【ニュース・フランス】知られざる留学先、日本

現在、日本を留学先として旅立つのは、毎年、わずか1,000人程度であるが、高等教育省はこの状況を打破しようとしている。
マンガを通して日本文化に親しんでいる若者が増えている。しかし、日本は文学や映画以外の面でも、国際的な規模で大学に若者を引きつけている。たとえば、技術イノベーションを直に見るには日本は最適な場所である。コンピュータ、ホームオートメーション市場の真の実験場として、また、日本は公共事業や高齢者介護の点でも見るべきものがある、とレンヌにある日仏マネジメントセンターの責任者であるKarine Picot-Coupeyは語っている。しかし、この躍動性にもかかわらず、日本で学ぼうというフランス人は稀である。1992年に当時の対外貿易省(Ministère du commerce extérieur)のイニシアティブで創設された日仏マネジメントセンターのマスターコースは当初10年間は希望者が殺到した。ついで、2000年代には韓国との競争が激しくなってきたとKarine Picot-Coupeyは語る。フランスの国レベルで見ると、日本に向かった若者の数は、日本学生支援機構の調査によれば、今世紀初め195人であったものが2012年には740人に達している。
フランス国民教育・高等教育・研究省(MENESR)はこの数を増やすべく、すでにアクションを起こしている。フランスの大学・技師学校と日本の大学間で学位の相互認証協定が2014年5月5日に調印された。この協定によって、日仏間のダブル・ディグリーのような2つのカリキュラムを組み合わせて行うことがずっと容易になった。確かに、日本の教育機関との連携に教育行政面からのブレーキがかかるようなことは大学は望んでいない。日仏間の交流という点では、このような動きは、教育面よりも研究面でずっと進んでいる、とフランス大学協議会の国際問題責任者であるJacques Combyは語っている。
日本でのカルチャーショックを乗り越えて、日本での滞在を有意義なものにするためには、もっと事前にケアをする必要がある。ビジネスの世界では共通言語である英語で授業をする豊富なメニューを提供する大学もあることはあるが、その数はフランスで想像するほど多くはない、とKarine Picot-Coupeyは付け加える。日常生活をうまくやっていくには日本語の一定レベルに達していることが必要であり、そのためには、日本に出発する前の1年間は、集中的、かつ個人に特化した日本語教育を行う必要がある。日本に着いてからは、卒業生のネットワークが新人にコンタクトして研修を始めやすくなるよう手助けしてくれる。
高等教育機関に学ぶ日本の多くの若者は、学費を稼ぐためにアルバイトをするが、フランスでいう「研修(stage)」は日本ではそれほど一般的ではない。「日本では、研修生は企業を巡り、商品説明などの手伝いはする。しかし、長期にわたる仕事を行うわけではない」とレンヌ第1大学経営学院日仏経営センターコース(CFJM)の2013年卒業のHoël Goisbaultは語る。彼は卒業後、医薬品関係のフランス企業で国際ボランティア(Volontaire International)として働き、現在では正社員(CDI:Contrat à Durée Indéterminée)になっている。

・ 日本での研究を可能にするフェローシップ
1年から3年間、研究留学資金を得て、日本で研究するということが日本学術振興会(JSPS)によって可能となる。東京に本部をもつこの機関は、フランスではストラスブール大学の一機関である日仏大学会館内に事務所をもっている。
過去6年以内に博士学位を取得した者、あるいは学位論文を準備中の者に対して、1年から2年間、日本で研究できるよう、毎年、15人に対してポスドク・フェローシップを提供している。さらにサマープログラムと呼ばれる、日本文化に親しみ、研究への第一歩を踏み出すため、夏の2ヶ月を日本で過ごすというプログラムが13人分用意されており、これには研究分野のマスター2年以上の若者が応募できる。JSPSは、この他にも、上級研究者向けのさまざまな種類の研究留学資金を提供している。

・ アカデミック・エクセレンス
フランス国立科学研究センター(CNRS)はフランスの応募者の窓口になっており、JSPSフランスとともに選考を行っている。選考にあたっては、フランスの優れた機関、あるいは秀でた分野で研究をしていることは考慮される。応募にあたっては、まず、日本の受入研究室を探す必要があり、すでに日本との関係を築いている研究室を主宰している教授や研究同僚の手を経ることも多々あると、CNRS 国際プログラム担当で、JSPSフェローシップの担当でもあるGulnara Le Torrivellec は強調している。「自然科学の研究者がこれまで多くを占めてきました。しかし、これからは社会科学や人文学の研究者にも応募してほしい」と宮本博幸所長は述べている。この研究留学資金はフランス-日本間の往復旅費、月々の生活費(最大362,000 円/月、おおよそ2,600 ユーロ/月)、そして到着時、生活を始めるための初期手当が支給される。

Le Monde紙 高等教育別紙「アジアに学ぶ」特集号”Le Japon, une destination méconnue(※)”(2015年5月28日)

地域 西欧、アジア・オセアニア
フランス、その他の国・地域
取組レベル 政府レベルでの取組、大学等研究機関レベルでの取組
国際交流 国際化、学生交流、研究者交流