【ニュース・ドイツ】ダウン・アンダー(地球の反対側)との二国間学術交流

 
「二国間学術交流事業」の一環として、DAADはオーストラリアのビクトリア州のパートナー団体veskiと新たな協力協定を締結した。最初の助成金採択者であるウイルス学者Jason Mackenzie教授がドイツでの滞在を終えた。

 
オーストラリアにおけるコロナウイルスによる19カ月間に渡るロックダウンを経て、今回の研究協力が行われたことは特に重要な意味を持つ。科学者の二国間交流と国際研究協力を促進するため、DAADは2021年3月、オーストラリアのビクトリア州の大学を管轄するveskiと相互助成協定を締結した。本プログラムは大学の教員を対象としており、14日~最長3ヶ月の短期間であるため、教務免除期間にも対応可能である。申請者は、支援希望期間を指定することができ、ドイツおよびビクトリア州の大学の教員が参加可能である。

 
科学にとって素晴らしい場所

 
最初の助成金採択者であるオーストラリアのウイルス学者、Jason Mackenzie教授が、ドイツでの滞在を終えた。ノロウイルスとフラビウイルスの発生、発達、繁殖の国際的な専門家である彼は現在、メルボルン大学(The University of Melbourne)の微生物学・免疫学教室で教育と研究の職に就いている。また、オーストラリアウイルス学会をはじめとするいくつかの学会の会員でもある。「ドイツが研究活動にとって素晴らしい場所であることを改めて実感した、素晴らしい経験でした。」とMackenzie教授は総括している。

 
Mackenzie教授とドイツの関係は長い。2002年には、フンボルト財団(Alexander von Humboldt-Stiftung: AvH)の研究助成を受け、ハイデルベルクの欧州分子生物学研究所(European Molecular Biology Laboratory : EMBL)で11ヵ月間研究を行った。以来20年、何度もドイツを訪れ、ネットワークの維持・拡大を図ってきた。「だから、ボン大学のFlorian Schmidt教授とこの共同研究を始めたのです。」とMackenzie教授は言う。Florian Schmidt教授の専門分野は、ウイルス感染症、免疫シグナル、ナノボディである。

 
「ボン大学の研究者仲間たちは、私がそこに滞在している間、非常に良い仕事の雰囲気を作り出してくれました。」と彼はMackenzie教授は称賛する。彼はDAADとの協力やドイツとの交流を躊躇なく勧め、現在、ボンの研究パートナーたちと、さらなる相互訪問や研究の焦点について活発に議論している。

 
相互交流

 
相互交流はDAADとveskiとの協力の基礎を形成している。オーストラリアの科学者はドイツを訪問することによって、自分たちの学部でドイツの研究者を受け入れる意思があることを示すことができる。このプログラムは、大学や研究機関に勤務する博士号を持つ研究者を対象としている。研究プロジェクトは双方で合意され、双方が同時に助成金を申請する必要がある。それぞれの研究者の渡航費用は、各国側でそれぞれ負担する(ドイツ人研究者の場合、DAADが負担)。各訪問研究者が受入国に滞在している間の滞在費は、ビクトリア州の研究者がドイツを訪問する場合は受入機関またはDAADが、ドイツの研究者がビクトリア州を訪問する場合はビクトリア州の受入大学が負担する。Mackenzie教授は、「オンライン申請のプロセスは非常に直感的で、使い勝手のよいシステムです。」と強調する。

 
Jason Mackenzie教授は、ドイツでの滞在を通じて、ドイツと彼の母国がいかに密接な関係にあるかを改めて実感したという。「概して研究に対するアプローチが似ています。私たちは、同じような関心と目標を持っています」と彼は認識している。しかし、オーストラリアの大学とドイツの高等教育システムには、違いがある。オーストラリアでは、博士課程の学生は、まず複数の研究室を経験してから専門的な研究をするのが通例である。しかし、ドイツでは、学生はもっと早い時期に専門を決めなければならない。Mackenzie教授は、研究資金の面でも違いがあることに気づいた。「ドイツでは、研究資金のキャパシティが格段に大きいのです。」と、ウイルス学者である彼は言う。このような資金提供のおかげで、初期・中期キャリアの研究者はこの国で研究を推し進め、キャリアを積むことができるのだと、Mackenzie教授は考えている。

 
太平洋地域でのさらなる研究協力の計画

 
「Mackenzie教授は滞在を終えた最初の助成金採択者であるため、現時点では研究プログラムの詳細を結論を出すには至りません。」と、DAADのアジア・太平洋地域助成プログラム(Asia, Pacific grant program)担当のAnna Katharina Rusche氏は説明します。「しかし、veskiとの協力は非常にうまくいっていると言えるでしょう。秋(オーストラリアからの応募者は春)に一緒に第2ラウンドを開始することを大いに楽しみにしています。」なお、二国間学術交流は、韓国、インド、ベトナム、台湾、モンゴルでも実施されている。

 
2022年9月15日


DAAD:
Bilateraler Wissenschaftsaustausch mit Down Under
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地域 中東欧・ロシア
ドイツ
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