【ニュース・フランス】科学、文化、信仰:どのように話せばいいか?:人類博物館で開かれたAMCSTI協会でのThierry Mandon氏の講演

2016年3月17日、人類博物館において科学・技術・産業文化振興のための博物館協会が主催した催しでThierry Mandon氏は標記の講演を行った。
今日、われわれが大きな関心をもっているのは、科学、文化、信仰をどのように話すかである。
私は、ここ人類博物館で、理想とは科学や文化で表現されると言いたい。6ヶ月前、人類博物館が改修後、再開したとき、共和国大統領はこの博物館こそが人類は一体であり、かつ、多様性をもつことを示す場所であると述べた。
科学的な言葉は常にわれわれを魅了するが、また、今日では、ますます頻繁に、疑い、不信感、そして敵意にも出くわすようになった。つまり、われわれは科学の共有が妨げられた時期に生きている。
宗教的な独断により、妨げられ、知識軽蔑により妨げられ、相対主義の狡猾な台頭によっても妨げられる。それはあらゆる視点を同じ面に向けさせ、真実が科学的結果であることすら、否定しようとする。しかし、科学は共和国の財産のひとつであるだけでなく、共和国の世俗性と双子の姉妹でもあり、科学は世俗性の条件のひとつもまた備えている。科学的なプロジェクトは男も女も自由であることを前提としているので、そのプロジェクトはまた、男女を拘束のない自由な状態にしていることから、共和国の考え、そのものは科学を拠り所としており、その逆もまた真である。
共和国のプランの中央に位置し、科学は主要な保護対象のひとつである。1890年、ジャン・ジョレスは地方の大学についてこう書いている。「人々は、たとえ直接関係していないにしても、科学の価値を感じている。したがって、心の底では、自分たちもその恩恵に浴していると感じている。科学は、たとえ、もっとも関係が薄いものですら、すべての人々のものである。科学は善意の応用によってすべての人々に有用となる。科学は国に栄光をもたらし、共通の財産である。科学は、すべての知識人を感動させることができるほどに明瞭性と豊かさの概念を少しずつもたらす。
すでに多くの人たちが証明してきたように、科学は科学的な結果に信仰とは無関係な真実の状況を与えるルールの枠組みを確立する。これこそが、われわれの生活空間であり、共通の文化である。
しかし、今日、いくつもの危険が科学の自由と科学がもたらす進歩を脅かしている。私は3つのアクションを起こした。
第1に、研究の自由を確保し、向上させる。これが研究省の最初のミッションである。現在、フランスは「デジタル共和国」をめざすという法案が下院で可決され、現在、上院で審議中であるが、これは科学研究結果の自由な流通を促進するもので、研究者は誰でも容易にデータにアクセスできるようにしなければならない。ネットの巨人だけが、潜在的な価値をもつビッグデータにアクセスでき、データマイニングができるということがあってはならない。
第2に研究成果には市民の誰もがアクセスできることである。研究成果は、迅速にあまねく知らされなければならない。まだプロの研究者ではない若手研究者が科学研究プログラムに参加して、その進歩に貢献できるようにしなければならない。フランス国立農学研究所(Institut national de la recherche agronomique:INRA)理事長François Houllier氏は、このことに関係の深い提案を策定する参加型科学に関する報告書を最近提出した。この参加型科学が科学的に有効であるように条件を整えて、できるだけ多くの市民、そして子供たちを科学プロジェクトに参加させることが目的である。このようにして、研究者と市民との距離を縮め、多くの市民が科学を実践することを奨励するという、素晴らしいやり方と思う。科学・技術・産業文化推進博物館・センター協会(AMCSTI)などを支援することで、科学的なアプローチにより容易にアクセスできるようになると考えている。したがって、われわれの社会において、科学が十分その役割を果たせるようにし、市民の間で、科学が中央に位置するようにすることが重要である。研究の文化はまた、国全体に広める必要がある。そのためには、公的機関の重要なポストにドクターの学位をもつ研究者を登用することが望ましい。先のAlliance Athena報告書に同グループ代表、並びにCNRSの理事長であるAlain Fuchsが述べているように、これら若手研究者は研究畑と行政畑の間で「研究の渡し役」を果たしてくれるだろう。
科学技術高等研究所(Institut des Hautes Études pour la Science et la Technologie)は、公的・民間分野の管理職、そして意思決定者に対して、研究の文化を広めてくれるだろう。
第3は、基本的なことであるが、実践的で、科学に明るい教員を養成しなければならない。それには教員養成大学校(ESPE : Ecole Supérieure de Professorat et de l’Éducation;教職に関する職業マスター・ディプロマレベルを養成する学校)、あるいは「科学の家」が、科学的知見に疑問を抱く生徒に教員はどのように接すればいいか、解決策を与えてくれるだろう。
科学を育み、市民に寄り添う科学の精神をもつようにすることが、科学の祭典を準備するにあたり、われわれが準備した新しいやり方であった。

 

2016年3月17日

 

Enseignement supérieur et Recherche:Science, culture, croyance : comment en parler ? : Intervention de Thierry Mandon devant l’AMCSTI au Musée de l’Homme

地域 西欧
フランス
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