トムソン・ロイター社が行った調査によると、ASEANの研究論文のシェアは2006年以降で2倍近くになり、特許活動は過去3年間で40%以上拡大しており、これに伴いASEANは研究・イノベーション活動のハブになりつつある。
ASEAN10ヶ国は、トムソン・ロイター社のオンライン学術データベースサービス上で索引に載った世界の学術文献のシェアが2006年の1.37%から昨年は2.43%になり、約2倍となった。
世界的にはおおよそ50%増となっているが、これと比較するとASEANの全研究論文発表数は過去10年で約3倍となった。
しかしながら、世界の研究論文におけるタイの研究論文発表数とシェアは、「緩やかに」増加しており、昨年索引に載った論文は72,000件で、これは同データベースの0.48%のシェアとなっている。
それにもかかわらず、研究の関連引用影響力あるいは研究の質によって示される影響力という点では、タイは2006年以降世界平均に近いところを追従しており、過去2年間は上昇傾向にある。
比較すると、同報告書内でマレーシアの研究論文発表数は、2006年の1,900件から2015年の11,000件以上と過去10年にわたり約500%の急激な増加を示している。
一方、ブルネイ、ベトナムも2006年から2015年にかけ少なくとも300%増と、研究論文発表数が急激に増加している。
「ASEAN-研究・イノベーションハブの出現」と題し、トムソン・ロイター社が行った調査では、各国の研究及び特許に関する能力に応じてASEANを4つのグループに分類している。
シンガポールは唯一第1カテゴリーに、マレーシアとタイは第2カテゴリー、ベトナム、インドネシア、フィリピンは第3カテゴリー、そして、ラオス、カンボジア、ブルネイは第4カテゴリーに分類されている。
マレーシアは「積極的」
「タイの評価が思わしくないというより、タイと比較してマレーシアは自国の研究・イノベーション活動を積極的に推進している。」と、トムソン・ロイター社ソリューション・コンサルタントのSee Diu Seng氏は昨日バンコクで行われたメディアインタビューで述べた。
「高被引用文献(世界的な特定分野で上位1%)」に登録している研究の占有率に関して、昨年のリストにタイは初めて3件掲載され、そのうちの2件はタイ人研究者によるものであったと、See氏は指摘した。
一方、マレーシアは昨年3件掲載された。
「昨年の掲載はタイ初のことで、それまで同国がそのリストに掲載されることはなかった。」と同氏は述べた。
トムソン・ロイター社の上級特許分析官であるBob Stembridge氏は「ASEANの多くの国々が同じように医療や化学技術に重点を置いている中、タイだけは工学技術をより重視している。」
「Qualcom社(アメリカの移動体通信の通信技術および半導体の設計開発を行う企業)はASEAN3ヶ国で最も多くの特許を有しているが、ASEANはハイテクをあまり重視していない。」と述べた。
タイが研究・イノベーション分野で向上するために、大学と産業セクターとがさらに連携するよう取り組み、また関連団体が商業化に成功したことに対し報酬を与えたアメリカの成功から学ぶべきである、とStembridge氏は提案した。
「優れたアイデアをお金に換えるというイノベーションの観点では、産業と大学が協同することが最良の方法である。」と同氏は述べた。
「研究はグローバルなものであり、地域的な競争ではない。それは、世界で競うために人材プールと共同ネットワークをグローバル化する必要があるからである。」とSee氏は述べた。
同氏は「マレーシアがタイよりも多くの外国研究者や学生を誘致できているのは、言語がその理由のひとつかもしれない。」とも述べ、「マレーシアはタイよりも資金が豊富なため、同国が国際的人材を誘致するためのインセンティブを策定することを助長している。そうは言っても、原油価格の急落に伴い、このところマレーシアの予算は削減されている。」と加えた。
(2016年8月27日 The Nation紙)