【ニュース・スウェーデン】教育大臣が大学に対しアカデミック・インブリーディングの改善を示唆

スウェーデンの3大学における大学人事において、自校の出身者を優先的に教員として採用する、いわゆる “アカデミック・インブリーディング(academic inbreeding)” に関する大学教員労働組合(SULF)による調査結果報告を受けて、教員の求人募集に際して、募集要件があまりに具体的で、特定の個人を優遇しているも同然という多くの疑惑とともに、この問題に関する議論が激化している。

 

Mats Alvesson教授とErik J Olsson教授は、スウェーデンの大手新聞Dagens Nyheterに、『スウェーデンの高等教育機関における関係崩壊とインブリーディング』という記事を投稿し、ヨーテボリ大学(University of Gothenburg)の90の役職において規則に基づいた配置がなされておらず、 “友好関係の腐敗の文化” を示していると指摘した。

 

また、高等教育研究の国際的ジャーナルHigher Educationに掲載された、Alireza Behtoui氏とHege Høyer Leivestad氏の『スウェーデンのホモアカデミックの中の見知らぬ人』という記事の中で、性別や移住の背景などの学歴以外の要因が、スウェーデンの高等教育機関における雇用の獲得や仕事での成功を収めるという個人の能力に影響を及ぼす可能性が指摘された。

 

この調査ではスウェーデン統計局の2012年データベースにおける登録データが利用され、このうち15,953人がスウェーデン国内外で博士号を取得したか、あるいはスウェーデンの大学やユニバーシティ・カレッジで雇用されているかのいずれかであることが判明した。また、移民送り出し国からの19人の学者へのインタビューによる定性的な情報も含まれていた。
同様の職歴であった場合、両親のうち少なくとも1人がスウェーデン人であるというグループと比較すると、東ヨーロッパ、アジア、アフリカ、南アメリカで生まれた人は、まず雇用されない可能性が高い。また、たとえ彼らが雇用されても、所得や地位が低い可能性が高いと、両氏は述べた。

 

同報告書を参照して、中央党のFredrik Christensson議員は、Helene Hellmark Knutsson高等教育・研究担当大臣に対し、「大臣と政府は、高等教育機関における透明かつ合法的な募集プロセスを確保するためにどのような行動をとるのか」と質問した。
2018年5月23日、大臣は同組合の調査を歓迎した上で、「大学の募集が法律に従っていないという疑惑は深刻だ。スウェーデンは世界有数の研究先進国の一つであり、主要な知識国家の一つになるだろう。採用者の資質は疑いのないものであり、大学や国の競争力の高い地位に十分適している。長期的な能力構築によってもたらされる採用者の質は、大学の戦略的な問題である。規則に従って募集を実施することは、大学とユニバーシティ・カレッジの責任である。彼らが今この責任を負うことを期待する。大学の役職は開かれていなければならず、募集は国全体で、できれば国際的な競争で行われるべきだ。」と議会の中で述べた。

 

同組合は、Twitter上で、この問題が取り上げられたことは歓迎した一方で、大学の透明かつ規則に沿った健全な募集を行っていることを確実にするため、できれば学長に何らかの義務を課してほしかったと言及した。

 

2018年5月25日

 

【出典】
University World News:Minister tells universities to stop academic inbreeding

地域 北欧・バルト三国
スウェーデン
取組レベル 政府レベルでの取組
行政機関、組織の運営 組織・ガバナンス・人事、政策・経営・行動計画・評価
人材育成 教員の養成・確保