【ニュース・ドイツ】ドイツ研究者国際ネットワーク年次総会及び人材フェア:ヨーロッパで初めて開催され、再び存在感を示す

 
ドイツ研究者国際ネットワーク(GAIN)の第22回年次総会及び人材フェアが、9月2日から4日までボン(Bonn)で開催され、北米以外で初めての開催となった。本イベントは現在、アジア、アフリカ、オーストラリア、北米の他、特にドイツ以外のヨーロッパ諸国で研究を行っているドイツの若手研究者を対象としたものである。

 
20年間、ボストンとサンフランシスコで交互に開催され、2回のオンラインGAINミーティングを経て、今回、再び対面形式かつヨーロッパで初めて開催されることとなった。ドイツ学術交流会(Deutscher Akademischer Austauschdienst (DAAD))のJoybrato Mukherjee事務総長は以下のように述べた。「過去2年間はパンデミックの影響でバーチャルでの開催にとどまっていましたが、ボンで開催されるGAINでは、再び直接お会いできることを楽しみにしています。それこそが、学術的なキャリアを積むための貴重なコンタクトを確立するという会議の意義を果たすことです。」このことは、GAINカンファレンスと人材フェアの参加者が3日間で400人以上に上ったという反響からも見て取れる。また、このイベントではヨーロッパで資金援助を受けている多くの若手研究者にもその舞台を提供した。大学や応用科学大学(HAW)の教授職から、企業の研究部門への異動またはスタートアップ企業の設立のための科学マネジメントなど、さまざまなキャリアパスについて知ることができた。ワークショップでは、国際機関でのキャリア開発、任用手続きやテニュアトラック教授職などに関するトピックが取り上げられた。人材フェアでは、大学、ファンディング・エージェンシー、研究機関及び科学者が60以上のブースを出展し、自らをアピールした。

 
今回のGAINには、ハンブルク高等研究所事務局長のDorothea Rüland博士、アーヘン工科大学(RWTH Aachen)グラフ機械学習担当のChristopher Morris准教授、デュイスブルク-エッセン大学(University of Duisburg-Essen)電気エネルギー機能材料担当のFranziska Muckel准教授も参加された。Rüland氏がセッション「ドイツでの評価を高めるための海外とのネットワーキング」の議長を務め、 Morris准教授がパネル「テーマ別フォーラム:自然科学及び工学」でキャリアパスのヒントについてアドバイスを行った。Muckel准教授はGAINでの体験談としてアメリカでの経験を報告した。

 
Rüland博士、ドイツでの評判を上げるために、なぜ海外でネットワークを作ることに意味があるのでしょうか?

 
Rüland博士:今やネットワークは科学や学問における基本的なツールであり、特に若い研究者にとっては避けて通ることはできません。ドイツの大学のポストに応募したいと思っても、帰国してからでは始まりません。そのころには、列車はとっくに駅を離れている。だからこそ、早い時期からドイツ国内はもちろん、世界各地にコンタクトを取り、それを維持する必要があるのです。コンタクトを開始するための前提条件として、一定の認知度が必要であり、それは主に出版物や講演を通じて達成されます。それを持ち、ドイツのサイエンス・コミュニティで認知された人だけが、任用の対象となるのです。

 
どのようなネットワーキングの場がありますか?

 
Rüland博士:可能な限り早い時期から学会やサマースクールに参加したり、GAINなどのイベントに参加することは常に重要です。また、博士課程の学生であれば、博士課程の段階で指導教官を持ち、彼らがコンタクトを維持する手助けをしてくれるはずです。もちろん、出版もしなければなりません。論文は、その分野のコミュニティで自分の名前を知らしめることができます。また、若手アカデミー(Junge Akademie)やグローバル・ヤング・アカデミー(Global Young Academy)などのアカデミーに参加するのも一つの方法です。ネットワークの中で自分をどう位置づけるか、どう振る舞うかを学ぶことができる面白い会です。ハンブルク高等研究所のような高等研究機関は、学際的な研究・交流の場を期間限定で提供しています。そこで人脈を開拓することで、ポスト応募の成功率を高めることができます。

 
ネットワークに分野ごとの違いはあるのでしょうか?

 
Rüland博士:生命科学や工学の研究者は、チームで仕事をすることが多く、また、より大人数の共著で論文を発表することが増えているので、ネットワークを構築しやすいと言えるかもしれません。社会科学や人文科学の分野では話は別で、いまだに論文や著書を単独で出版しているところも少なくありません。ここでは、できるだけ早くから学会やサマースクールに積極的に参加し、独自のネットワークを構築することをお勧めするしかありません。

 
Morris准教授は、DAADのプログラム「IFI – International Research Stays for Computer Scientists」の奨学生としての期間を含め、カナダ・モントリオールのMilaケベックAI研究所(Mila – Quebec AI Institute)で2年以上、研究をされたそうですね。なぜ、ドイツに戻ろうと思ったのですか?

