【ニュース・タイ】チュラ大 トランスジェンダーコミュニティのためにジェンダーヘルスクリニックを開設(1)

 
タイ赤十字社のチュラロンコン王記念病院は、チュラロンコン大学医学部と共同でジェンダーヘルスクリニックを開設した。このクリニックは、
トランスジェンダーの人々が、ホルモン療法の乱用が命に関わることがあることに留意しながら、健康問題について相談できる安全な空間である。

 
トランスジェンダーの人々の権利拡大が進む現代社会ではあるが、彼らの肉体的精神的健康の核心については、限られた範囲でしか議論されていない。
自分の体の中が「他の誰か」であるという感覚は、特定グループの関心事でしかない。現在の性別とは一致しない生まれつきの性同一性や、男性の
体の中にいる女性、あるいはその逆といったいくつかの話題は、すべて個人のアイデンティティの問題として片付けられ、一般の人々の関心を引く
ものではないため、トランスジェンダーの人々専用の健康クリニックは、現代社会において非常に重要である。

 
こうした問題から、チュラロンコン王記念病院は、今日のタイ社会におけるトランスジェンダーの人々の重要性を明確に示し、総合ヘルスクリニック
を提供するために、チュラロンコン 大学医学部産婦人科ジェンダー医学・更年期障害学科の教員の協力を得て「ジェンダーヘルスクリニック」を
設立した。さらに、このジェンダーヘルスクリニックは、医師、医学生、関心のある医療関係者のための専門的な学習センターでもあり、トランス
ジェンダーヘルスエクセレンスセンター (CETH)と連携した、トランスジェンダーの健康に関する国際的な研究センターでもある。

 
「ジェンダーヘルスクリニックの設立は、これまで専門のクリニックがなかったトランスジェンダーの患者さんに特化した医療サービスを提供すること
を目的としている。ホルモン剤を使ったり、自分でホルモン剤を注射したり、避妊薬を飲んだりする患者さんは、行き当たりばったりだったり、友達が
していることを間違ってやっていたりする場合がある。」と、ジェンダーヘルスクリニック創設者のチュラロンコン大学医学部産婦人科ジェンダー
医学・ 更年期障害学科長の Krasian Panyakhamlert 准教授は、性別適合手術や統合思春期クリニックなど様々な分野で経験と専門性を持つ医学部
の教授陣の指導のもと、安全で標準的な医療を提供するクリニックの背景について詳しく説明してくれた。
 

多様なニーズに応える個別サービス
 
トランスジェンダーの人々には、異なる多様なニーズがある。そのため、コンサルティングを行う医師は、個別に対応したサービスの提供に注力
しなければならない。

 
医学部産婦人科ジェンダー医学・更年期障害特別講師、ジェンダーヘルスクリニック専門医の医学博士Thanapob Bampenkiatkul 医師は「患者さん
が自分の体を変えて心地よく過ごしたいと思うかどうかで相談内容が変わってくる。私たちは、なりたい自分になるために、最も安全で適切な方法
を伝えている。

 
ホルモン補充療法や性別適合手術を受けなくても、女装や男装、代名詞の使用、乳房の圧迫や豊胸など、希望する性別に合わせた行動をするだけで
満足し、幸せになれる人もいます。中には、性転換手術を受けずにホルモン剤をもらうだけで満足できる人もいるでしょう。性転換手術を受けた
患者さんの中でも、満足度はそれぞれ違う
のです。」と説明する。

 

ホルモン補充の危険性

 
性転換のためのホルモン補充療法は、トランスジェンダーの人々が希望する性別に体格を変えるためによく使われる方法である。多くの人が医師
に相談することなく、ホルモン補充療法を行っているのは、特に避妊薬の危険性を知らないためである。誤った種類や量を使用すると、トランス
ジェンダーの最も一般的な死因の1つである心臓血管系に悪影響を及ぼす可能性がある。

 
ジェンダーヘルスクリニック専門医で、医学部産婦人科ジェンダー医学・更年期障害学科講師の Amarin Suwan 医学博士は「人の体はそれぞれ違う
ので、体に合った薬や用量が必要である。経口投与の錠剤が適している人もいれば、外用薬が適している人もいて、同じ薬でも用量が違う場合も
あるため、医師が最適なものを勧めることになる。」 との見解を述べている。

 
最も重要なのは、ホルモン補充療法はすべての人に適しているわけではないということである。乳がん、心筋梗塞、冠動脈疾患(CAD)、凝固障害、
真性多血症、肝臓や脂質のプロファイルに異常がある患者などは、ホルモン療法を禁じられている。

 

地域 アジア・オセアニア
タイ
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
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