【ニュース・ドイツ】Anja Karliczek大臣:がん治療に人工知能(AI)を利用

 
連邦研究大臣がキャンサースカウト(がん探知)プロジェクトを紹介記者会見でのAnja Karliczek大臣

 
 人工知能の利用は、すでに医療の多くの分野で病気の診断や治療を向上させている。本日木曜日、ベルリン(Berlin)において、Anja Karliczek連邦研究大臣はがん治療のための新しいAI研究プロジェクトを発表した。このプロジェクトは、ゲッティンゲン大学病院(Universitätsklinikum Göttingen)とシーメンス・ヘルシニアーズ社(Siemens Healthineers)によって運営されており、ドイツ連邦教育研究省(Bundesministerium für Bildung und Forschung : BMBF)の資金提供を受けている。Anja Karliczek連邦研究大臣は以下のように説明する。

 
 「AIは正しく使えば人に利益をもたらす。特に医療の分野では、そのことがより顕著になってくる。AIはすでに医療における診断の向上に大きく貢献している。しかし、連邦教育研究省では、これらのアプローチの多くがまだ初期段階にあり、研究が必要であることも認識している。

 
 現在、我々はすでに医療におけるAIアプローチに特化した60以上のプロジェクトに9,000万ユーロを投じている。今後数年間でこれらの将来的な投資を拡大していきたいと考えている。腫瘍性疾患は、医学におけるAIの応用分野であり、多くの研究プロジェクトの中で突出している。「がんとの闘いの10年」プロジェクト(Nationalen Dekade gegen Krebs : NDK project)において、我々は改めてこれらの病気との特別な戦いを宣言した。

 
 がんの種類や形態が多様化していることに鑑み、がん患者の診断法や治療法を向上させるため、AIが提供する機会を利用し、研究者を支援したいと考えている。特別なプロジェクトの一つに「キャンサースカウト(がん探知)」がある。AIを使ったデジタル生体組織診断が目標である。このプロジェクトの中核をなすのは、腫瘍細胞の事前スクリーニングのようなものである。AIの助けを借りて、コンピュータが腫瘍細胞を特定の区画、いわゆる分子サブタイプに区分けする。これにより、がん患者をより適した方法で治療することが可能になる。これらのアプローチは、個別化がん治療の一種である。我々の省はこのプロジェクトに1,000万ユーロの資金を提供している。

 
 これは、科学と産業が人類の利益のためにどのように協力しているかを示す良い例である。」
ゲッティンゲン大学病院病理学部長であるPhilipp Ströbel教授は次のように強調する。「我々のアイデアをBMBFに納得していただけたことを大変嬉しく思う。資金提供のおかげで、我々の強力な産業パートナーであるシーメンス・ヘルシニアーズ社と共に、我々のプロセスの可能性と限界を広く試すまたとない機会を得ることができた。これにより、臨床ルーチンのための一連の全く新しい方法を開発することができるようになる。」

 
 シーメンス・ヘルシニアーズ社の「新規事業開発・企画」部門の責任者であるChristian Wolfrum氏は、次のように付け加える。「この研究プロジェクトは、異なるデータソースを使用およびリンクし、がん診断をより正確なものにし改善させることで、臨床上の意思決定を支援することができる。このプロジェクトの課題の一つは、人工知能を用いて腫瘍内の治療に関わる分子の変化を予測するために、病理学的データ、ゲノムデータ、プロテオーム解析データを用いて人工ニューラルネットワーク を鍛えることである。」
 

背景:

 
 毎年、ドイツでは約50万人が悪性腫瘍に侵されている。近年、非常に効果的な新薬の開発により、すでに多くの腫瘍の治療法が大きく変化し、がんとの闘いに全く新しい機会が開かれている。現在、BMBFは「キャンサースカウト(がん探知)」により、がんとの闘いにおける新たなツールを医学に提供することを目的とした大規模な共同研究プロジェクトに資金を提供している。

 
 およそ1,000万ユーロの資金が投入されているこのプロジェクトの主な目的は、「デジタル生体組織診断」を使って腫瘍の分子改変を特定することができる人工知能の研究である。これにより、現在よりもはるかに短い時間でこれら変異を治療することが可能になる。
 
2020年3月5日
 


BMBF: Künstliche Intelligenz für Krebsbehandlung nutzen

 

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