【ニュース・フランス】化学肥料の代替品、ヨーロッパの24研究機関が大規模な指針作成検討

 
 他のヨーロッパ諸国と同様に、フランスでアグロエコロジー(生態系を維持する農業)への移行に研究成果を活用することは、諸官公庁、専門家、社会の強い要望である。

 
 この大きな挑戦に対し、研究の実施方法について再考し、研究や実験の共通戦略を国レベルではなく、ヨーロッパ規模で作成することは「無農薬農業」意志宣言の目標である。

 
 この宣言は、ヨーロッパの16の国々、24研究機関によって採択された。国立農業・食料・環境研究所(Institut national de recherche pour l’agriculture, l’alimentation et l’environnement:INRAE)とその対応機関であるドイツのライプニッツ農業景観研究センター(Leibniz-Zentrum für Agrarlandschaftsforschung:ZALF)とユリウス・クーン研究所(Julius Kühn-Institut:JKI)の影響を受けた前例のないこの取り組みによって、無農薬農業という共通ビジョンを持つ全ての機関を含む科学研究コミュニティが始動する。

 
 2月23日の国際農業会議において、農業研究を所管するフランスの省庁の支援を受け、Amélie de Montchalinヨーロッパ・外務大臣付ヨーロッパ問題担当副大臣の出席の下、この公式宣言が発表された。これはヨーロッパ研究協定の指針となり、ヨーロッパグリーンディール(欧州委員会が2019年12月11日に発表した気候変動対策)に貢献するため、近々ヨーロッパ委員会においても発表される予定である。

 
 約18か月前からINRAEとドイツのZALFとJKIは、ヨーロッパ規模の研究者同士の議論を、関係機関にまで拡張した。そこには、様々な人々が関与する新たな学際的な研究戦略を定義することによって、ヨーロッパ中で化学肥料を使わない農業への移行のための解決策がもたらされるという壮大な目標がある。

 
 そして今日、24のヨーロッパの研究機関が、この大規模なビジョンの意志宣言に署名した。この取り組みは、2019年12月にヨーロッパ委員会が発表したヨーロッパグリーンディールに呼応するかたちで行われた。

 
 これにより、野心的な政策を奨励し、持続可能な環境への移行にヨーロッパ規模で取り組むことが出来るようになる。この政策は、農業・食料・環境等、複数の機関に関係するものである。特に、持続可能な農業政策に基づき、実現可能な農業生産物の生産と流通を担保し、安全な食料生産の発展を目指している。

 
 この24研究機関は、ネットワークを形成しつつ、既に次のような複数の共同研究を計画している。

  1. アグロエコロジーを活用し、病気に強い生産システムを構築し、生育可能な野菜の種類を増やすこと
  2. デジタルテクノロジーや新たな技術・農業設備を開発すること
  3. 社会経済の移行に関しての理解を深めること

 
 その準備段階の1つの指針として、研究方法に関する問題点を取り上げ、体系的で学際的なアプローチを可能にし、この新たな方法論によって、実際の研究所で得られた知見と実験結果の結びつきを強化させることができる。

 
 農業分野と連携し、開かれた手法によるあらゆる分野の研究を進め、その成果を共有することで、環境の変化に適応した大規模な代替手段が生み出されることが期待される。
 
2月23日
 


INRAe: 
Alternatives aux pesticides chimiques : 24 organismes de recherche européens s’engagent sur une feuille de route ambitieuse 2019

地域 西欧
フランス
取組レベル 国際機関レベルの取組
大学・研究機関の基本的役割 研究
社会との交流、産学官連携 社会貢献