【ニュース・イギリス】英国大学卒業生の学生ローンは米国アイビーリーグの平均を大幅に上回る

2016年4月28日、サットントラスト(教育を通して社会的流動性を改善するために設立された慈善団体:Sutton Trust)は、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドと比較し、英国の大学生は卒業と同時に巨額な負債を抱えることになるというレポートを発表した。

 

各国が発表した最新データに基づいて示された“負債のレベル”によると、典型的な米国の大学卒業生が£20,500(公立大学及び非営利の私立大学)から£29,000(私立大学)の負債を抱えるのに対し、英国では学費が年間最高£9,000になって初めて卒業生を出した昨年の平均で£44,000の負債を抱えている。奨学金が豊富なこともあり、アイビーリーグを含む米国の非営利の私立大学卒業生の負債は£23,000であった。

 

ただし、英国の卒業生は収入見越システムにより、インフレ率に応じ金利は3%までに抑えられるが、米国ではより高い金利になるところもあり、収入額による調整もない。また、英国やオーストラリアでは収入が急に減少した場合には“返済休暇”が取れるが、米国では最も一般的な連邦政府ローンを受けた19%のみがこれと同様の仕組みに登録している。

 

サットントラストは今年9月に生活補助の廃止(政府助成の£16億の削減)により、最も貧しい学生に£50,000を越える負債を負わせることを懸念している。また、政府は収入が£21,000になった時点で返済の開始を凍結する方針であるが、これにより月々の返済額は上がることになる。

 

英国での授業料は年間で平均£8,800(最高£9,000)と高く、米国では地元の公立校に通う場合は£6,000である。米国でも出身州以外の私立大学に通うともう少し高くなるが、低・中所得者層の者には奨学金でその差を補う多くの対策がある。

 

英国のローン返済額のレベルは英語圏の中でもきわめて高く、大学は3年制であるにも関わらず、4年制の米国の平均と比べても倍以上である。これは大学院進学、住宅購入や家庭を持つタイミング、その他のライフイベントに大きく影響してくる。 

 

大学進学の費用は非常に高いので、若者はより高レベル(理想的には学位レベル)の職業訓練制度も選択肢として考えるべきである。そうすれば学びながら収入を得ることができ、負債もなく手に職がつき、職場において貴重な人材となれる。このように大学の学位と同等な高等職業訓練制度が必要である。

 

また、レポートは、スコットランドの授業料が英国の他の地域と異なることで、国内での取り決めが複雑化してきていることも指摘している。たとえばウェールズの補助金は、ウェールズ出身の学生がイングランドの大学に進学しても年間£4,000以下の負担ですむよう設定されている。

 

恵まれない環境にある大学生の卒業後の就職状況は、高額な授業料が設定されて以来改善されている。一方で成人学生(25歳以上)の数は大幅に減少した。

 

The Sutton Trust:English students face highest graduate debts, exceeding Ivy League average

地域 西欧
イギリス、その他の国・地域
取組レベル 政府レベルでの取組、大学等研究機関レベルでの取組
学生の経済的支援 学費、学生向け奨学金
統計、データ 統計・データ