【ニュース・ドイツ】留学生の学問的成功の増加

 

ドイツが世界で最も重要な非英語圏の留学先に-ドイツ人学生や研究者もより多くが外国へ
 
カリチェック大臣:留学生や若手研究者は専門職の需要を満たすためにますます重要である。

 
現在、280,000名以上の留学生(この記事では、厳密にはドイツの大学への入学資格をドイツ以外の国で得て、ドイツの大学に留学しに来ている学生を指す。以下留学生とする)(※)がドイツで学んでいる。しかし彼らのすべてがドイツで首尾よく学業を修了できるわけではない。
 
ドイツ学術交流会(Deutscher Akademischer Austauschdienst:DAAD)の研究教育部、戦略部門長のChristiane Schmeken氏と、教育社会学者のJesús Pineda博士は、インタビューの中で事の背景及び、ドイツの大学がいかにして留学生たちの学問的成功をサポートできるか説明する。
 
 ドイツにはBildungsausländerのほかに、Bildungsinländerという区分もあり、こちらはドイツ国内で大学への入学資格を得ている学生のことを指すが、ドイツ以外の国籍の学生も含まれる。
 
連邦教育研究省が資金措置を行っているプロジェクト「学部及び修士課程におけるドイツの留学生の学問的成功と退学」(”Studienerfolg und Studienabbruch bei Bildungs-ausländern in Deutschland im Bachelor- und Masterstudium “:SeSaBa)において、DAAD、ハーゲンのフェーン大学、バイエルン州立高等教育研究所(das Bayerische Staatsinstitut für Hochschulforschung und Hochschulplanung:IHF)は、ドイツにおける留学生の特定の修学状況を共に分析している。
 

なぜこの取り組みが必要なのか?

 
Christiane Schmeken氏:ドイツの高等教育学術研究センターからの統計データは、留学生の退学率が特に高く、学士課程では45%、修士課程では29%であることを示している。これらの結果は満足できるものではなく、特に注意が必要である。私たちのSeSaBaプロジェクトでは、ハーゲンのフェーン大学、及びIHFが、2021年までの退学の原因と学問的成功の決定要因を調査し続けている。
 

研究プロジェクトを評価するために、特定の基準が使用されていた。
これらはどのようなものであり、最初の結果はどのようなものだったのか?

 
Dr. Jesús Pineda氏:私たちは学問的成功も退学も、複雑で複数の原因を持つ現象であると考えている。したがって、学業を中断する原因の一つを特定するだけでなく、多くの組み合わせ、またはより適切な言い方をすれば、課題の重複についても考慮に入れる必要がある。
 
これらを特定するために、私たちは大学の代表者たちと留学生を含むフォーカスグループと共に、2017年にエキスパート・ワークショップを実施した。例えば、一連の定性的予備調査で、多くの留学生が誤った期待を持ってドイツに来ていることがわかった。私たちはなぜそうなるのか、彼らがどの情報源を活用しているのか探った。
 
彼らの失望を防ぐためには、高等教育機関がどのように情報提供を改善すればいいのか、海外の機関とより密接に協力できるかを検討する必要があるだろう。そして、留学希望者はドイツ語を習得することがかなりの挑戦であることを事前に知っておかなければならない。
 
この問題には客観的なレベルと主観的なレベルの両方が含まれる。実際の言語能力と自己評価は往々にして異なる。多くの留学生は正式な要件を満たしていればうまく勉強できる、ということに依存している。言語証明書があるにも関わらず、講義中に教授の言うことを理解していないのなら、失望はそれに応じて大きくなる。
 
英語の学位プログラムの学生は、しばしば彼らの学位プログラムが完全に英語で実施されるのではないかと誤解していることが良くある。しかしながら、多くの大学は、ある程度の情報はドイツ語のみで提供している。
 

何故留学生たちの学問的成功がドイツの大学のマーケティングに密接に関連しているのか?

 
Christiane Schmeken氏:高等教育方針と研究にとって、留学生の学問的成功の増加は重要な戦略的目標だ。満足した卒業生たちの存在は、ドイツで学ぶことにとって優れた大使となる。また、国内の学生数が減少する時代に、ドイツの大学は非常に優秀な留学生を獲得するために以前にも増して競争し合っているため、個々の大学のマーケティングにおいても彼らは役割を担っている。現在、ドイツの大学のインフォメーションページは大学や研究に関する一般的な情報を提供するだけでなく、その大学での留学生の成功と満足度も明確にしている。
 

高等教育の国際化をめぐってドイツと競っているホスト国を見ると、留学生は国内の学生よりも成功していることが多いことがわかる。
これはどのように説明できるか?

