デンマーク経済諮問会議は、学生への経済的支援に関して、給付型奨学金でなく貸与型奨学金により多くの割合が費やされるべきであり、また、経済的な見通しにおいて、修士課程の学生に対して導入されるべきであることを提案した。
- 経済的支援の総支出額は、学生数の増加及び提供する支援レベルの上昇により、大幅に増額している。
- 他の北欧諸国と比較して、同国の奨学金の型は、給付型が大部分を占めており、貸与型がわずかにすぎないという特徴がある。
- 現在、高等教育への全面的な支援は、増税の影響を考慮して、正当な額を超えている。その支援レベルは、教育関連の外部性によって正当とされ得るレベルよりもおそらく高い。
- 本報告書における国際調査と分析によると、給付型から貸与型への移行により、学生の受入れや卒業生の数に及ぼす影響はほとんどない。
- 本改革の実施は修士レベルの学生に対して行われるべきである。
本提案に対しては様々な反応がある。
デンマーク全国学生連盟会長のSana Mahin Doost氏は、「我々は貸与型奨学金制度に移行するという目的のため、修士課程の学生の奨学金の給付を削減又は廃止することは、深刻な問題だと考えている。社会的に裕福でない学生は、融資を得たがらないというデータを考慮すると、この制度は社会的に負の影響をもたらすことが明らかである。制度の移行が行われるとすれば、このような学生の修士課程への進学を妨げることに、あるいは彼らが高等教育を受けること自体を断念させることにつながりかねない。さらに、これらの提案は教育の機会均等と社会的流動性を妨げるものである。」と言及した。
DEAの所長であるStina Vrang Elias氏は、SUは政府の高等教育予算の相当な額を占めており、その価値の有無について究明する必要があると語った。
10,000の企業を代表するデンマーク産業連盟もこの提案を支持し、今日の学生の給付の割合は1970年代より2.5倍高いことを言及した。また、1970年代半ば以降、2017年時点で学生数は倍増した一方で、SUへの支出額は200億デンマーククローネ(3,500億円**)と、14倍にまで達した。
本改革の実施にはかなりの政治的リスクが伴うことが予想され、具体的な法案はまだ議会に提出されていない。
* SU(Statens Uddannelsesstøtte/State Educational Grant and Loan Scheme)
学生が社会的身分に関わらず教育を受けることができるよう生活に必要な費用を支援する制度。主なプログラムとして、①18歳以上で、普通高校か専門高校に通う者、もしくは専門教育訓練プログラムの受講者を対象としたものと、②高等教育機関への入学者を対象としたものの2つがある。
** 円表記はJSPSストックホルム研究連絡センターが追記
2018年6月1日
【出典】
University World News:Expert group proposes higher student loans, lower grants