【ニュース・イギリス】EU離脱が英国への留学生及び大学に与える影響に関する調査結果

2017年1月12日、独立系シンクタンクの高等教育政策研究所(HEPI: Higher Education Policy Institute)は Kaplan International (英国の教育系企業)、London Economics(政治経済に関するコンサルタント会社)と共同で、EU離脱や世界状況の変化が留学生の英国大学の選択にどう影響するかを初めて詳細に分析し、“The determinants of international demand for UK higher education(英国高等教育に対する国際的需要の決定要素)”として発表した。報告書は、いくつかの変化(EU出身の学生にとっての高額な授業料等)は英国留学の需要を減らす要因となり、別の変化(ポンドの下落等)は他国の学生にとって英国での学費を下げることになるため、需要を増やす要因となる、といった複雑な状況を明らかにした。

 

総合すると、英国への留学生の総数は減り、大学やそのコミュニティに悪影響が出るものの、EU出身の学生の授業料を上げれば、初年度だけでも£1億8,700万の増収(純益)が見込まれる。

  • ポンドが10%下がれば、海外からの学生が約2万人増える(9%増)と予想され、£2億2,700万の授業料収入が見込まれる。
  • 適用される規則がEU圏の学生のためのものから非EU圏の学生のものに替わることにより、EU圏からの入学者数は31,000人超減少(57%減)し、初年度£4,000万の純損失となる。(すでに英国に滞在している学生が高い授業料を払ったとして試算)
  • 伝統的な大学は財政面では利益が出る。例えばオックスフォード大学やケンブリッジ大学では平均で毎年£1,000万を超える授業料の増収となる。一方で、名門でない大学はわずかな収入減(平均£10万)となると見込まれる。

内務省は留学生の入国規制の強化については検討すると発表している。仮にポンド安の影響で英国留学を希望する学生が20,000人増えたとしても入国が認められなかった場合、EU圏からの学生の減少の穴を埋められない。その場合、英国経済の年間の損失は合計で約£20億になることが予想される。内訳は、

  • 年間£4億6,300万の高等教育機関の授業料の減
  • 年間£6億400万の授業料以外の(学生が払う)支出の減
  • 年間£9億2,800万の大学への供給チェーンにおける莫大な損失(間接的誘起効果)

であるが、この損失は留学生ビザを大幅に削減した場合、さらに何十億ポンドも増えるであろう。

 

Higher Education Policy Institute:Universities could lose students while gaining financially from Brexit, but any new restrictions on international students could cost the UK economy an additional £2 billion a year

 
報告書:(The determinants of international demand for UK higher education)[PDF:874.57KB]

 

【関係機関の反応】

 

○ラッセルグループ(Russell Group)
同グループのWendy Piatt事務局長は、“英国は世界のトップ大学と国際的に成功を果たしている高等教育部門の本拠地であり、EUやその他の国からの職員や学生はこの成功のカギである。

 

報告書が示すとおり、大学が優秀な研究者や学生を魅きつけていけるようにすることを英国は必要としており、政府はそれをEU離脱の検討をする際の最優先課題とすべきである。

 

政府は、引き続き企業に対して門戸を開き、何十億ポンドもの経済効果をもたらしうる留学生の受入を歓迎するとすでに表明している。留学生を移民政策の対象から外すことは、英国がイノベーションや国際連携に対し、常にオープンであることを示すことになる。”と語った。

 

Russell Group:Russell Group comment on HEPI report on Brexit and international students

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