【ニュース・タイ】タイ国内の3 大学におけるASEAN経済共同体に向けた先導的な取り組み

マヒドン大学やカセサート大学等の高等教育機関は、2015年のASEAN経済共同体発足に向けて、学生に高い英語力とASEANに関する知識を習得させることに力を注いでいる。
マヒドン大学、カセサート大学、タマサート大学の、ASEAN経済共同体に向けた先導的な取り組みについてそれぞれの大学の学長及び副学長のコメントは以下の通り。

マヒドン大学:
マヒドン大学Rachata Rachatanawin学長は先週の学内の「ASEANのためのタイの高等教育」に関する年次会合で次の通り述べた。

大学は、新しい世代に対して、ASEAN憲章の根幹となる理念について教えなければならない。マヒドン大学では、ASEAN経済共同体に向けて長い期間をかけて入念に準備を行ってきた。若いリーダーは、今後、多種多様な文化的、宗教的背景を持つ人々が共存する社会を構築していくために重要な役割を担うことになるだろう。また、効果的な資源の利用や、ASEAN地域に繁栄と政治的な安定と幸福をもたらす為に統合を前進させることも期待されている。

ASEANに関する教材は、全ての科目の中に包含されており、大学のカリキュラムはASEANコミュニティのニーズに対応したものになっている。学生の取得する単位のうち30単位ほどがASEANに関連した教科である。

また、マヒドン大学は、英語力の向上と多文化理解についての授業にも力を入れており、国際医学コース、国際歯学コース、および、医学修士コースを設置している。マヒドン大学の運営者も他のASEAN域内9か国の大学と緊密な連携をとり、学生や教員の交流を促進している。

昨年は、マヒドン大学は、ASEAN域内の学生250人、ASEAN域外の学生50人に対して奨学金を授与した。マヒドン大学は、1学期間、授業を行う客員講師に対しても助成金を提供している。マヒドン大学は、奨学金のスポンサーを確保することにも成功しており、例えば、現在、ノルウェー政府からの奨学金を得て、60人ミャンマー人の大学院生がマヒドン大学で学んでいる。

マヒドン大学の環境は、ASEAN経済統合のための準備に向けて前進している。マヒドン大学の戦略は、学生がASEAN経済統合に備えるための教育を向上させていくことである。
学生にASEAN経済統合や労働市場に備えさせることに加えて、大学は、学生が行動規範や、社会責任、チームワーク、倫理観といったことも身につけているかどうかもケアしていかなければならない。マヒドン大学を含む、複数の大学は、現在、学生と卒業生に対して、反汚職運動を展開している。

カセサート大学:
カセサート大学の学務担当副学長であるSiree Chaiseri氏はASEAN経済統合について以下の通り述べた。

ASEAN経済統合は、食糧安全保障と食の安全をもたらすだろう。タイの大学は、特に医療と農業の分野における研修を通してASEANの政府機関とこれまで連携を図ってきた。
チュラロンコン大学とマヒドン大学が、医療に関する情報を提供しているのに対し、カセサート大学は、農業開発および農業科学、また、食品科学の分野についての情報を提供している。タイの若者は、ASEAN経済統合に対してすでに敏感になっているが、今後は、経済統合に起因した様々な変化についても深く理解しなければならない。例えば、タイの大学は、ASEAN域内の人の流動性を促進するために、アカデミックカレンダーをほかのASEANの国々に合わせなければならなかった。学生も教員も、このような変化を最大限に活かし、他の地域や国の人々の生活様式や考え方を学ぶ機会とすることができるだろう。

カセサート大学では、ASEAN諸国へ留学するための奨学金を学生に提供しているが、申請者はゼロだった。一方、韓国、日本、ヨーロッパへの留学の奨学金には多くの申請があった。そのため、カセサート大学は、インドネシアの大学での食品科学を学ぶための奨学金の申請者を、大学側で探し出さなければならなかった。奨学金の受給者は、インドネシアの大学へ留学した結果、食品科学に関する知識とインドネシアでのビジネスの契約を多数得て帰国し、考え方が変わった。

このインドネシア留学の例が示す通り、学生は、自身の考え方を変え、大学は、学生に将来を見据えて、国を前進させることを教えなければならない。学生は、自分たちがASEAN地域を動かす原動力となっていくことを自覚しなければならない。

カセサート大学は、今後も、ASEAN諸国へ留学する学生に対して、奨学金を支援していく。

タマサート大学:
タマサート大学Somkid Lertpaitoon学長は、ASEAN経済統合について以下の通り述べた。

全ての大学がすでにASEAN経済統合に向けて準備を整えている。その一方で、政府は、ASEAN経済統統合に向けた準備をほとんど行ってこなかった。Somkid Lertpaitoon学長が同大学の指揮を取り始めた3年前から、教育大臣が幾度も変わり、それに伴い、方針も変わった。そして、どの大臣も、ASEAN問題について取り組んでこなかった。高等教育機関は、国の重要な役割を担っていることを認識しており、ASEAN問題にこれまで真剣に取り組んできた。

ASEAN問題には、英語および他の外国語、ASEANの組織、ASEAN諸国の文化、そして、タイの高等教育の開発という4つの主な課題がある。

タマサート大学では、すべての学部に、少なくとも二人の英語のネイティブスピーカーを雇用することを求めている。さらに、全ての学部において、少なくとも一つの国際プログラムを設置することも求めている。少なくとも、いくつかの教科で、英語で授業を行わなければならない。

タマサート大学は、「ASEANの経済」等の、ASEANに関連する内容をカリキュラムの中に盛り込んでいる。タイの高等教育機関は、潜在力があり、ASEAN経済統合によって、知識の循環が促されることが期待される。

(2014年3月17日 Nation紙)

地域 アジア・オセアニア
タイ
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 研究、教育
国際交流 学生交流、国際化