【ニュース・フランス】新型コロナウイルス感染症と環境:Insermが取りまとめるヨーロッパ計画の提言

 
 2019年に開始した、国立衛生医学研究所(Institut nationale de la santé et la recherche médicale:Inserm)とバルセロナの研究機関が
進めるヨーロッパの健康・環境研究プログラム(Health Environment Research Agenda for Europe:HERA)は、ヨーロッパ委員会の2020年‐
2030年計画における「環境,気候,健康」のテーマに沿って実施するものである。

 
 このプログラム関係者は、新型コロナウイルス感染症による緊急事態に対し、環境、人類の健康、現在の感染症関連の研究に対して
新たな提言に取り組んでいる。

 
 感染症学と環境という一見離れた分野が緊密に関係しており、統合的な視野を持って判断することは、健康対策における決定要因として、
必要かつ有効であると提言している。

 
 新型コロナウイルス感染症という、かつてない状況において、健康に関する対策が議論の中心となっている。この感染症の社会への影響を理解し、
公共政策の実施に導くことが出来るのは、研究における科学的知見にほかならない。

 
 ヨーロッパプログラム「HERA」は、2019年1月にInsermによって開始されたヨーロッパプログラムであり、ヨーロッパの15ヶ国が参加している。
このプログラムは、ヨーロッパ委員会が主導しており、その2020年‐2030年計画の「環境,気候,健康」のテーマに沿って研究計画を作成し、
ヨーロッパの国々をまとめ、研究の必要性と優先事項を明らかにし、その方針を明示する。

 
 事前の研究計画は、2020年2月に発表されている。新型コロナウイルス感染症の発生後ヨーロッパ委員会は、伝染病と気候変動と健康の関係について
調査するため、研究計画にこの感染症の研究を追加することを求めた。

 
 2020年5月の最初の報告書によると、「HERA」プログラム関係者は、3つの主要な研究の柱を定めた。それは環境、発生、拡散であり、
新型コロナウイルスの影響との関係についての知見を深め、健康と環境に配慮し、感染症の状況に合わせた公共政策や予防策の実施における
有益な提言をすることを目的としている。

 
 新型コロナウイルスの発生をより深く理解するということは、ウイルスの生体サイクル、人間や動物(野生、家畜、ペット)との相互関係
(特にウイルスの発生や森林破壊という人類の活動、生物多様性、動物の行動)が、どの様に影響しているかを理解するということである。

 
 研究者は同時に、ウイルスの気候変動への耐性、季節性に関する研究を進めている。ウイルスがどのように拡散するのかをよく理解し、
幾つかの項目に関する耐性を特定することは、ウイルスの感染の仕組みを深く理解することに役立であろう。

 
 これらの研究は、同時に全体像の把握を確実かつ革新的に実施しなければならない。研究者はヨーロッパレベルにおいて、危険性が高い
住民の特定をするため、人、ツール、手段の調和が重要であるとしている。

 
 ヨーロッパの大きなクラスターから、より正確で信頼性の高い方法で、感染症、それに対する反応、環境的側面から分かった病理性を分析する。
クラスターの増加により、新型コロナウイルスによって深刻な病状を引き起こした患者に対し、慢性疾患(特に循環器と肺の疾患)との合併症に
ついての分析を行うことが出来るだろう。

 
 「慢性疾患により新型コロナウイルス感染症が重症化すること、つまり少なくとも環境的要因によって変化が生じることについて調査していく」と、
Insermのプロジェクト責任者であるRobert Barouki氏は発言している。

 
 さらに、「免疫や循環器系の仕組みにおける環境的要因と感染症の影響については、特に関係するだろう。」とも述べている。これらのデータは、
国ごとの感染症に対する様々な健康や環境の予防政策の有効性を理解するため、大変貴重なものである。

 
 感染症の様々な対応戦略への心理的・社会経済学的効果を評価することは、ヨーロッパ・国・個人レベルで、どの様にウイルスを抑え込み、
回復するかを理解するために必要不可欠なことである。ロックダウンやソーシャルディスタンスをとるといった、人と人との感染を防ぐための措置に
対する社会的影響(日常生活の変化、都市環境の役割、労働環境の見直し、健康への肉体的・精神的影響、家庭内暴力の増加、社会的弱者等)を
理解することは、新たな公共政策の実施を理解することにつながる。

 
 ヨーロッパ委員会は、ヨーロッパの様々な集団における新型コロナウイルス感染症の研究を支援するためのプロジェクトの公募を開始している。
他のプロジェクトの公募も実施される予定である。「この感染症および環境や健康についての研究を進めることは、我々が今直面している危機に対して
だけでなく、将来おこりうる可能性のある危機(特に気候変動と連関するもの)を予期して、対処するために大変重要なことである。

 
 人類と地球の健康を考えるという統合的なビジョンであるエクスポソームという考え方と同様に」とRobert Barouki氏は発言している。「HERA」
プログラムの研究者は近日中に、この感染症の発生、進行と環境・気候変動との関係を明確にするための長期的な計画の提案を行う予定である。
 
6月5日
 


Inserm: Covid-19 et environnement : les recommandations d’un programme européen coordonné par l’Inserm

地域 西欧
フランス
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 研究
社会との交流、産学官連携 地域連携