【ニュース・デンマーク】移住労働者のための教育ローンが急増

デンマークに来るEU市民の急増を受け、Ulla Tørnæs高等教育科学大臣は、教育ローン/奨学金政策が外国人学生を引き付ける「大きすぎた看板」なのか、塞がれるべき抜け穴なのかを見極めるため、調査を急いでいる。
大臣は、今年の費用が2013年の政党間合意額を超えるのではないかと懸念している。同省によると、過去2年で、EU/EEA※1(欧州経済領域)圏内から来た1,500名以上の市民が教育機会と教育ローン/奨学金(SU※2:State Educational Grant and Loan Scheme)を得るために同国に来ている。彼らは、週10~12時間の労働を条件に「migrant workers」としてSUの受給が認められる。また、英語で大学教育を受けられることが特にEU/EEAの学生を引き付けていると言う。
Tørnæs大臣は次のように述べている。「教育とSUを受けるためにデンマークに来るEU市民の急増に憂慮している。多くの人がデンマークに無償教育とSUを得るために訪れ、その後、母国に戻ってしまう事態は全く想定されていなかった。我々は外国人留学生が卒業後、職を得ているか、英語教育の質と労働市場への関連性が充分か調べなければならない。
デンマークへの学生流入は、2013年2月に欧州司法裁判所が、「migrant workers」の身分を持つのであれば、EU/EEAからの市民はSUを受ける権利があると判断を下したことによる。これは事実上、学生らは、週に最低10~12時間の労働をすれば正規学生として登録されることを意味する。この決定により、判決翌年の2014年には東欧からの学生が急増した。
この司法決定の裏には当時の国会での政党合意があり、EU/EEAからの移民労働者への支払いが上限を超えた場合、この合意が改正され得ることになっている。Tørnæs大臣は2016年の上半期にこれを超えることを懸念している。合意額は、SU受給者が5,500人相当いる場合、400万デンマーククローネ(約6,200万円)となっている。

 

※1:EEA(European Economic Area)
欧州経済共同体(EEC)と欧州自由貿易連合(EFTA)にまたがる経済領域。両者は、1972年に自由貿易協定を締結し、さらに1994年1月には、双方にまたがる広範な共同市場を目指す欧州経済領域(EEA)を発足させた。
※2:SU(State Educational Grant and Loan Scheme)
デンマーク人学生かEU/EEA圏内からの学生であれば社会的身分に関わらず教育を受けるための公的支援が受けられる制度。主なプログラムとして、①18歳以上で、普通高校か専門高校に通う者、もしくは専門教育訓練プログラムの受講者を対象としたものと、②高等教育機関への入学者を対象としたものの2つがある。

 

【出典】
University World News:Bid to stem rise in student loans for migrant workers

 

【参考】
Uddannelses og forskningsminister:State Educational Grant and Loan Scheme (SU)
外務省:EU関連用語集

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