【ニュース・ドイツ】DFGは新たに9つの研究グループに資金を提供する

 
研究課題は多発外傷研究や生体を模倣した酸化触媒反応研究、森林土壌の腐植層研究と幅広い/最初の期間で総額約3,800万ユーロの資金を提供する

 
ドイツ研究振興協会(DFG)は新たに9つの研究グループを立ち上げる。これは2022年3月25日に、評議会の推薦によるDFGの合同委員会がバーチャル会合で決定した。新たな研究グループは、間接経費のための22%のプログラム手当を含めて総額約3,800万ユーロの資金を受給する。これら9つの研究グループに加えて、7つの研究グループへの助成期間延長も決定された。助成期間が延長された研究グループの一つには、オーストリア科学財団(FWF)、スイス科学財団(SNSF)と南チロルのボルツァーノ自治州 との、ドイツ-オーストリア-スイス(D-A-CH)協力の枠組みによって資金が供給される。

 
研究グループは、科学者が研究領域における現在喫緊の課題に取り組んだり、革新的な方向性を確立したりすることを可能にする。最大8年間資金が提供される。さらに、発展研究センターは特に人文科学や社会科学で必要とされる構造に適合している。一方、臨床研究グループは研究と臨床活動の密接な結びつきに特徴がある。総じて、DFG は現在174の研究グループと14の発展研究センターおよび14の臨床研究グループに資金を提供している。

 
9つの新たな研究グループの詳細(発言者の所属大学のアルファベット順)

 
「不均質モデルのボリューム・トランジションカップリングのための構造保存型数値計算法」の研究グループは、磁化プラズマ、複雑流体、電気化学プロセスを表す結合系のモデリングとシミュレーションを専門としている。カップリングされたシステムでは、選択された物理領域の同じ領域で複数のプロセスを考慮したり(ボリュームカップリング)、領域の異なる部分で使用される数学モデルを共通の境界で結合したり(トランジションカップリング)する。その目的は、基礎となる連続モデルの重要な構造的特性を保証する効率的な数値計算法を開発し、高性能コンピュータに実装することである。(発言者:Manuel Torrilhon 教授、アーヘン工科大学(RWTH Aachen))

 
気候変動防止の目標を達成するためには、石油や天然ガス、石炭由来の非再生可能な炭化水素資源の効率的な利用方法が見つけられるべきである。これには、酸素や過酸化水素といった環境に優しく普遍的な酸化剤を、穏やかな条件下で産業的に重要な化学物質の製造に適用するための新たなコンセプトが必要である。そのため、「鉄錯体を用いた生体を模倣した酸化触媒反応」の研究グループは、単純な炭化水素やより複雑な有機基質の酸化をより効率的に行うための生体を模倣した均質触媒の開発に専念している。 (発言者:Thorsten Glaser 教授、ビーレフェルド大学

 
多発外傷とは、例えば重大な事故によって、身体の複数の部位や器官系が同時に損傷することである。重傷は二次的な疾病や死亡率の上昇につながる。しかしながら、このような相互作用を十分に説明したり、予測したりすることは未だできていない。ドイツの5つの主要な外傷センターが参加する研究グループ「予後を改善するための診断・治療ツールを提供する橋渡しの多発外傷研究」は、この問題に専念している。このグループは、多発外傷患者の新たなメカニズム、バイオマーカーの可能性、治療の方策を明らかにすることを目的としている。これらは、外傷後のケアにおいて早期かつ日常的な検診に使用され、臨床現場への適合性を検証されるものである。(発言者:Ingo Marzi 教授、フランクフルト大学

 
腐植層は、森林生態系の地上部と地下部の境界面を形成し、さまざまな生物の生息地となる。また、植物の苗床や根を張るための場となり、有機物、養分、水、気候ガスなどを蓄え、吸収し、変化させる生態系の中枢として機能する。研究グループ「腐植層:機能、動態、変化における脆弱性」は、ヨーロッパのブナ混交林の12カ所において、この土壌層のまだ解明されていない機能と、気候変動におけるその変化を分析することを目的としている。中心的な論題は、ヨーロッパの森林の土壌特性は、土壌の栄養成分に対する生物の適応によって形成されており、気候温暖化の影響は、これらの適応との相互作用にかかっているというものである。 (発言者: Friederike Lang 教授、フライブルク大学

 
移住のプロセスによって特徴づけられる社会では、今日、行為者は自己理解と自己の利益を定義し、明確に表現するために、しばしば人権規範に言及している。これは、研究グループ「移民社会における人権講話(MeDiMi)」の仮定であり、「Vermenschenrechtlichung」(人権化)と呼ばれるこの現象の範囲、形態、結果を扱っている。この現象は、法律的および政治的または社会文化的な行動指針において調査される。選ばれた10分野を分析することで、現代社会、特にヨーロッパ社会における人権の役割について新たな理解を得ることができるようにすることを目的としている。 (発言者: Jürgen Bast 教授、ギーセン大学

