【ニュース・フランス】2015年フランス国立情報科学研究所(INRIA)賞受賞者を発表

現代社会における情報技術やさまざまなイノベーションの展開、あるいは研究所の発展への顕著な貢献に対した6件の2015年フランス国立情報科学研究所(INRIA)賞が、10月6日にパリで開催される映像フォーラムの機会に発表される。
・INRIAグラン・プリ – 科学アカデミー:ブノワ・ペルタム
パリ・ピエール・マリー・キュリー大学教授、ジャン=ジャック・リヨンス研究室主宰、INRIA Mambaプロジェクトリーダー。若くしてフランス国立科学研究センター(CNRS)銀メダルを受賞し、また、30歳以下の純粋・応用数学者に与えられるコレージュ・ド・フランスのPeccot賞受賞、最近ではヨーロッパ科学アカデミーのブレーズ・パスカル賞を受賞している。同氏は微分方程式の分野、特に運動方程式に関して、現代理論の始祖のひとりとして世界的に知られた専門家である。
これまで物理数学分野での古典的な運動方程式に興味をもってきたが、ここ数年は多数の生物モデルについて、その応用を拡げ、数値解析を進めた。理論から応用まで、根本的な成果を発見するとともに、生物学者、医師との緊密な共同研究によって、数々の興味ある成果を挙げている。
・INRIA賞-若手研究者の科学アカデミー:ヴェロニク・コルチェ
CASSIS研究チーム(CNRS、ロレーヌ大学との共同チーム)のCNRS主任研究員であるヴェロニク・コルチェは戦略研究分野、社会への影響に関する研究分野の優れた研究者である。彼女の研究分野は、コンピュータプログラムの自動検査、とくにセキュリティ・プロトコルの解析である。数々の研究のうち、電子投票に関するものは特筆すべきものであり、投票プラットフォームの基本原理から実施に至るまで開発しており、数社の企業がその実現に当たった。この研究において、彼女は投票の秘匿性と投票結果の透明性を確たるものにした。すでに国際的にも評価が高く、これまでにも2つの論文賞(SpecifとLe Monde)、そしてヨーロッパ・リサーチ・カウンシルの萌芽賞を受賞している。2010年、32歳で主任研究員に抜擢され、その長足の昇進はこれまでのINS2I(59の研究室が集まった情報科学とその相互作用研究所)での記録を作った。彼女は200人の研究員を要するGDR情報科学-数学チームの検証部門の責任者でもある。
・INRIAイノベーション賞-科学アカデミー-ダッソー・システムズ:マルク・ラヴィーユ
ラヴィーユはINRIAの主任研究員で、新しい方法論の開発、とりわけ健康科学分野で活動する統計学者である。その理論の適用分野がなんであれ、理論の正当性の検証、ユーザとの共同作業、そして実用的なツールとなるようソフトウエアの実装に注意を払っている。
これまでソフトウエアMonolixにおける方法論を展開して、いくつかの製薬会社(Novartis Roche、Sanofi、AstraZeneca、Johnson & Jonson)と共同してプログラムの開発に当たった。このプログラムによって医薬品の薬力学、ウイルスの動力学、そして治療効果のような複雑な現象を研究するためのモデル化とシミュレーションを可能とした。Monolixの開発を推し進め、ソフトウエアの品質を保証し、製品化をすすめるため、INRIAのスピン・オフとしてLixoft社が2011年6月に誕生した。同氏は常に技術移転を行うことで、その科学研究結果を反映させ、その研究チームPopixの研究を高めている。
2011年以来、マルク・ラヴィーユは複合領域ヨーロッパ研究プロジェクトDDMoRe(Drug and Desease Modeling)に加わっており、官民共同研究チームにおける、疾病と医薬品のモデル化、すなわち臨床シミュレータ、投薬の最適化ツールなどを開発するため、新しいツール開発の指揮を執っている。彼はまたバイオテクノロジー高等評議会(HCB)にも参加し、世界保健機構が関係するリスク評価に関連した実用統計学の開発にも寄与している。
・研究・イノベーション支援INRIA賞:HAL-INRIA計画チーム
HAL-INRIAアーカイブ計画の中で、情報科学・科学文献編集、そして情報システム分野で活動した11人の専門家、共同研究者の成果に対して、賞が贈られる。
この計画はここ10年近くにわたり、CNRSとの共同ユニットのひとつである科学ダイレクト・コミュニケーション・センター(CCSD)、そして、2014年からはリヨン大学も含めて進めてきたINRIAにおける研究成果を世界的に知らしめることになった。これにあたり、CNRSとINRIAの両者は大きな投資を行った。
フリーアクセスのポータルサイトとしてHALは世界で7番目にランクされ、HAL-INRIAは研究機関のポータルの中では8番目に位置する。この優れたプラットフォームの証として、IFIP(情報処理国際連合)はINRIAが取り扱っている研究分野のカンファレンスのプロシーディングを収納するサイトしてHALを選んだ。

URL1: http://www.inria.fr/actualite/actualites-inria/laureats-des-prix-inria-2015
URL2: http://www.inria.fr/centre/saclay/actualites/prix-inria-2015-deux-laureats-au-centre-de-saclay-ile-de-france

地域 西欧
フランス
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 研究
顕彰 顕彰