2016年11月21日、Theresa May首相は英国産業連盟（CBI: Confederation of British Industry）の年次大会において、英国の強化に向け、国内の産業発展を妨げる構造的な課題に長期的に対処するための最新、意欲的 な産業戦略の概要を発表した。

May首相は、政府が産業界と協力して推進する新たな産業戦略を歓迎し、“新しい産業戦略は企業にとっても英国にとっても意欲的なものであり、政府にとっても新しい発想のアプローチである。英国の強みを生かし、長期にわたる不況をもたらしてきた課題を克服するための支援を行う。これは失敗した産業にてこ入れをしたり成功した者を選出したりするのではなく、成功する企業が現れ、成長する環境を作るためのものである。そのような企業を幅広く支援し、英国への長期的な投資を促すことで、英国各地に雇用や経済成長をもたらそうというものである。”と述べた。

○産業戦略チャレンジ基金（ISCF：Industrial Strategy Challenge Fund）：
新しい産業戦略チャレンジ基金はUKリサーチ・イノベーション（UKRI：UK Research and Innovation）が所管し、いくつかの優先技術に係るプロジェクトを支援するとともに、研究開発における英国の既存の強みをさらに伸ばす。英国では科学が強いにもかかわらず、商業化に関しては比較的弱く、国内で開発したものやアイディアが国外で商業化される例が多い。
政府は新興分野であるロボット工学、人工知能、産業バイオテクノロジーや医療技術、サテライト、先進材料工学、その他英国が強いとされており商業化の可能性がある分野に対する効果的な支援策を検討する。

GOV.UK：PM announces major research boost to make Britain the go-to place for innovators and investors

【関係機関の反応】

・英国研究会議（RCUK: Research Councils UK）
RCUK議長のPhilip Nelson教授は“首相の声明は英国にとっての研究・イノベーションの重要性を確認するものであり、喜ばしい。2020年まで毎年￡20億相当を研究開発に投資することは、海外のライバルとの投資の差を埋め、ビジネスパートナーにとって英国の研究システムの魅力を増すことになるであろう。
また、発表された内容は、新たな組織となるUKRIの役割を強調したことになる。UKRIはイノベートUK（Innovate UK）と円滑に協力し、様々な分野に横たわる課題に取り組み、商業化を加速させねばならない。その第一歩として、我々はイノベートUKと協力して産業戦略チャレンジ基金の開発と配分をする。”と述べた。

Research Councils UK：RCUK welcomes Prime Minister’s CBI speech

・イングランド高等教育財政会議（HEFCE: Higher Education Funding Council for England）
HEFCEのMadeleine Atkins会長は“大学は国の研究知識の陰の立役者である。本日発表された研究開発への追加投資は、英国が科学･技術の発見やイノベーションにおいて最先端でい続けることを可能にする。大学は地方、国、国際レベルのそれぞれで産業界と緊密かつ生産的に協力していく。この追加投資は、新たな研究分野を刺激し、長期的に経済効果をもたらすような産業界との連携の機会ももたらすであろう。また、大学は、必要な技術人材も提供していく。”と述べた。

HEFCE：HEFCE welcomes Prime Minister’s announcement of increased investment in research and development

・英国大学協会（UUK: Universities UK）
UUK会長でケント大学学長であるDame Julia Goodfellow氏は“政府の研究開発に対する新たな投資の発表は大変ありがたい。研究やイノベーションが経済成長や我々が直面する世界的課題の解決のために重要であると認められたということであり、英国の大学と産業界の連携強化を支援するものである。”と述べた。

Universities UK：New government investment in research and development ‘good news’ – UUK President