2018年10月8日、政府は2019年の予算が非常に抑制されたものとなっている中、研究予算と併せて発表された研究及び高等教育の長期計画の中で、研究費の拠出を増やす重要な計画を提案した。
「提案された長期計画における資金拠出の増額は、今後数年間の長期的な予算と最も関連があり、これにより、我々はより賢明に、より長期的かつ予測可能な研究への投資を行うことが可能になるだろう」と、John-Arne Røttingenノルウェー研究評議会(The Research Council of Norway:RCN)事務局長は述べた。
新たな長期計画は、「グローバル化した世界における安全保障と相互依存」を新たな優先事項として採択した。Røttingen事務局長は、「新しい計画は、ノルウェーの長期的な展望(我々が世界にどのような影響を及ぼし、世界がどう影響を受けるか)を考慮し、研究力を強化する必要性を認識している。」と述べた。長期計画はまた、低環境負荷への移行に関する課題と、社会のあらゆる分野において幅広く技術開発を推進する必要性を明確にしている。同時に、計画における教育的要素もより顕著になっている。
政府は、2019から2022年までの計画期間における研究資金の増額について3つの重要な分野を提案した。すなわち、
- 「技術力の押し上げ」(8億ノルウェークローネ(約106億円*)、
- 「民間セクターの再生・再編のための研究開発」(4億5,000万ノルウェークローネ(約60億円*)、
- 「高等教育の質」(2億5,000万ノルウェークローネ(約33億円*)
の3分野である。
これら3つの主な増額は、社会の大部分を網羅している。提案された2019年の研究資金の実質的な増額幅は、政府が提案する国家予算の全体的な増額に対応しており、総額約5億ノルウェークローネ(約66億円*)、前年比1.2%増に相当する。長期計画に従い、政府は2019年には、「デジタル化」と「産業技術」に重点を置く。さらに、貿易と産業の再生・再編に向けた大きな投資が行われる。
気候変動は長期計画における優先事項の1つであるが、この分野への資金提供は過去4年間でほとんど増加していない。「助成計画を独自に策定し、今年の予算で気候研究の優先順位をさらに高めたいと考えている。予算案と同時に提出された1.5℃の目標に関するIPPCの報告書は、これらの重大な課題を解決するための研究に基づいた知識の重要性を再度示している。」とRøttingen事務局長は強調した。政府は、海洋国家であるノルウェーの大きな展望を表明している。
提案された国家予算には、健全な海洋環境及び海洋ごみの削減を促進するための資金配分が含まれており、これは重要な分野におけるノルウェーの貢献度を高めるものとなる。海洋技術への投資も増加すると考えられる。
前回の計画期間では、EU枠組みプログラムへのノルウェーの参加を促進するための資金配分が増額された。しかし、Røttingen事務局長は「研究機関がHorizon 2020プロジェクトにさらに参加するよう促すための計画であるにも関わらず、研究機関のプロジェクトへの参加費用を負担可能な仕組みになっていないのは残念。これはノルウェーがEU枠組みプログラムを最大限に活用する能力を弱めている」と指摘する。
*円表記はJSPSストックホルム研究連絡センターが追記
2018年12月10日
【出典】
The Research Council of Norway:Important funding boosts recommended in Long-term plan for research