2016年11月23日、財務省はEU離脱決定後初めての財政報告書を発表した。EU離脱は英国に新たなチャンスをもたらすと同時に課題ももたらし、英国における次期の経済の見通しはより不安定なものになるとした上で、財政報告書はこの移行期の経済支援を政策に掲げた。具体的には、近く発表される産業戦略と併せて、生産性の改善と生活水準の向上に優先的に投資する。

○大学・研究に関連する事項：

国家生産力投資基金（NPIF: National Productivity Investment Fund）
2017～18年から2021～22年の5年間に、特に生産性を改善する必要のある分野（住宅、運輸、デジタル通信、研究開発）に総額￡230億を投資する。そのうち、研究開発には以下の基金等を通じ、2020～21年までに￡47億（2017～2018学次年度は￡4億2500万、2018～2019年度は￡8億2000万、2019～2020年度は￡15億、2020～2021年度は￡20億）を配分予定。

○Autumn Statement（全体版）
GOV.UK：Autumn Statement 2016

 

【関係機関の反応】

・英国研究会議（RCUK: Research Councils UK）
RCUKの議長であるPhilip Nelson教授は“財務大臣の発表は、研究開発が経済成長の原動力であり、特に生産性の向上に研究が重要な役割を果たしうることを認めたものである。産業戦略チャレンジ基金は、英国が強みを有する分野において、研究機関が企業と連携する機会を拡げ、英国の強みを増すことにつなげるものである。”と述べた。
また、RCUKはイノベートUKのRuth McKernan会長の“UKRIの中でビジネス関係を担当する者として、我々は研究会議と緊密に連携し、世界をリードする英国の科学が経済成長をもたらす可能性を引き出し、英国全土により多くの高技能職を提供していく。”というコメントを歓迎した。

Research Councils UK：Research Councils welcome new research funding in the Autumn Statement

・ラッセルグループ（Russell Group）
同グループのWendy Piatt事務局長は次のようにコメントした。“我々の大学は、財務大臣の研究とイノベーションにより多くの投資をすることで商業生産力向上への橋渡しをするという目標を共有し、高技能職の人材育成、イノベーションや最先端研究を通じて生産性の向上と経済の早期回復のための意欲的な産業戦略の中心にならねばならない。
また、我々の大学は他国の政府からの高額支援を受けている大学との熾烈な競争にさらされており、今回、首相が研究開発への投資を約束してくれたことを歓迎する。次期内閣まで及ぶ追加投資￡47億は世界クラスの大学で行われている研究や企業との連携を支援するものである。産業戦略緑書の内容に期待するとともに、研究、イノベーションにおける我々の大学の強みと成功を英国全体の成長につなげていく。”

Russell Group：Response to the Autumn Statement 2016

・王立協会（The Royal Society）
同協会のVenki Ramakrishnan会長は“財務大臣は将来の経済成長と繁栄は生産性の改善によっており、それは研究やイノベーションによって推進されうるということを理解している。今後４年間に渡る研究・イノベーションへの追加投資￡47億の決定は、EU離脱に関するリスクや条件の交渉を進める上で歓迎すべき第一歩である。我々は、この投資は国民の血税によるものであることを肝に銘じ、最大限有効に活用していく。具体的には、研究・イノベーションを通じ、短期的には成長に拍車をかけ、政府の産業戦略を推進するとともに、長期的には基礎知識を創出することで、まったく新しい産業を創出する。”と述べた。

THE ROYAL SOCIETY：Royal Society response to Autumn Statement