 
Morris准教授:実は、12月になると必ず全国で募集されるカナダの教授職に応募したかったんです。カナダは私の研究分野である機械学習で世界をリードしている国の一つですし、国も好きでしたから。しかし、私はすでにドイツで3つのポストに応募し、アーヘン工科大学からのオファーを含め、2つの準教授職のオファーを受けていました。DFGのエミー・ネーター・プログラムの支援も得ていたので、ドイツで自分の研究グループを立ち上げるのは当然のことだったのです。

 
準教授職に採用されるまでの苦労はありましたか?

 
Morris准教授:正直なところ、私にとってはそれほど難しいことではなかったんです。ひとつには、私の研究分野である「機械学習」が非常に人気があり、ドイツでは多くの準教授職や教授職の募集があったことが背景にあります。一方、ドルトムント工科大学(Technische Universität Dortmund)の指導教官であったPetra Mutzel教授がお示しくださったDFGの資金もありました。また、アーヘン工科大学のMartin Grohe教授とすでに協力関係にあり、彼が私をアーヘンに呼びたいと言ってくださったことも有利に働きました。ドルトムント工科大学での博士課程時代から連絡を取り合っていたのです。当時、ドルトムント工科大学の教授だったKristian Kersting氏が私の研究に注目したことが、コンタクトのきっかけとなりました。そして、Martin Grohe教授からアーヘンで講演をしないかと声をかけていただきました。のちによく引用されることになる論文を一緒に書き、その結果、私は認知度を高めることができたのです。

 
ドイツで教授職に飛躍するための秘訣はありますか?

 
Morris准教授:最も重要なのは、トップ・ジャーナル、コンピュータサイエンスの場合はトップ・カンファレンスのプロシーディングで発表することだと思います。国内外とのネットワークも有効です。私は学会で他の研究者と出会い、会話が弾み、「一緒に何かやらないか」と声をかけたこともあります。このネットワークは時間とともに大きくなり、私はその恩恵を受けています。

 
Muckel准教授は、アメリカのワシントン大学(University of Washington)で2年間研究され、そのうち1年間はDAADのPRIMEフェローとして研究をされていますね。そこで特に気に入ったことは何ですか?

 
Muckel准教授:学科やワーキンググループの中では、私がそれまでドイツで経験してきた以上に、コラボレーションが強力にサポートされていました。皆がとてもオープンで、とても自然に連携ができました。同僚と会う機会も多くありました。ほぼ毎週、セミナーや講演に招待され、週に一度は学科内でコーヒーとケーキを食べる「クッキータイム」がありました。多くの人が喜んで参加してくれましたよ。また、若手の研究グループリーダーである私にとっては、通常では容易ではない最新の大型研究機器に簡単にアクセスできることも魅力でした。アメリカでは、統合機器センターを通じて非常に簡単にアクセスできるようになっているんです。よく訓練された熟練の担当者をつけてもらえ、実験もしてくれました。このサービスは、大学の内部内部予算によるものでした。ドイツでは、もっと面倒ですね。

 
アメリカでキャリアを積むことは考えなかったのですか?

 
Muckel准教授:DAADのPRIMEフェローとして1年間活動した後、私はまだドイツに帰りたくなかったし、それでは成功したとは思えませんでした。せっかく落ち着いたのに、またその場所を去らなければならないということですからね。そこで、教授に相談したところ、喜んでくださり、研究所予算から2年目の資金を出してくれたのです。しかし、アメリカには残らないということは、ずっと決まっていたんです。そこでプロとしての経験を積みたい気持ちもあったのですが、ドイツでの生活を捨ててまでアメリカでキャリアを積むことはないと思ったのです。

 
デュイスブルク・エッセン大学での日々の大学生活で、どのような経験を持ち帰ったのでしょうか。

 
Muckel准教授:クラウド上での明快なやり方が印象に残りました。学生がデータセットをクラウドにアップロードし、教授がオンラインでコメントするというものです。データをプリントアウトして、アポイントを取ってから議論するというやり方よりも簡単でした。私のワーキンググループでも、その方法を採用しています。私は、チーム内では上下関係がなくオープンなコミュニケーションを望んでいます。この一体感が大事なんです。週に1回ミーティングを行い、博士課程の学生から研究の進捗状況を聞いています。

 
2022年9月7日


DAAD: GAIN-Jahrestagung und Talent Fair: Wieder in Präsenz und erstmals in Europa


地域 中東欧・ロシア
ドイツ
取組レベル 政府レベルでの取組
国際交流 研究者交流
人材育成 学生の就職、研究者の雇用