【ニュース・タイ】サイエンスパーク活用で研究開発力の強化

ASEAN諸国が、市場を統合し、国際的な競争力を上げようと努力している一方で、タイは、研究開発に力を入れ、シンガポールやマレーシアといった域内の競合国に追いつこうとしている。民間部門の研究開発への投資を後押しするために、タイ政府は、1989年にタイサイエンスパークの設立を認可し、2002年にパトゥムタニ県で稼働を開始した。タイ国立科学技術開発庁(The National Science and Technology Development Agency (NSTDA))は、その施設を、研究者が専門知識を共有し、新たなテクノロジーを共に創出する、官民参画型の研究コミュニティと位置づけている。

現在、タイ国内の研究開発費のおよそ10から12%がタイサイエンスパークで使われている。アジア諸国の中で、シンガポール、マレーシア、中国、日本は研究開発において遥かに先を行っているが、タイがこれらの国に追いつく望みはある。

「タイサイエンスパークは、施設を拡大し、第2フェーズが今年完成した。タイの研究開発は、これまでよりもずっと速いペースで活発になっていくだろう」とNSTDAの副理事長も兼任するJanekrishna Kanatharanaタイサイエンスパーク部長は述べた。

4つの研究機関に加えて、70近い企業、3つの大学と1つの医科大学がサイエンスパークに拠点を置き、活動している。この施設は、また、NSTDAの本部も入っており、1,600人のフルタイムの研究者を含む2,700人の職員が働いている。サイエンスパークで活動する研究者の専門分野は多岐にわたっており、バイオテクノロジー、情報科学、金属および材料工学、ナノテクノロジー分野なども含まれている。

国内外の企業が、研究開発のためにタイサイエンスパークの第1フェーズを活用してきた。その中には、タイの最も大きな複合企業であるサイアムセメントグループ(SCG)が建築資材の研究開発拠点を設置している。他にも、農業メーカーのBetagro Group、PTT Phenol、砂糖メーカーのMitr Phol Group、国外の企業では大成工業や住友ゴム(タイランド)が含まる。

Janekrishnaタイサイエンスパーク部長は、タイは研究開発に着手することが少し他国よりも遅かったと認識している。サイエンスパークの構想は、1989年に始まったものの、クーデターや官僚主義、また、政府の頻繁な交代、そして1997年の金融危機により、設置が止まってしまっていた。2002年になってやっと稼働した。

その後10年以上がたったが、タイの研究開発への投資はいまだに非常に低いままである。研究開発への投資は、2012年には、世界の平均がGDPの2%であるのに対して、タイは、0.4%にすぎなかった。政府は、これを2016年までに1%に上げようとしている。また、多くの国で研究開発分野は民間部門が牽引しているのに対して、タイでは、政府や国の機関が投資額のうちの60%を占めている。

シンガポールでは、シンガポール国立研究基金によると、研究開発費は、1991年には、7億6千万シンガポールドル、すなわち、GDPの1%であったが、2009年には、60億シンガポールドル、すなわち、GDPの2.3%に増加した。シンガポール通商産業省は、2015年までに、研究開発費がGDPの3.5%にまで達すると予想している。シンガポール政府だけでも、2011年から2015年の間に研究開発、起業のための予算に米ドルで合計161億ドルを配分している。

中国では、世界銀行の推定によると、2012年には、GDPの1.98%を研究開発費として支出しており、これは欧州連合の1.96%をわずかに上回っている。中国財政部によると、科学技術開発費は、2006年には1690億元であったが、2012年には、5600億元まで増加している。

台湾は、長い間、他国で開発された製品の組み立てを請け負う国であったが、その後、世界的にも競争力のあるハイテクノロジーブランドを生み出してきた。政府が発表した最新のデータによると、研究開発費は、2012年には、144億米ドル、すなわち、GDPの3.06%であった。このうち、67%がテクノロジー開発費に当てられている。

隣国、マレーシアでは、研究開発費は、これまで非常に小さな額であったが、近年、その増加に務めている。マレーシア科学技術情報センターによると、2011年には、研究開発費の総額は、942億リンギットすなわち、GDPの1.07%であった。これは、2000年の16.7億リンギットから5倍の増額である。

Janekrishnaサイエンスパーク部長は、サイエンスパークの存在は、その国の経済発展を加速させ、投資を呼び込むと考えている。中国は、その典型的な例であり、以前は、他国で開発されたブランドの製造を請け負うだけであったが、今では、技術を発展させ、自国のブランドを立ち上げることができるようになった。中国には、今日では、サイエンスパークが80箇所もある。

また、ASEAN域内のサイエンスパークの建設状況にも言及し、以下のとおり述べている「ASEAN経済共同体は、ASEAN諸国がより研究開発に焦点を当てるようになるよいきっかけである。インドネシアは、現在、サイエンスパークの設立の過程にあり、ベトナムにはハノイとホーチミンの2箇所にすでに設置されている。ASEAN域内では、シンガポールは、研究開発分野で最も進歩しており、これに続くのがマレーシアとタイである。他の2国に比べるとタイサイエンスパークの歴史は非常に浅いが、設備を向上させ、民間企業の研究実施を手助けする質の高い研究者がいる。」

タイサイエンスパークは現在、パトゥムタニ県一箇所であるが、チェンマイ、コンケン、ハジャイ、チョンブリにも建設予定である。Janekrishnaサイエンスパーク部長は、「サイエンスパークが、工業団地のように、タイ国内で、急激に広がることを期待している。今、グローバル市場で生き残るために、民間企業は研究開発を行わなければならない。」と述べた。

(2014年6月30日 Bangkok Post紙)

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