【ニュース・デンマーク】学位取得期間の短縮化、順調に進む

デンマークは修業年数以内に学位を取得しない学生数を減らす努力を続けており、学位取得までの平均期間は過去10年間でかなり短くなっている。
2006年は、学士と修士の取得に平均で6.43年がかかっていたが、2013年には5.88年まで短縮された。修業年限内で卒業する割合も、2000年の23.6%から2013年には26.4%に上昇している。最も大きな変化としては、学位取得に2年以上の遅れが生じている学生の割合が、2000年の26.3%から2013年に12.4%と半減した。
デンマーク学長会議では次のような報告がされている。「修業年限内に卒業しない学生が焦点となっている。事実、政治家も修業年限内に卒業することを重要視し、修業年限内に卒業する学生の割合に基づいて2016年の予算7億7700万デンマーククローネ(約118億円)を各大学に配分している。」
“Who are the delayed student?”と冠されたその報告では、2013年のデンマーク内の全ての修士課程学生のデータを元に算出結果が出されている。卒業の遅れには多くの要因があり、以下の分析結果が示された。

  • 女性の方が男性より、卒業に時間がかかっている。2年以上の遅れに関しては男女差はほとんど見られないが、修業年限内に卒業する割合は男性30.4%、女性23.4%となっている。
  • デンマークの両親を持つ人の学生は、移民の両親を持つ学生より早く卒業している。
  • 教育を受けた期間が短かった親を持つ学生の長期留年率は低い。反対に、教育を受けた期間が長かった親を持つ学生の長期留年率が高い。
  • 人文学専攻の学生が、卒業まで最も時間がかかり、技術分野を専攻する学生は最も期間が短い。

長期に教育を受けてきた親を持つ学生は、高等教育で優秀な成績を修めるということがよく報告されているので、高学歴の親を持つ学生はよく勉強すると考えられていたかもしれない。しかし、データの裏付けはないようだ。高学歴の親を持つ学生は、卒業後の就業を有利にするため、あえて大学に長く留まっていることが理由として考えられる。なお、同報告では大学間でこれらの結果に大きく差があることが明らかになった。
大学入学開始年齢と卒業の遅れにも関連性がある。2年以上遅れている学生は、あまり遅れがない者に比べ入学年齢がずっと高い。その逆に、修業年限内に卒業する学生も、2年未満の遅れで修了する者に比べて入学年齢が高いことがわかった。
デンマーク学長会議は、様々な原因が学生が学位取得期間に影響を与えていると結論付け、原因の一部は家族の病気や死など、学生自身でコントロールできないものがあるとしている。
学位取得にかかる期間は、Ulla Tørnæs高等教育科学大臣が大学改革のために取り組んでいる問題の一つである。大臣は、卒業した修士・学士の人数を元に配分されている現在のやり方から、労働力としての需要が高い分野の卒業生を多く輩出している大学に多くの予算を配分する方法への転換を模索している。
しかし、Lykke Friikコペンハーゲン大学副学長は、「特定の職種への需要に結び付けられた配分は後ろ向きな発想である。既に政治家らは人文学への予算縮小、募集人員を削減させている。」として、この流れを止めるよう政治家に警鐘を鳴らしている。

 

【出典】
University World News:Steady progress in speeding up degree completion time

地域 北欧・バルト三国
スウェーデン、その他の国・地域
取組レベル 政府レベルでの取組、大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 教育
統計、データ 統計・データ