【ニュース・タイ】コミュニティへの貢献を目指す大学のプロジェクト

 
高齢者ケアは、高齢の市民に対する健康チェックやセルフケアのガイドラインを提供するだけでなく、高齢者が生活している環境の安全性や利便性
を向上
させるものでもある。

 
バンコク旧市街にある高齢者コミュニティ・プレンプートーンの会長 Apichan Wanla 氏(52歳)は、最近行われた景観の改修により、コミュニティ
内の段差が多い地面が、高齢者のメンバーが運動したり交流したりできる共有スペースになったことに感謝している。

 
地面は平らになり、むき出しになっていた巨大な木の根は、人がつまずかないように切り取り整えられた。また、この改修プロジェクトを監督
したチュラロンコン大学のチームは、高齢者のいる家庭に対し、事故を防ぐためにトイレや階段を調整するなど、高齢者がより安全に暮らせる
よう家を改善するためのアドバイスも行った。

 
学際的アプローチのプロジェクトとして 2018 年に設立された「チュラロンコン大学高齢化研究イノベーション・プラットフォーム」、通称「チュラ ARi」
のチームは、高齢者の生活の質を向上させるための計画を策定した。

 
Bang-on Sachat さん(78歳)は、高齢者がまだ社会から大切にされていることを知り、これからも社会に恩返しをしていきたいという気持ちが
さらに強くなった
と言う。今の彼女の願いは、全国各地で同じような高齢者ケアプロジェクトが行われることである。

 
他の多くの高齢者同様、Bang-on さんも高血圧でコレステロール値が高いが、ヘルシーで バランスのとれた食事をすることで、その問題を克服
しようとしている。レクリエーション活動としては、ほぼ毎日午後、地域の高齢者センターで友人らと歌を楽しんでいる。

 
チュラARi のスタッフは、定期的にコミュニティを訪れ、コミュニティの高齢者の基本的な 健康チェックを行っている。ディンデーン高齢者
コミュニティに住む Chiamchit Saplaima さん(82歳)は、保健サービスに感謝しており、チュラARiのスタッフがコミュニティに来てくれる
のをいつも嬉しく思っていると語った。

 
心臓病と共に生きていかなければならない Chiamchit さん。50年以上前にバンコクのバンタットトーン地区からディンデーンに移り住んできた
彼女は、子供たちが成長した今、友人との出会いの場でもあるコーヒー屋台を開き、忙しく元気に過ごしている。

 
チュラロンコン大学の連携健康科学部に勤務し、チュラ ARi チームのディンデーン・コミュニティ訪問に参加した Somnuke Gulsatitporn 准教授
によれば、彼の役割はコミュニティの高齢者の体格や加齢に伴う健康指標グラフの収集だという。

 
彼が収集したデータは、各メンバーの健康状態を測定するため、前年のデータと比較されて いるが、高齢者の52%が高血圧、19.5%が糖尿病で、
大気汚染や運動不足で肺活量が低下している人も多いという。

 
タイは急速に高齢化社会に突入しているが、高齢者をケアするための国家システムの開発は まだ進行中で、その進捗は遅いとチュラロンコン大学
人口研究学部講師の Vipan Prachuabmoh 教授は語る。

 
先日、高等教育科学研究イノベーション大臣の Anek Laothamatas 氏は、リタイアした人々に自信を持たせ、健康で幸せな生活を送る能力を高める
ための研究や活動を行うプロジェクトを開始することに同意した。

 


地域 アジア・オセアニア
タイ
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
社会との交流、産学官連携 社会貢献
レポート 海外センター