2018年3月8日、高等教育統計局(HESA:Higher Education Statistics Agency)は、高等教育機関において中途退学した者の割合を発表した。
これは、英国の高等教育界がどれだけの成果を挙げているのかについての客観的な指標を示す目的で行なわれた。この中退率統計を作成するにあたり、HESAは、当初目指したものではなくても資格を獲得した学生や、もしくは当初と異なる課程に移っても同じ高等教育機関で学び続けた学生については、学業を継続していたものと定義したとしている。
【英国出身フルタイム学生における英国内各国の大学の中途退学者率】
England | Wales | Scotland | NorternIreland | UK | |
---|---|---|---|---|---|
2015/16 | 6.4 | 5.9 | 6.2 | 4.6 | 6.4 |
2014/15 | 6.3 | 6.1 | 6.5 | 5.3 | 6.2 |
2013/14 | 5.9 | 5.8 | 6.7 | 6.3 | 6.0 |
2012/13 | 5.7 | 5.4 | 6.2 | 6.0 | 5.7 |
2011/12 | 5.7 | 5.4 | 6.6 | 6.0 | 5.7 |
2010/11 | 6.2 | 6.8 | 7.6 | 5.7 | 6.3 |
2009/10 | 7.1 | 7.6 | 7.6 | 8.2 | 7.2 |
2008/09 | 6.4 | 6.1 | 7.6 | 9.0 | 6.5 |
2007/08 | 6.9 | 7.4 | 8.3 | 9.9 | 7.2 |
2006/07 | 7.1 | 8.9 | 9.0 | 8.8 | 7.4 |
2005/06 | 6.7 | 7.8 | 8.7 | 11.0 | 7.1 |
2004/05 | 6.8 | 8.2 | 9.0 | 10.1 | 7.2 |
2003/04 | 7.2 | 8.5 | 10.0 | 11.2 | 7.7 |
2002/03 | 7.3 | 8.0 | 10.7 | 9.7 | 7.8 |
2001/02 | 7.0 | 7.2 | 9.6 | 9.2 | 7.3 |
2000/01 | 6.9 | 6.9 | 8.8 | 7.2 | 7.1 |
1999/00 | 7.7 | 7.3 | 9.2 | 7.3 | 7.8 |
1998/99 | 7.9 | 6.7 | 8.6 | 8.1 | 7.9 |
1997/98 | 7.6 | 7.8 | 7.9 | 6.9 | 7.6 |
資料:HESAのwebサイトより転記
HESA:Non-continuation summary: UK Performance Indicators 2016/17
○The Guardian
公的な統計によれば、高等教育機関で12ヶ月以内に学業を諦めた学生の率は3年連続で上昇している。HESAによる表では、イングランドにおいて2015年に高等教育機関に入学した学生のうち、初年度中に26,000人が中退したことがわかった。各機関間でも中退率に大きな違いが見られるが、中途退学者が多い機関ではおよそ5人に1人が初年度に大学をやめている一方で、その対極に位置するCambridge Universityでの退学率は1%未満であった。
利用可能な中での最新の数字では、2015/16学事年度にイングランドの大学でフルタイム課程の一年目を開始したイングランド出身学生の6.4%が、二年目に入る前にやめてしまった。これは、2011/12学事年度の5.7%以来、上昇傾向にある。
専門家は、教育界が英国の大学でこれまでにないほどの大々的なストライキに苦戦している中で発表されたこの数値に失望を示しており、これは一つには近年の学生数の増加と、常に適切なサポートが受けられるわけではない、変化する学生心理を原因としていると述べた。
しかしながら、これまで一層中退しやすかった恵まれない環境の出身者の退学率がわずかに減少しているという小さな朗報もあった。
中退率は、特にLondon Metropolitan Universityで悪く、そこでは若いフルタイムの学部生の19.5%が2年目まで学業を継続しなかった。この損失は、1,130人中220人におよぶ。
Bolton Universityの中退率も17%という高いものであり、フルタイムの入学生755人のうち130人を失っている。Middlesex Universityでの退学率は16.4%であり、University of Bedfordshireでは14.3%、University of Suffolkでは13.5%であった。
2015/16学事年度に、英国の、自分のいる地方(注:イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4地方のこと)でフルタイムの学位課程を初めて開始した学生の10人に1人以上(10.5%)が学位を得ることなく高等教育を去っている。一方、スコットランドの大学での学業継続率は、英国の平均を19年ぶりに上回った。
公正機会局(OFFA:Office For Fair Access)のLes Ebdon教授は、大学進学率の低い地域から高等教育機関に進学した学生の中途退学率の減少は歓迎できるが、0.1%というのは非常に小さな減少であるとした。「一方、成人学生の中途退学率が引き続き上昇している。これは単に能力が実現されていない各個人の責任だけでなく、能力のある従業員や再教育を受けた従業員を必要とする雇用者側の問題でもある。新しい高等教育規制機関である学生局(OfS:Office for Student)は、学生生活の継続と成功に大きな注意を払うことを約束した。こうした危惧に関してもOfSは約束を守らねばならず、すべての学生のために持続的な改善を本当に行なわねばならない」と同氏は述べた。
また、大学担当大臣のSam Gyimah氏はこの数字を受けて、これまで以上に若者の高等教育進学率は高くなるだろうし、その大多数が課程を修了するだろうとした。彼は、「しかし我々の世界レベルの優れた高等教育システムの恩恵を一人でも多くの人たちが受けることを確実なものとするために、まだやらなければならないことがある。我々はすでに中途退学率への対処を支援するための行動を起こしている。それには、高等教育の基準を引き上げるために教育の質に光を当てる教育・学生成果評価(TEF:Teaching Excellence and Student Outcome Framework)の導入が含まれる。また、全ての機関に、志願者、中途退学者及び学力のデータを、性別、民族や社会・経済的背景ごとに公表することを求め、透明性の義務も導入する予定だ。」と述べた。
The Guardian:University drop-out rates in UK rise for third successive year[2018年3月8日付]