【ニュース・イギリス】米国の 国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects Agency:DARPA)をモデルにした研究資金提供機関の計画(2)

 
科学と工学のためのキャンペーンというロビー団体の事務局長Sarah Main 氏はこの件に合意して“政府の提案を実現するため政府と協力して
いくことを期待している。特に新しい資金調達機関の成立に関する提案と、成立して日が浅いUKRIの役割をどのように補足するのか、その詳細を
待つ。”と述べた。

 
 UKRIはすでにDARPAが主導しようとしているプログラムと似た、短期的な経済利益を追求するように作られた産業戦略チャレンジ基金という
資金調達プログラムを運営している。

 
 さらに迅速で柔軟な資金提供を可能にする構造を作り出す野望は、ブレグジット後の英国の研究システムに関する幅広いビジョンを提示する、
政府の今後の報告書に含まれる。アランチューニング研究所の所長であり、この報告書の著者でもあるAdrian Smith氏はChris Skidmore
科学担当大臣と面談し、予期せぬ機会を素早く結実するための新しい「アジリティ基金」の事例を発表する予定だった。

 
 Smith氏は「制度には、政府が新しい提携の機会を活用できるような緩い部分も必要である。我々には敏捷に対応できる仕組みはなく、イスラエル
やシンガポールのような国との資金提携などに利用できる資金にアクセスできない。」と述べた。

 
 英国のDARPAの提案は、元来Johnson 首相の戦略上級顧問であるDominic Cummings氏の発案と考えられている。Cummings氏の個人のブログ
では、迅速なイノベーション対応のため UK DARPAのような機関の設立の必要性を繰り返し述べている。

 
 2014年のブログでは「英国の政治家はDARPAの予算以上を毎年くだらないものに注ぎ込んでいるが、もしUK DARPAを優先させれば、簡単に
予算は確保できる。そうなると大学や企業を通して連鎖的に効果が出て大きな価値をもたらすだろう」と語っている。

 
 Wilson 氏は「この提案は適切な審査をするべきである。科学、研究コミュニティが、“新しいアプローチ”の正当性や説明責任について厳しい
質問を投げかけることで、その熱意を沈黙を守るための余計な労力として費やさないよう望む。英国の研究とイノベーション制度に必要なのは、
複数の資金調達の流れに基づく安定した成長期間である。」と述べた。

 
 英国EU離脱の日時やその条件などが不確実なため、英国の科学者達はEUの将来の資金提供に関してますます不安を感じている。
「新しくDARPAのような組織を通じて“手始めの基金”を設立するかどうかは、EUと引き続き親密に提携していくかどうかということに対して
あまり意味がない。“手始めの基金”を設立するからと言って、EUと親密に連携しないわけではない。」と欧州14か国の19の研究集約型大学から
なるGuildの事務局長であるJan Palmowski氏が語った。

 
 英国はEUが阻止しない限り、次期EUの研究プログラム“Horizon Europe”への参加を約束している。現在英国は毎年EUから研究資金
として約8億5,000万ポンドを受け取っている。著名な科学者達はEU離脱の結果がどのようなものであっても、科学的関係を保護することが
必要であることを断言している。

 
 ブリクジットのしがらみから抜けるため、政府は研究開発に対する公的及び民間からの支出を、2027年までにGDPを1.7%から2.4%に
引き上げることを目指している。現在の経済成長率から換算すると60億ポンドの追加となる。

 
 「EUへの加盟もしくはホライズンへの所属は、国内の研究イノベーションの支出強化を妨げない。」とPalmowski氏は語った。
「英国政府は中期的に研究イノベーションの支出を増加させるという大きな野望を持っているので、国内の優先事項に必要なものに加えて、
次期EU研究プログラムHorizon Europeへ引き続き参加できるし、するべきである。」
 


<出典> Science|Business: UK government sets out plan for DARPA-like funding agency for research

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