【ニュース・タイ】マヒドン大学、ガンとの闘いを後押しする覚書を締結 研究のため、タイ国立がんセンターとがん組織を共有

 
2019年12月4日、マヒドン大学(Mahidol University)とタイ国立がんセンター(National Cancer Institute of Thailand :NCIT)は、同大学のバイオバンクのがん患者の組織および血液サンプルの収集と利用協力に関する覚書を締結した。
 
バイオバンクは研究で使用するがん組織と血液サンプルを保存する最新保管施設で、マヒドン大学ラマティボディ病院医学部(Faculty of Medicine at the university’s Ramathibodi Hospital)内に設置されている。
 
Piyamitr Sritara医学部長は記者会見で、両者の協力は、がん治療における精密医療を後押しするとし、以下のように述べた。

「精密医療では、患者の病気を遺伝子および分子レベルで詳細に分析し、個々の必要に応じたテーラーメード医療を提案する。
 
可能な限り多くのデータを集めるために2012年に設立されたラマティボディ包括腫瘍バイオバンク(Ramathibodi Comprehensive Tumor Biobank)は、がん組織および血液サンプルをマイナス80度に保たれた環境で保管できる施設である。研究者はこれらのサンプルを使用してがん細胞がどのように成長するかを研究し、腫瘍マーカーと治療法を探求することができる。現在、2,000人のがん患者の組織と血液サンプルがこのバイオバンクに保管されているが、NCITとの協力によりさらに多くのサンプルを収集することができると期待している。
 
ほとんどの組織サンプルは、乳がん、大腸がん、肺がんの患者から採取されている。すべてのサンプルは患者の同意を得て保管され、研究目的の要件を満たす必要がある。マヒドン大学は、あまり研究が進んでいない、子どもの視神経がんの研究にも力を入れる予定である。
 
NCITの助けを借り、より多くのサンプルを入手することで、がんに関するより多くのデータを収集したい。精密医療はすべてのケースに適用できるわけではないが、さらなる研究開発への非常に良いステップとなる。さらに、マヒドン大学はPhramongkutklao病院とRajavithi病院との協力も強化する計画である。」

 
NCITのWeerawut Imsamran所長は会見で、「精密医療は治療の質および患者の回復の可能性を高める」と述べた。
 
現在、約10の国営病院が、がん患者に精密医療を提供しているが、NCITはこの治療法を早急に、より多く提供したいと考えている。
 
タイ保健省医療サービス局(Public Health Ministry’s Department of Medical Services)によると、タイでは1998年以降に記録された122,757のがん患者のうち、73,000人が死亡している。
 
がんはタイで一番致死率が高く、また最も治療費がかかる疾患である。保健省によると、がん以外の致死率が高い疾患としては、冠状動脈性心疾患、高血圧および糖尿病などがある。
 
2019年12月5日
 
Bangkok Post:Mahidol inks deal to boost cancer fight
 

地域 アジア・オセアニア
タイ
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 研究
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