 
基礎研究の観点から、研究グループ「次世代機能性自己修復材料-エネルギー貯蔵・変換用ソフトマテリアルの光電子・輸送特性の回復(FuncHeal)」では、柔軟で自己修復可能なエネルギー貯蔵や材料転換のための新しい観点に焦点を当てている。しかし同時に、有機太陽電池のような応用分野への道筋や課題も浮き彫りにされ、研究の技術的意義が展望できるようになる。従来のアプローチとは対照的に、亀裂や損傷を「修復する」だけでなく、複雑な材料系の機能や特性を回復させることを目的とした研究を行っている。(発言者: Ulrich S. Schubert 教授、イエーナ大学

 
光子-光子相互作用は、既知のすべての素粒子とそれらの間の重要な相互作用をまとめた、いわゆる素粒子物理学の標準モデルにおいて中心的な役割を担っている。しかし、これらの効果を正確に計算することは、量子の世界の特殊性から、必ずしも直接的に可能とは限らない。研究グループ 「標準モデル内外での光子-光子相互作用 – MESA から LHC への発見の可能性の開拓」は、これらの相互作用の理解を深め、ハドロン物理と素粒子物理全体を大きく発展させることを目標としている。この基礎となるのが、マインツにある新しい MESA 加速器とジュネーブにある大型ハドロン衝突型加速器(LHC)を使用した測量である。(発言者: Achim Denig 教授、マインツ大学

 
研究グループ「長距離相互作用を持つ量子スピンシステム:実験、理論、数学」では、長距離相互作用を持つ量子多粒子システム、つまり極めて狭い距離に限らず互いに影響し合うシステムに関する問題を取り扱っている。実験、理論、数学のことである。 このグループは、このようなシステムをよりいっそう理解し、長期的には、狙った方法で制作・制御し、その特性を計測学やセンサー技術などの量子技術応用に利用できるようにしたいと考えている。(発言者: Igor Lesanovsky 教授、テュービンゲン大学

 
近年、地域の多様性、すなわち生態系における景観に分布する生物群集の異なる種の多様性が、土地利用の増加により、均質化しつつある。研究グループ「生産林の多様性と多機能性を高めるための林分間の構造的多様性の増加」は、一方ではこの均質化の影響を評価し、他方ではその悪影響を逆転させるための戦略を開発することを目標としている。特に、構造的な複雑さを改善することによって、以前は均質的だった生産林において生物多様性と多機能性を高めることができるのかどうかということである。このために、ドイツで11カ所の林分が選ばれた。(発言者: Jörg Müller 教授、ヴュルツブルク大学

 
7つの研究グループムが2回目の資金助成期間を延長

(発言者の大学のアルファベット順で、DFG のインターネットデータベースGEPRISにある現在の助成金に関するプロジェクトの説明を参照)

 
研究グループ「宇宙重力ミッションによる気候変動の新しい精密観測(NEROGRAV)」(発言者: Frank Flechtner 教授、ベルリン工科大学
外部リンク:DFG: FOR 2736: New Refined Observations of Climate Change from Spaceborne Gravity Missions (NEROGRAV)

 
臨床研究グループ「がんの表現型治療と免疫抵抗性(PhenoTImE)」(発言者: Dirk Schadendorf 教授、デュースブルク-エッセン大学、臨床責任者: Alexander Roesch 教授、エッセン大学病院
外部リンク:DFG: KFO 337: Phänotypische Therapie- und Immunresistenz in Krebs (PhenoTImE): Präklinischer und translationaler Fortschritt der KFO 337

 
研究グループ「1850年以来の気候変動に対する高山帯の地質システムの感度(SEHAG)」(発言者: Michael Becht 教授、アイヒシュテット-インゴルシュタット大学
外部リンク:DFG: FOR 2793: Sensitivity of High Alpine Geosystems to Climate Change Since 1850 (SEHAG)

 
この研究グループには、オーストリア科学財団(FWF)、スイス科学財団(SNSF)と南チロルのボルツァーノ自治州とのドイツ-オーストリア-スイス(D-A-CH)協力の枠組みによって資金が供給される。

 
発展研究センター「宗教と都会性:相互形成(UrbRel)」(発言者: Susanne Rau 教授、エアフルト大学
外部リンク:DFG: FOR 2779: Religion und Urbanität: Wechselseitige Formierungen (UrbRel)

 
研究グループ「染色体の不安定性:DNA 複製ストレスと有糸分裂機能障害の機能的相互作用」(発言者: Holger Bastians 教授、ゲッティンゲン大学
外部リンク:DFG: FOR 2800: Chromosomale Instabilität: Funktionelle Wechselwirkungen von DNA-Replikationsstress und mitotischer Fehlfunktion

 
研究グループ「火山が大気や気候に与える影響の再考-次の巨大噴火への備え」(発言者: Christian von Savigny 教授、グライフスヴァルト大学)外部リンク:DFG: FOR 2820: Revisiting The Volcanic Impact on Atmosphere and Climate – Preparations for the Next Big Volcanic Eruption

 
研究グループ「高強度フロンティアでの量子真空の探求」(発言者: Holger Gies 教授、イエーナ大学
外部リンク: DFG: FOR 2783: Probing the Quantum Vacuum at the High-Intensity Frontier
 

2022年3月28日


DFG: Impulse für kommende Legislaturperiode: Wissenschaft als Schlüssel zur Bewältigung der großen Herausforderungen


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