力の喚起にある。改革のトップダウン設計をしっかり行い、改革の重点を際立たせ、人事管理、研究評価、資源配置などにおける総合改革をバランスよく推し進め、高等教育機関シンクタンクを、分散から集合へ、閉鎖から開放へ、個人戦から団体戦へと変えていかなければならない。質の高い政策提案が生まれやすい管理の仕組みと奨励の仕組みを確立し、シンクタンク人材のために適切な発展空間とプラットフォームをつくり出し、方向性が正しく、確かな実力をもち、才徳兼備で、能力が抜きん出たハイエンドシンクタンク人材陣を構築し、中国と西洋の学問に通じ、学際研究に長けた複合型人材を輩出し、マルクス主義の立場・観点・方法を活用して党と国が注目する重要な理論問題や現実問題を分析し解答を導き出せる政策専門家を育成しなければならない。
 

2019/11/27
 

中国教育新闻网: 中国特色新型高校智库的建设和发展

地域 アジア・オセアニア
中国
取組レベル 政府レベルでの取組
行政機関、組織の運営 政策・経営・行動計画・評価