【ニュース・フランス】パリ協定の遵守による漁業と農業の生産性低下の防止

 
世界的に農業と漁業に気候変動が与える影響には、どのようなものが挙げられるだろうか?
 
国立科学研究センター(Centre national de la recherche scientifique:CNRS)が主導し、フランスではモンペリエ大学が参加する国際チームによって、世界の雇用、経済、食物の安全に関するデータについて気象モデルを基にした研究が行われている。2019年11月27日にアドバンスサイエンスに発表された結果によると、温室効果ガスの削減がなされなければ、世界の90%が農業と漁業の生産性低下に直面する。しかし多くの国では、パリ協定によって定められたような抜本的な排出量の削減によって、その低下を抑えることが出来ると推測されている。
 
世界の雇用、経済、食物の安全に関するデータを気象モデルに基づき、科学的に気候変動が二つの主要産業である農業と漁業に与える影響が分析された。もし温室効果ガスの排出が削減されないと、世界人口の約90%-気候変動の影響に大きく左右される人々、そしてその変動に適応することが難しい人々-は、主要な産業である農業と漁業の生産性の低下に直面することになるだろう。そして、現在から2100年までの収穫量が変化しない地域に住める人々は、3%以下である。この状況下では、気候変動に適応できる可能性は限りなく少ない。つまり、農業を発展させると漁業による気候変動の影響を抑えることができなくなり、またその逆も起こり、この二つの産業は深く影響を受ける。
 
しかし科学者によると、パリ協定(温室効果ガスの抜本的な削減条項を含む)を遵守すれば、多くの国でその状況を回避できる可能性があるという。実際、生産性の低下は、様々な状況により回避できないかもしれないが(世界人口の60%が常にそれに直面している)、その変化の度合いは、ずっと緩やかなものになるだろう。その影響を最も受ける国々では、生産性の低下は5分の1から4分の1に抑制できると推測されている。
 
これによって適応戦略(同じ産業の中で生産物の多様化、例えば将来の気候での生育しやすい品種を育てることや、新たな気候条件に余り影響されない、またはそれによってよい影響を受ける産業に切り替えること)を採用しやすくなる。将来の気候変動に適応した社会にするには、そのマイナスの影響が不可避的な地域において、適応対策によって早急にその影響を軽減する行動をとることが必要である。
 
2019年11月27日
 
CNRS:Respecter l’accord de Paris limiterait les pertes de productivité pour la pêche et l’agriculture
 

地域 西欧
フランス
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 研究
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