【ニュース・ミャンマー】卓越したものを求めて-137年間、ミャンマーにおける一流の大学地位を維持してきたヤンゴン大学

ラングーンカレッジとして1878年に創立して以来、ヤンゴン大学はこれまで25万名以上の卒業生を輩出してきた。137年の歴史を持つミャンマー最古の大学は、ミャンマー全土の学生にとって理想の教育機関として君臨している。過去数十年に渡ってミャンマーを揺るがした大きな政治的事件においてヤンゴン大学が主要な役割を果たした結果、大学の学部教育は一旦閉鎖される結果となった。しかし翻って現在は、学部教育も再開され、ヤンゴン大学のかつての強みを取り戻し、東南アジア随一の大学としての地位に復帰するという極めて重要な目的を遂行しているところである。

ヤンゴン大学Aung Thu学長は以下のように述べた。
“現在大学は復興途中であり、機能向上のためにはハードソフト両面のインフラ整備が必要である。また教員と学生の質向上のために、ミャンマー政府や国外の大学からの支援を獲得するに至った。ヤンゴン大学の変革は斬新的でもよいので、とにかく前進しなければならない。ヤンゴン大学の法人化も期待されており、その時には私立大学と同様に自主的な経営が出来ていることになるだろう。”

Aung Thu学長は、教育セクターの改革を促進している目的は、ミャンマーが現在直面している経済開発と関わることを認めた。国の経済発展なくして優れた教育を行うことは不可能であり、どれだけ優秀な学生も良い職を見つけることは難しいだろう。実際に開発途上の国には、世界に通用する大学は無いのが現状である。

世界の研究者はヤンゴン大学が今後20年以内に東南アジア随一の大学になることを期待しているが、関係者の努力次第で10年以内に世界レベルになれるとThu学長は考えている。しかし当分の間はヤンゴン大学は大学の自治権を与えられておらず、インフラ面の問題で世界レベルの大学が実践している自主独立した運営を行うことは不可能である。

■インフラと協力体制
ヤンゴン大学は大学の機能向上と海外の大学との協力関係の構築を精力的に行っている。各学部は講義室や施設、高速インターネットの整備を必要としている。また外国からの訪問者のための食堂施設、学生向けカフェテリアの整備も進められている。

ミャンマーが開放されここ数十年で初めて外界に接した際、ソフトウェア面の向上についても実施された。オックスフォード大学、ケルン大学、オーストラリア国立大学、シンガポール国立大学、名古屋大学、早稲田大学といった26の大学と過去2年間に積極的に学術協定を締結した。学術交流協定は国際会議や共同研究の実施だけでなく教職員や学生の交流を伴うものであり、オックスフォード大学とオーストラリア国立大学の専門家はヤンゴン大学の復興と世界レベルの大学に発展するための分析を行い、研究論文を提出した。

協定大学以外にも、オーストラリア国際開発庁(AusAid)、米国国際開発庁(USAid)、韓国国際協力機構といった機関がヤンゴン大学を支援している。これらの支援により、ヤンゴン大学の学生は協定校の施設を利用することや、短期長期の留学のための奨学金を準備することが可能となった。こういった国際的な支援はヤンゴン大学の運営自治を実現させ、大学の質向上に繋がるだろう。

■大学自治の確立
Aung Thu学長は大学の学術、経営、財政の自由を求めており、学問の自由と大学の自治を認める法律の施行を強く主張している。しかしながら当分の間、ミャンマーの全ての大学に自治が与えられるべきではないと考えている。現在ミャンマーは過渡期にあり、全ての大学を変革することは、いかにミャンマーの将来性が豊かであるとはいえ、現状の経済状況では不可能である。しかし、ミャンマーで最も歴史のあり、かつ名の知れたヤンゴン大学は自治権を得るに値する。世界レベルの大学になるためには、これまでの教育省直下の官僚組織から、大学の自治を確立することが重要である。

財政の自由は有能な教員の招へいを容易にする。現在は教員の人材不足により、教育省が幹部職員を大学に各大学に派遣しており、その場合はいくつかの大学を兼任することになる。教員の中央集権化が進めば、ヤンゴン大学は自分たちが望むような水準に到達することが不可能となるだろう。そのためには民主的な競争原理の導入が必要となる。世界レベルの大学となるためには、教員と卒業生が優れていなければならない。

ヤンゴン大学も将来的には自由競争による教員採用が導入され、全国から能力のある教員の採用と優れた能力の開発が行えるようにしなければならない。年齢によらない競争による実力主義を導入して、年功序列によらない昇進制度を導入することが必要となる。

■課程
ヤンゴン大学は文系12学部、理系8学部あわせて4,776名の学生が在籍している。1996年の学生抗争により学部教育が閉鎖されたが、2014年に再開し、1,218名の学生が入学した。ミャンマーの学生はヤンゴン大学を知の中心として、ヤンゴン大学の学部課程に入学するためには高校卒業時試験で600点満点中400点以上取らなければならない。

495点以上を獲得し、特に英語で優秀な成績を収めた者については、英語専攻に申請することが出来る。また国際関係専攻が、ヤンゴン大学で最も人気があるコースである。人気のある大学は優秀な学生を集めやすく、英語や法律専攻の学生は就職率も高いとのことである。21ある学部コースの専攻では、各学年50名のみ受け入れている。ヤンゴン大学は以前はミャンマー下部地域の学生のみが受験できたが、近年では北部のマンダレー地区の優秀な学生も受験できるようになった。またヤンゴン大学は試験の点数以外にも、他の地域での優秀な学生に対しても門戸を開放している。多くのミャンマーの学生が6月6日に発表される高校卒業時の試験結果発表を心待ちにしており、国内の一流大学に入学することを望んでいる。

(2015年6月2日 The Nation紙HP)

地域 アジア・オセアニア
タイ、その他の国・地域
取組レベル 政府レベルでの取組、大学等研究機関レベルでの取組
行政機関、組織の運営 組織・ガバナンス・人事
大学・研究機関の基本的役割 質の保証、教育
人材育成 入試・学生募集、教員の養成・確保