【ニュース・タイ】国の競争力を脅かす科学者の不足

高等教育局の発表した最近のデータでは、高校を卒業した学生のうち39%が科学分野専攻を選択し、その他は、社会科学を選択していることが明らかになった。さらに、大学を卒業した段階では、科学分野の専攻は20%になっている。この結果に対して、タイ科学技術・イノベーション政策局(National Science Technology and Innovation Policy Office (STI))は、将来、科学技術分野の人材が不足することを懸念している。

Kitipong Promwong  STI副事務局長は、タイの学生は、科学技術分野の職業に魅力を感じておらず、タイの国際競争力にとって、このことが深刻な問題であると懸念している。科学技術分野を専攻した学生の38%が他の分野で就職しており、そのうちの25パーセントが、娯楽及やマーケティング分野での職業を選択している。STIは、現在、科学技術省の所管する奨学金の受給者が、民間企業での2年間の就業を認めるために規定を見直そうとしている。これまでは、奨学金の受給者は、政府機関で一定期間勤務する前に、民間企業で働くことができなかったが、今回、規定が改定されれば、これが可能となる。この改定の目的は、民間企業に所属する研究者を増やし、企業の競争力を上げることである。タイの研究者8万人のうち、6万人の研究者は大学、6000人は公的機関に所属しており、民間企業に所属するのはわずか30%にすぎない。Kitipong STI副事務局長は、この改定で、教育制度改革が実行されるまでの間、しばらくは研究者不足を和らげることができると期待している。

1990年から2012年の間、合計で3,765人の学生が科学技術省から奨学金を受給しており、2,193人の卒業生がいる。彼らのほとんどが、バイオテクノロジー、環境学、材料工学、エネルギー工学、電子工学を専攻している。民間企業は、国の機関の給与にさらに上乗せして支給することができる。STIによると、4年間の勤務経験のある博士号取得者は、国の研究機関や大学では、平均4万バーツの給与であるが、民間の大企業では、66,000バーツである。Kitipong STI副事務局長は、バンコクポストに対して、今回の改定案を、新政府が組織され次第、提出すると語った。

調査結果では、学生の科学技術に対する関心が下がっており、これの打開策として、STIは、タイの科学技術、工学、数学の教育の質を向上させるために、最近、アメリカ国立科学財団(National Science Foundation)と連携を進めている。タイの教育制度は、丸暗記が主流であり、これを改め、クリティカル・シンキングを行うことを推奨しなければならないとKitipong STI副事務局長は語った。

タイの研究開発費は、2010年と比較して、2011年には2倍となり、210億バーツとなった。民間部門の研究開発費の投資額は、タイ全体の51%を占めており、STIは、2016年までに70%まで引き上げることを目指している。ASEAN経済共同体の発足が近づく中、Pichet Durongkaveroj  STI事務局長は、ASEAN域内での研究者の養成における連携を加速し、自国の研究者を囲わないよう呼びかけている。

(2014年4月15日 Bangkok Post紙)

地域 アジア・オセアニア
タイ
取組レベル 政府レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 研究
人材育成 学生の就職、教員の養成・確保
統計、データ 統計・データ