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公的研究とイノベーション:新しい段階に入るフランスのイノベーション政策
ここ数年来、政府はイノベーションの新国家戦略のアウトラインを描いてきた。Emmanuel Macron経済・産業・デジタル大臣とThierry Mandon高等教育・研究担当大臣は、大学と公的研究が担う基本的な役割を再確認した。公的研究と企業を結びつける要となる大学はフランスのイノベーション政策において中心に位置しなければならない。これはイノベーション政策に関する最近の3つのレポートに共通な結論のひとつである。すなわち、「最近15年間のフランス・イノベーション政策に関する報告書」(Jean Pisani-Ferry監修)、さらに詳しくは、「フランスのイノベーションエコシステムと大学-企業の関係」(Suzanne Berger著)、「未来への投資プログラムの中間報告」(Philippe Maystadt監修)の3つの報告書である。
両大臣が再確認したように、公的研究は卓越した研究者、高度な設備、そして開発する技術によってフランス経済に好機をもたらしている。コンセンサスとそこから生まれる方策が形成され、イノベーションに関わるすべてのアクターによって共有されるべきものである。

 

大学が中心となるイノベーション政策を進める
研究と企業の関係を改善するため、この15年間にわたり数々の施策がとられてきた。研究室からの技術移転を促進、研究者の専門的アドバイスを企業にもたらす、人材交流、企業の要望をかなえ、その見返りを増やすなど。両大臣はイノベーションの総合的政策について、研究室と企業の関係を簡素化する、これらの間を結ぶアクターに責任をとらせることを発表した。

 

企業が研究に容易にアクセスできるようにする
公的研究機関と企業が結ぶ契約手続きを簡素化する。工業所有権・特許に関する契約においては企業は唯一の仲介者を交渉相手とし、特許から得られる利益の分配形式は標準化される。これによってパートナー間で署名するにあたって調整に必要となる時間は大幅に短縮され、中小企業が研究機関にアクセスするのが容易になる。

 

イノベーションの公的アクターがとるべき責任と仕事の簡素化
研究機関と企業とを結びつけるにあたっては、いくつかの機関が重要な役割を果たしている。今回、両大臣は投資委員会の合意も得て、これらの機関の仕事を簡素化し、さらに効率的にするための施策を講じた。
14の技術移転促進会社(SATT)は多くは大学、研究機関が所有する会社であるが、これらの会社は研究室で発明が生まれ、その権利委譲を行うときに資金援助を行い、大学と企業との関係強化が進むことを狙って技術評価のための給付金を出す。
技術移転促進会社の野心的な計画では、しばしば初期の目標達成が遅れることがあるが、これを緩やかに扱う方法である。Louis Schweitzer投資委員会委員長が指摘しているように、SATTの収支バランスがとれていることは重要ではあるが、成果を性急に求めるばかりでなく、ケース・バイ・ケースで判断し、その後の発展が見込める場合は、最長10年の猶予を設ける。そのためには、SATTは短中期計画の案件中、成果が出やすいものと組み合わせることで、より長期にわたり支援が必要な案件をも支援することができる。
さらに、これらの企業が最終的には地域のアクターの完全な所有となることをこの施策はめざしている。つまり、よりよい成果をあげるSATT、したがって、最初の3年間でプラスの成果をあげれば、国による監督は緩やかになり、国はこのような場合には、成熟したと判断して、学術界代表者や地域アクターの自律責任を高めるために、理事会における拒否権の発動を放棄する。そのようなSATTにあっては、新しいガバナンスとして、これまで株主である国の代表に代わり、有識者を迎え入れることができる。こうして理事会の専門化が進むことにつながる。
技術研究所(IRT)については、実用化に向けた研究課題に、公的・民間資金をあわせて投入し、境界領域、あるいはテーマを絞った産業利用を促進し、また、民間アクター向けのサービスを開発するための研究を行っている。目的は、公的研究との緊密な協力体制を作り出すことにある。
最後に未来への投資プログラム(PIA)は2016年以来、Carnotスプリング・ボード(有望ではあるが、Carnotラベル付けをするにはまだ、機が熟していない研究室)に4,500万ユーロの資金援助を行っている。

 

継続した成長をめざすための試行
この機会に、両大臣は公的研究の価値を高めるための新しい施策を試行することを発表した。これも、国内のアクター、とりわけ大学を支援することによってフランス・イノベーションのエクセレンスを強化することにある。アクター間の関係を深め、企業化の第一段階を簡素化し、経済的に優れたパフォーマンスであることを証明する。3つの計画が進行中で、パリ・Université Pierre et Marie Curie(UPMC)、パリ・Université Paris Science et Lettre(PSL)、Comue Normandie Universitésである。

 

国の役割に関する新しい考え方
野望に手段を与え、アクターがとるべき責任の範囲を拡げ、現場に寄り添って、相互協力を強化する。これがイノベーションにおける国の役割としての新しいビジョンを形成するための一連の手段におけるキーワードである。

 

2016年6月8日

 

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