 
Dr. Jesús Pineda氏:確かに、他のホスト国を見ると、どこの国でも留学生の退学率は国内の学生の退学率よりも高くないことがわかる。例えばこれはアメリカやオーストラリア、オランダに当てはまることだ。これには確かに様々な理由がある。2019年1月のDAADフォーカス「ドイツとその他の重要なホスト国における留学生の学問的成功と退学」で、私の同僚のJan Kercher博士は高等教育システムの資金調達の程度が、学生カウンセリングやサポートにとってある影響力を持つと分析している。上記の国々で成功率が高いのは、ある程度は留学生の授業料が高いことと、費用をかけた教育指導によるものであろう。
 
もちろん、アメリカやオーストラリアでは英語が話されているという事実も関連している―――多くのオランダのコースも、英語で行われている。これにより、留学生たちにとっての大きなハードルが取り除かれている。社会学的な観点から見ると、なおも検証されるべき仮説の一つは、移民社会としての長い伝統を持つアメリカとオーストラリアは、多様性の問題に対処する経験が多いのではないか、ということだ。
 

DAADは留学生たちの成功のために何をするのか?

 
Christiane Schmeken氏:私たちの対策は、分析、マーケティング、サポートの3点に焦点を当てている。一方では、学生の成功を評価し、決定的な要因を理解することが重要だ。このため、DAADは留学生たちの動向と、ドイツ内の学業中断の割合を常に分析している。例えば、「ドイツの大学での国際性に関するプロフィールデータ」プロジェクト、出版物「サイエンス・コスモポリタン」や、SeSaBaの研究活動などだ。ここでは、私たちは出身地に応じて差別化されたイメージを描くことにより、大学が最も適したターゲット国を選択するのをサポートする。これは、国際大学マーケティングが入学希望者や大学が彼らの期待感に都合をつけるのにどのように役立つかのほんの一例である。
 
双方が何に期待しているかと正確に知っているほど、成功の可能性は大きくなる。結局DAADは連邦外務省からの資金援助を受けて、STIBETプログラム(Stipendien- und Betreuungsprogramm)を活用して、ドイツの大学と留学生と博士課程入学希望者を支援している。現在でも28の新しいプロジェクトが留学生の学問的成功を増加する目的で開始されている。
 

STIBETプロジェクトはどのように支援を行うのか、そしてその特徴は何か?

 
Dr. Jesús Pineda氏:STIBETプログラムは、第一に、留学生を歓迎する考え方を向上させることを意図したものである。主要な目標は、ドイツのポジティブなイメージを発展させ、留学生たちが修学後もドイツとつながりを保ち、さらにはドイツの労働市場の専門的な人材として採用されるように、彼らが大学の場でしっかりとその一員となることである。モデルプロジェクトは、留学生の学問的成功を向上させるために開発されている。私たちは大学を支援・指導するだけでなく、大学と集中的に意見交換を行って最良の方法を開発する。これらのことは他の大学の利益につながる。
 

ドイツの大学は、留学生の退学に対抗するために独自のイニシアティブをもって何ができるか?

 
Christiane Schmeken氏:現在、多くの大学は、入学希望者たちがどの学位プログラムに適合するかについて非常に正確な考えを持っている。正確で適切な選択は、(自身の学業に)満足して成功した留学生を惹きつけるための最も重要な前提条件だ。他の重要な要素は、優れた社会性及び専門的なサポートと、留学生をつなげるための方策である。いわば分散的に組織されている傾向にあるドイツの大学特有の課題は、多様なオファーをとりまとめて、学生がそれらを見つけて活用できるようにすることである。
 
アングロ・サクソン諸国の大学が高い授業料のおかげで提供できるオールラウンドで楽しいプログラムと競争できないとしても、私たちはSeSaBaプロジェクトをもって、ドイツの大学が留学生を更に効果的にサポートする方法を見つけることができると確信している。
 
2019年9月13日
 
DAAD:„Den Studienerfolg ausländischer Studierender erhöhen“
 

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