【ニュース・タイ】タイの医療機器エコシステムを強化

 
コロナウイルスは今後何年にもわたり世界的な脅威であり続けることが予想され、ヘルスケア技術が急速に進歩する中、タイは、競争力のある産業、
ヘルスケアのサプライチェーンと R&D リソースの向上という戦略的優位性を活かし、同国の医療機器技術を世界市場の最前線に 押し上げようと
している。

 
タイの医療機器産業の競争力を高めることは、持続可能なヘルスケアシステムと経済全体の発展を促進する上でタイの政策の重要な要素である。
この政策は、生命科学における新たな発見と医療機器イノベーションの開発と活用を促進することで、自国民に提供する国民皆保険制度のみならず、
医療観光地としての競争力を高めるという国の目標を支援するものである。

 
高等教育科学研究イノベーション省 *1) は、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域最大の医療機器輸出国としての地位を確立したことで、タイは2019年
から2020年にかけ、医療機器産業が8~10%拡大したと推定している。その一方で、医療機器の現地生産は、2025年までに世界 有数の医療ハブ
となることを目指し、ヘルスケアエコシステムの開発を推進するという方針のもと、公的部門による強力な支援と、高齢化に伴う病気と新しい病気
の治療に対する需要の高まりに加え、タイでのヘルスケアサービスを求める観光客の増加といった様々な要因に後押しされてきた。

 
パンデミック前、タイには年間平均300万人の外国人医療観光客が訪れていた。同国の医療 観光産業の成功を支えているのは、2019年に国際医療
施設認定合同機構(JCI)の認定を取得 した69の病院で、これは ASEAN では最多、アジアでも中国に次いで2番目に多い数である。

 
現在、タイには約1500社の医療機器メーカーが進出しており、プレミアムグレードの原材料を費用対効果の高い方法で調達することができる、タイ
の包括的な産業サプライチェーンの恩恵を受けている。クルンシー・リサーチ・インテリジェンス社 *2) の調査によると、タイの産業サプライチェーン
全体の競争力は、世界64カ国中35位であり、コークスと石油精製品、ゴムとプラスチックは9位、食品・飲料とヘルスケアは11位となっている。

 
日本貿易振興機構(JETRO)が2019年下半期に発表した調査結果 *3) では、在タイ日系企業は、製造活動に使用する部品と材料の61%を ASEAN
内から調達する予定で、うち55%をタイから調達するとしている。

 
タイの製造基準の全体的な競争力は、オートメーションやロボティクス、自動車、バイオテクノロジー、電子機器など多くの産業で地域をリードする
地位に立っていることからもわかる。こうした成功は、タイの高い職人技の証であり、医療機器の製造および医療工学で必要とされる品質管理に
欠かせないものである。

 
イノベーションエコシステムの促進

 
ヘルスケア分野の発展に関する国の政策は、2つの主要分野を重視している。イノベーションと品質試験施設への投資を通じ技術開発を促進する
ことで、国内メーカーが製品を試験できるようにする一方で、サプライチェーンの技術力を高めるため外国からの投資を促進していく。

 
タイ政府は、国内のイノベーターとメーカーの R&D を国際基準に高めるための支援策の一つとして、医療機器を含む多くの産業分野において、
タイ国内で活動する企業のイノベーションを登録する国家イノベーションリストを作成した。登録された製品は、国立病院での調達が可能となり、
タイでは、2025年までに国立病院が調達する医療機器および医薬品の約30%を現地生産にすることを目標としている。2015年にリストが作成
された後、現在257の医療機器が国家イノベーションリストに登録されており、その内訳は、医薬品が215、医療機器が26、 医療用消耗品が16
となっている。

 
医療分野の研究のキャパシティビルディングを向上させるため、タイは、公共部門、民間部門、学術機関の連携を強化し、医療研究者の供給を促進
している。研究・イノベーション施設に ついては、タイ国内のイノベーションを促進するため、医療キャンパス、および東部地域に位置するタイ
のパイロットハイテク経済特区、東部経済回廊(EEC)へのローカルスタンダードの試験センターと研究室の建設に重点的に取り組んでいる。

 
ヘルスケア投資に対する BOI の奨励措置

 
タイ投資委員会は、国内医療機器産業の技術向上のために外国投資を誘致するという方針のもと、ヘルスケアと医療産業のエコシステム全体の発展
を促進することを目的とした非課税 および課税奨励措置を導入している。BOI(投資委員会)の支援は、医療機器と医薬品の製造から、医療施設
と臨床試験の開発までを対象としており、R&D と生産性の向上に対しても奨励措置が設けられている。*4)

 
医療機器の製造は優先的な活動と考えられていることから、BOI では、高リスクまたは高度先端技術に分類される医療機器の製造については8年間、
その他の医療機器については5年間、布や繊維で作られた医療機器については3年間の法人税免除を付与している。

 
タイでの医薬品開発業務受託機関(CRO)と臨床研究センター(CRC)の運営を促進するため、BOI はタイ人研究者との共同研究と雇用を行って
いる組織に対し8年間の法人税免除も行っている。

 
有効成分の製造業者に対して、BOI は標的医療に使用される成分については8年間、従来の標的医療に使用される成分については5年間の法人税の免除
を提供している。一方、卓越した医療センターの運営者は8年間の法人税免除を受けることができる。

 
生命科学研究の発展を促進するため、BOI は EEC のブラパー大学で行われているゲノミクス・タイランド・プロジェクトに参加している組織に追加
の奨励措置を講じている。対象となる企業は、従来の基本5~8年間の法人税免除に加え、2年間はさらに50%の法人税免除を受けることができる。

 
タイがイノベーション主導の経済社会を目指していることから、BOI は最近、企業が現地での R&D への投資を増やすよう、税制優遇措置の強化を発表
した。例えば、事業開始後3年間に2億バーツまたは総売上高の1%以上を投資または支出したプロジェクトに対しては、上限なしで1年間の法人税の
追加免除を受けることができ、最大13年間の長期的な減税措置を提供している。

 
*1) (ร่าง) แผนงานขับเคลื่อน BCG สาขาเครื่องมือแพทย์

 
*2) Thai Industry: How Competitive is Thailand on the World Stage?

 
*3) Survey of Business Sentiment on Japanese Corporations in Thailand for the 2nd half of 2019

 
*4) Opportunities and Investment Support Measures for Medical Industries in Thailand

 


Bangkok Post: STRENGTHENING THAILAND’S ECOSYSTEM FOR MEDICAL DEVICES


地域 アジア・オセアニア
タイ
取組レベル 政府レベルでの取組
社会との交流、産学官連携 地域連携、社会貢献、産学官連携