【ニュース・スウェーデン】高等教育の国際化に向けた戦略に係る調査結果を発表

 
2018年10月31日、スウェーデンにおける高等教育の国際化に向けた戦略を策定するため、政府の調査官に昨年任命されたAgneta Bladh氏は、Helene Hellmark Knutsson高等教育・研究担当大臣に調査結果を報告し、その後、ウプサラ大学(Uppsala University)において講演を行った。
 
475ページにわたる報告書「魅力の増大-知識国家スウェーデンへの推進力」は、スウェーデンの高等教育における国際化の強化について多数の観点から提案している。とりわけ、奨学金の増額などにより、今日よりも金銭的な負担を著しく軽減した上でスウェーデンの大学への進路を策定することにより、留学生の募集機会を増加させることが挙げられている。
 
2018年2月に発表された前回の報告書を含む、全二部構成のこの報告書では、2007年に世界の全留学生数の1.0%がスウェーデンに留学していることが示されたが、2017年にEU圏外からの留学生に対する授業料が導入されたため、この割合は0.6%に下落した。この報告書は引き続き留学生から授業料全額を徴収する方針を提案しているが、この方針を継続する条件として、学生が何を支払っているのかを明確にするため、高等教育機関が各コースに設定された授業料として徴収するすべての費用について説明する必要があることを明言している。
 
同時に、報告書は以下の通り奨学金の増額を提案している。

  • 授業料を削減し、生活費を授与するために、出身国に関わらず優秀な学生を対象とした奨学金として大学が利用可能な資金を1億2,000万スウェーデンクローネ(約15億円*)に倍増
  • 修士課程で学ぶ優秀な学生に卓越した研究環境を提供し、彼らの授業料と生活費を賄うため、5,000万スウェーデンクローネ(約6億円*)の新たな奨学金プログラムの創設
  • 他国との二国間協定の一環で、5,000万スウェーデンクローネ(約6億円*)の新たな奨学金プログラムの創設
  • 発展途上国出身の学生に対する授業料を削減するため、学士課程教育及び修士課程教育に対して最大0.3%の資金を使用することの裁量を付与

また、奨学金への寄付控除を認め、産業界が技術開発に貢献することを奨励する可能性について検討しなければならないとの報告もある。また、修士課程の奨学金として割り当てられた1億5,000万スウェーデンクローネ(約19億円*)を、開発協力予算を用いて33%増額し、学生、教員の国際交流に資金を提供することを求めている。
 
もう1つの重要な提案は、スウェーデン高等教育評議会(Universitets-och högskolerådet:UHR)、スウェーデン高等教育庁(UKÄ)、スウェーデン文化交流協会(SI)、イノベーション・システム開発庁(VINNOVA)及びスウェーデン研究評議会(VR)は、高等教育、研究及びイノベーションにおける課題を解決するための国際化基盤を構築すべきということである。すなわち、国際化基盤構築のための高次の運営組織を任命し、また、政府機関、団体、学生が参加するワーキンググループを別途組織することである。この国際化基盤の主な目的は、留学生がスウェーデンの高等教育機関に留学を申請し、その申請や奨学金、住居に関する情報を一括で処理するための機関横断型インターフェースをウェブ上に共同開発することにより、授業料を支払ってもなお留学生がスウェーデンに留学しやすい環境を整備することである。
 
報告書は、これに関連して以下のことを提案している。

  • 留学生のためのウェブ上での入学手続とそのタイムライン、そして大学と移民局の恒常的な協力を通じた留学生の移民手続きの大幅な簡略化
  • 国際化基盤構築に関わる5つの機関に、研究、高等教育及び研究からもたらされるイノベーションに関する国際的な進展について、継続的かつ詳細な情報と分析結果提供の義務付け
  • スウェーデンを知識国家及び研究拠点として推進するため、現在6つのスウェーデン大使館にある科学及びイノベーションのオフィスの拡充
  • 研究拠点としてのスウェーデンを広報するためSIの任務の拡大
  • 知識国家であるスウェーデンの認知度を向上させるためスウェーデン研究・高等教育大使の設置

なお報告書では、2020年から2030年の期間の提言を行っている。
 
*円表記はJSPSストックホルム研究連絡センターが追記
 
2018年11月3日
 
【出典】
University World News:Investigator backs tuition fees for foreign students

地域 北欧・バルト三国
スウェーデン
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