【ニュース・イギリス】首相が18歳以降の教育の大規模見直しを発表

 
2018年2月19日、教育省(DfE:Department for Education)は、May首相が18歳以降の教育の在り方の見直しを行なうとしたとして、以下のようにことを発表した。質の向上、選択肢の拡大及び高等教育が学費の価値に見合うことの保証が改革の中心に据えられる。
 
恵まれない環境の出身者を含めた若者の進学率の記録的な高さにより、英国の高等教育システムは既に世界的に認知されている。新しくTレベルという、既存の高等教育の選択肢に匹敵するような高等技術資格を導入し、我々の経済が将来に求めるような技能の供給を助けるためにアプレンティスシップ制度(注:見習い制度)を改革することにより、16歳以降の技術教育を改変するための作業も進められている。
 
有意義な進歩があったにもかかわらず、現在の18歳以降の教育制度が、若者や国にとって、本来可能な水準ほどうまく機能を果たしていないのは明らかである。今回の見直しで、18歳以降の教育制度が、あらゆる人々に質の高い技術の道、職業の道、そして学術の道、の間で本当の選択肢を与え、学生と納税者は払った額に相当する価値を得られ、雇用者が必要とする技術を持った従業員を雇うことができるようになることが確かなものとなる。
 
また、May首相は、技術資格より学術を重んじるという「時代遅れな態度」に警鐘を鳴らし、今回の再検討を「あらゆる角度から18歳以降の高等教育の全体像を見つめ、継続教育と高等教育の誤った境界線を取り除き、そして真に統合された制度を創造する」ために用いると宣言した。
 
この幅広い見直しは、18歳以降の教育制度、企業、学者などにわたる専門家委員会の独立した助言によって特徴付けられるもので、委員会の議長にはPhilip Augar氏が任命される。Philip Augar氏は、著名な作家であり、元DfEの部長である。
 
委員会は、以下の4分野に重点を置く:

  • 選択
    18歳以降の若者が、利用可能な異なる選択肢を効果的に選べ、それにより彼らが自らの将来についてよりよい情報の下に決断を行なえるよう、人々を支援する方法を特定する。これには、彼らが真に幅広い良質な学問、技術、職業の道へたどり着けることを確実なものとすることだけでなく、異なる職種間での給与の見込みや、就職のために必要となる資格など様々な情報を提供していくことが含まれる。
  • 学費に値する的価値
    将来の18歳以降の高等教育における資金確保の手立てが透明性を持つものとし、人々を高等教育・高等職業訓練からさえぎらないために、学生や卒業生がどのように学費を工面しているかを見ていく。
  • 門戸拡大
    恵まれない環境からの学生がどのように政府、大学、カレッジから追加の経済的援助を受けうるかを調査しつつ、全ての環境からの若者が18歳以降の教育に進み、また成功を収めることができるようにする。
  • 手に職
    我々が、雇用者の求める技能を供給する18歳以降の教育システムを確実に持てるようにすることで、経済に未来を保証する。これは、英国経済の強化と産業戦略*の実現には大変重要なことである。

 
委員会の報告書は暫定段階で公表される予定であり、見直しは2019年初頭に終了する予定である。
 
※「最新の産業戦略」(Modern Industrial Strategy):2017年11月に英国政府が示した政策文書。
 
GOV.UK:Prime Minister launches major review of post-18 education

【メディアの反応】
 
○BBC News  
 
(野党の)労働党は、今回の見直しにより学費を無料化し、(奨学金に伴う)生活費給付を復活させるべきだとしている。しかしMay首相は、学費の無料化は増税につながりかねず、大学の定員数の制限を意味してしまうと述べた。また、同首相は、イングランドの学生が「世界でも最も高い大学学費システムの一つに直面しており」、そして「課されている学費の水準が課程のコストや質と関連していない」と述べた。
 
イングランドの学費の現状:

  • 大学は年間9,250ポンドまでの学費を課せる。
  • 学生は学費を前払いしないが、全額借用することも可能。
  • 学生は生活費のためのローンも利用が可能
  • 恵まれた学生は両親からの援助を受けられるという前提で、恵まれない環境の学生が生活費を多く借りることが可能
  • 学生ローンには、学生が大学で学び始めた時から6.1%までの利率が課される
  • 学生は、年収が21,000ポンドになってから返還を開始する。この値は25,000ポンドに引き上げられているところ。
  • 未払いの債権は30年後に帳消しになる。
  • スコットランドの大学では、スコットランド出身者の学費は無料
  • 北アイルランド出身者の北アイルランドでの学費は4,030ポンドまで
  • ウェールズの大学の学費は9,000ポンドまでで、優遇された生活費援助が計画中である。

 
BBC:Theresa May’s university review will not scrap fees[2018年2月19日付]

 
1ポンド≒150円(2018年2月14日)

 

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