【ニュース・フランス】仏独大学:知られざる教育・研究ネットワーク

毎年、ドイツとフランスの6,500人の学生が国境をまたいだ授業プログラムを履修している。仏独大学のメンバーとなっている大学は幅広い選択肢をもつカリキュラムを提供し、ダブルディグリーを授与している。

 

仏独2つの課程に学んだ学生を企業は評価する
フランスとドイツの間で、仏独協力の進展を見ることができる分野のひとつ、それが高等教育である。その起源は基本的には、1997年にワイマール協定によって創設された仏独大学(UFA)に求めることができる。
このネットワークは今日177のコースを提供しており、独仏双方から少なくともひとつの大学、グランゼコール、応用科学大学(Fachhochschule、フランスではIUT:技術短期大学に相当)が関与しており、多くの場合、学士、修士、博士の各レベルで行われている。経済・経営学、人文社会科学、法学、そして理工学という4つの分野で交流が行われている。毎年、約6,500人の学生が仏独混成クラスで、2カ国語による授業を履修しており、ときには第3国での履修もある。いずれも、ダブルディグリーが与えられるコースである。
「これらの課程では単なる交換留学以上のものが求められる」とパリ第1-パンテオン-ソルボンヌ大学教授で、この大学ネットワークの副学長であるDavid Capitantは述べる。われわれの学生はフランスで、そしてドイツで交互に勉学を行う。法学、数学、物理学といったいくつかの分野では、仏独大学のディプロマは就職市場において卒業生に、ダイレクトに付加価値を与えている。なぜならば、彼らは従来のカリキュラムで勉学した学生に比べ、さらなる専門知識を獲得しているからである。インターカルチャーというのはまたリクルータからも高く評価されている。
仏独大学は共同指導博士論文やサマースクールを経済的に支援している。また、毎年秋には、ストラスブールで仏独フォーラムを開催している。これはまた、高校生や大学生に対して、仏独大学が提供しているさまざまなカリキュラムについて説明をし、仏独2ヶ国で学ぶ意義や就職情報を提供する機会となっている。
特定分野で仏独2つの課程で勉学することにより、2つの文化に精通し、一般にトリリンガル(フランス語、ドイツ語、そして英語)であるという学生プロフィールを企業は非常に高く評価している。ミシュラン(タイヤ製造業)、BNP Paribas(金融)など数社がこれらのプログラム実施にあたり資金援助を行い、また学生には奨学金を支給している。
仏独大学に登録する学生数はますます増加している。ここ数年の履修学生の増加に応えて、仏独両政府は最近、この大学ネットワークに対して、それぞれ100万ユーロを追加支給することを決定したため、現在では年間1,360万ユーロを支給することとなった。
もし、絶対的な平等というのが両国間のルールだとすれば、卒業時の就職についてみると、不均衡であるといわざるをえない。2014年、ライン川の向こう岸(ドイツ)では卒業生の57%がすぐに就職しているのに対して、フランスではわずかに26%しか、卒業後すぐに就職していない。経済活動が活発であるため、仏独大学の卒業生にとってドイツの方が魅力的であるということになる。「しかし、この事態は、経済状況によっては逆転するだろう。」とDavid Capitantは述べている。
エクス-アン-プロヴァンス大学とフライブルグ大学が共同で設けている政治学院ダブルディグリーコースを2012年に卒業したChloé Saby(27歳)はまず、ドイツで働き、その後パリにあるBuyInというDeutsche TelekomとOrange(ともに電話会社)が共同で設立した会社で働いている。「履修した課程のおかげで、私は仏独で、さらにはヨーロッパ全体で活躍したいと思うようになった。多文化混成チームの中で日々生活し、仕事をこなしている。」と述べている。

 

最初のヨーロッパ・キャンパス誕生
ストラスブール大学(フランス)、オート・アルザス大学(フランスのMulhouseとColmarにある)、バーゼル大学(スイス)、フライブルグ大学(ドイツ)、そしてカールスルーエ工科大学(ドイツ)から構成されるEucorというヨーロッパ・キャンパスが2016年5月11日にスタートした。Eucor(Confédération européenne des universités du Rhin supérieur)の起こりは1989年に国境を接する3ヶ国の大学間で結ばれた協力協定である。2015年12月以来、領土間協力ヨーロッパグループ(GECT)として活動を行っているが、大学間協力としては最初のものである。法的な規定によれば、これらの高等教育機関はそれぞれの独立性を保ちながら、共同でリクルートのために協調行動を行うことができる。Eucorは研究・教育分野で共通のストラテジーを進め、学術の横断的な構造を構築することをめざしている。最初のクラスター(研究室グループ)は持続可能な開発に関するものである。学生数115,000人、研究者11,000人、総年間予算23億ユーロという規模で、EUの資金援助を獲得し、国際的にも最高レベルの人材を集めることができるクリティカルサイズに達した。また、Eucorはこのほど、ニューヨークに連絡事務所を開設した。
学生たちは、Eucor加盟大学で、それぞれが希望する授業を受け、セメスターを過ごすことができ、自由にそれぞれの大学のユーティリティを活用できる。国境を越えたディプロマを授与することはこれら5つの大学で行っており、今後さらに拡大していくに違いない。

 

2016年5月26日

 

Université franco-allemande : un réseau méconnu
Le Monde紙

地域 西欧、中東欧・ロシア
ドイツ、フランス
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 教育、研究
国際交流 国際化
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